捧げ物 | ナノ

 今吉:確信犯

『今日の今吉さんもかっこよかった!』

なんであんなにかっこいいの?と隣でドリンクのボトルを洗っているさつきに聞くと私に振らないでよと言われた。
まあね、さつきはテツくん一筋だもんね。

「てゆーか世良、ミドリンは?」
『好きー』
「即答なのね」

なら同じ東京にある秀徳に行けばよかったのにと思うかもしれないけどお生憎、私にはそんなハイレベルな学校に入れるほどの脳みそがなかったわけで。
桐皇なら家もまあまあ近いし学力もそこそこ合ってるからね。
それにここなら地区が同じだからIHとかWCで会えるし!ウチはそれで大大満足。

「じゃあ今吉先輩は?」
『大好き!かっこいい!』

黒髪に黒縁メガネだとか糸目なとこも好きだし、あ、でも開いた時の悪い目つきも好きでしょー。それから人懐っこいけど実は腹黒いところとか、なんだかんだ皆のこと気にかけてるとことか・・・そうだ、関西弁!こんな色々かっこいいのに関西弁で話すとかもう狙ってるんじゃないかって思う!

なんて熱弁したらさつきが「それ私に言わないで本人に言いなさいよ。終わったから先戻るね」なんて言って体育館に戻っていった。
さつきが今吉さんのどこが好きなのか聞いたくせに置いてくなんて・・・
まあ、熱弁するのに夢中で手を止めてた自分が悪いんだけどね。
いやでもウチに熱弁させるほどかっこいいのも悪い。

「誰がそないにかっこええの?」
『そんなの決まってるじゃないです・・・か!?いいい今吉さん!?』

ヌッと横から顔を出してきたのは今まで散々した熱弁の対象様様だった。
あれ、もしかしなくても声出てた感じですかね今吉さん。
相変わらず人あたりのいいような笑顔を私に向けたままのこの人の唯一苦手なことを挙げるとしたら何を考えてるかわからないとこかな。

『あのー、いつから・・・』
「桃井のミドリンは?から」
『・・・・・・あ、あっははははは』

気まずくて残りのボトルを超高速で洗っていく。
なるほど、ほとんど最初から盗み聞きしてたんですね。ウチの熱弁もモロに聞いてたんですね。
そういえばさつき戻るとき笑ってたよね、気づいてたの、何で言ってくれないの!
泣きたいのを我慢して取り敢えず笑って誤魔化してるけど一刻も早く逃げたくて仕方がない。

『ではセンパイ、さような』
「ちょお待ち。ワシは質問答えたのに世良ちゃんは答えんてのはズルない?」

洗い終えたボトルを腕いっぱいに抱えて戻ろうとした瞬間、後ろからジャージの襟を掴まれた。
腕を掴まなかったあたりきっとボトルを落とさないように配慮してくれたんだと思うけど、どうせ配慮してくれるんならそのまま逃がして欲しかったです。
ていうかこれ前に進んだら確実に首絞まりますよね?

『いやいや、今吉さん聞いてたんですよね?分かって言ってますよね?』
「さぁ〜なんのこっちゃ。言ってくれんと分からんわ」
『えー、じゃあ離してくれたらいいですえ、うわ!』

グッと引っ張られて視界が回った。
掴まれてたジャージも開放してもらいわーい離してくれた!逃げるぞ!なんて思ったのも束の間、目の前には今吉さん横にはその腕が伸びてて・・・あれ何この状況。まさかの今吉さんからのかかか壁ドン!!

「これでええやろ?」
『いやいやいやいや!確かに離してくれましたけども!』
「保険や保険。世良ちゃん逃げそうやなー思って」

oh...読まれてましたか、そうですか。
確信犯なんですよね?ならもう開き直りますわ。

『今吉さんです!今吉さんがかっこよすぎるから悪いんですー』
「はい、よーできました」

そう言われたのと同時に頭を撫でられた。もう死んでもいいくらいです。

「で?」
『・・・で?』
「ワシと緑間どっちが好きなん?」
『どっちも好きです!嫁にほしゴメンなさい!今吉さんが大好きです!・・・あ』

開かれた目に思わず本音が溢れた。
いやね、さつきのミドリンは?のとこから聞いてたってことは大好き!かっこいい!っていう大告白を不本意ながらもご本人の前で言ってたってことなんだけども、改めてしかも目の前で言っちゃうとか一生の不覚・・・気まずすぎにも程がある。

「・・・ほー、そうか。ならええわ」
『え、そのええってどういう意味ですか?』
「さあな〜?」

なんですかそれ。期待しますよいいんですか今吉さん返事がなければ飛びつきますよ。
ふいっと向けられた背中に心の中で忠告する。

「まあ世良ちゃんが思ってるのであってると思うで」
『い、今吉さん!』

忠告通り飛びつきに行ったけど抱えていたボトルのせいで頭突きになって怒られたのは言うまでもない。愛が暴走しただけなんですごめんなさい!

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