捧げ物 | ナノ

 今吉:結果、両者子ども

『私、今日こそ仕返しする』

そう意気込んだのは朝のHRの前。
しかし今は既に17時を回っていて、未だにそれを達成していない。
え?誰にどうして何をするかって?
そんなの事あるごとに何かしら仕掛けてくる腹黒めがねに仕返しをするんだ。

「世良ちゃん今何か言うたー?」
『何も言ってませんよー!』

口に出てたのかと思ってびっくりした。
今吉先輩ってほんと分からない。

朝は朝練があるから会うことはほとんどないけど、移動教室の時にバッタリ会えば小突かれ、お昼に購買へ行く途中会えば先日失敗した話を掘り返され、部活で嫌でも会えば何かと私を使って・・・
私あなたに何かしましたかねぇ!
何もしてませんよねぇ!
ちくしょう、このスポドリに砂糖どっぷり入れてやろうかとも考えるけど後が怖くてできない。

『今吉先輩、どーぞ』
「ん、おおきに。せや、明日の試合レモンの蜂蜜漬けよろしゅー」
『分かりましたー』

クソーやっぱり砂糖入れればよかった。
食べたいなら桜井くん見習って自分で作って持って来てよ!
あ、でもこれはマネージャーの仕事だ・・・つまり私の仕事だ・・・。
いっそさつきちゃんにでも頼んで・・・いやいや、それじゃあ罪のない人たちまで犠牲ゲフンゲフン。

さて、どうしたものかと考えていると、私の視界には此方に背を向けている今吉先輩と若松、それからこっちを向いてる桜井くん。
これはもしかしてチャンスなんじゃ?
目があった桜井くんにシーッとジェスチャーを送る。
もしこれが青峰だったらきっと今吉先輩にバラすんだろうけど、桜井くんなら少しおどおどしながらでも黙っててくれるから安心だ。
今からすることとその時の今吉先輩の反応を考えてフフフとお腹の中で黒い笑いをしていると今度は若松と目があった。
おい、お前もう少し向こう向いてろよ。

仕方なく今日は止めようとため息を吐くと若松が何か口パクをしたのが見えた。
んーなになに?“やれ世良”・・・?
勿論、私は読唇術なんてできないけどそう見えた。
若松がいたずら大好きなガキンチョみたいな顔をしてたからきっとそうだ。
フフフ、覚悟しろ今吉翔一

「無駄やで」
『あいた!・・・・・・え』

突然頭に衝撃・・・というほど痛くはないけど。
さっきまで顔も体も向こうを向いてた今吉先輩はこっちを向いてて、えーと・・・?

「そんな気ィ出しながら後ろ立たれてもバレバレや」
『う、』
「あと世良ちゃん考えとることすぐ顔に出るしなぁ」
『うぅ』

チラッと若松を見ると、俺知らね、とでも言うように顔を逸らした。ちくしょ

「ワシに仕返しなんて10年早いわ世良ちゃん。手直してき」
『嫌です。今すぐにでもしたいです。寧ろやられた分返したいので毎日仕返しします』
「ならワシも毎日やったるわ」
『・・・は?』

それ、仕返しされる日数が増えますよ?
なんて言ったらそんなん分かっとるよ?と返ってきた。
何がしたいんですか、Mなんですか、Sと見せかけてMなんですか?

「どーせ世良ちゃん失敗するやろーし」
『な、次は失敗しません!』
「見てておもろいし飽きないし」

途端、今まで頭に乗ってた手が私の髪をグシャグシャにしだして。

『・・・先輩って子どもですよね』
「そうかも知れんなぁ」

例えるなら小学生男子の・・・あれ、なんでいたずらするんだっけ?
まあいいか。
取り敢えず今吉先輩は子どもだ。

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