朝起きたら、涙が止まらなくなっていた。

自分の泣き声で目が覚めた。最悪だ。鼻を啜りながら開いた瞼は何だか重くて、腫れぼったい。視界は潤みっぱなしだ。頬が妙に張っているのは、乾いた涙がそうさせたのだろう。ぴり、と鋭い痛みが走る。唇が切れたようだ。

取りあえず顔を洗おう、そう思い立ち洗面台に向かった。鏡を見る。相変わらず良好とは言えない視界は、真っ赤に腫れた目を讃えた俺を映していた。下唇からは思った通り血が滲んでいる。情けない自分の姿を確認したところで、俺は喉が渇いていることに気が付いた。当たり前だ、どうやら俺は、起きてすぐに手をついた枕がびしょびしょになっている程度には一晩中涙を流していたらしいから。口を濯いで顔を洗う。さっぱりした、とタオルに手を伸ばすも、溢れ続けている涙がそれを濡らしきってしまった。

不満と苛立ちを堪えながら額や頬をざっと拭き、ぐずぐずな鼻を携えてパソコンの前に座る。一体この症状はどうしたものか。

【涙 止まらない 朝から】

検索。

中々思わしい結果がヒットしない。しばらくクリックとスクロールを重ねたマウスには、ぼたぼたと俺の涙がかかる。それにすら嫌気がさして、俺は代わりに携帯を手に取った。

「もしもし新羅?」
『…朝からなんだい、臨也…』
「聞きたいことがあるんだけど」
『聞きたいこと?…それにしても臨也、君、珍しく鼻声じゃないか。風邪でもひいたのかい?』
「ああ、うん…それについてなんだけど。起きたら涙が止まらなくなってる病気とか、ぐすっ、知ってる?」
『涙?…君が?』
「それどういう意味」
『そうだね、……自律神経…眼球……涙腺の異常……、…ごめん臨也、一度診てみないことには判らないや』
「そう…」
『今日の午後で良かったら、僕の家においで。診てあげる』
「うん……新羅、念のために言っておくけど、ぐす、解剖はしなくていいからね」
『それは残念』

あからさまな新羅の溜息を遮って通話を切る。治ったら覚えてろよ。

打てる手は微弱ながらも打てるだけ打った。あとは午後になるのを待つだけだ。

「……あ」

失念していた。今日は波江さんが来る日じゃないか。

「……笑われる、よなあ…」

頭を掻きながら取りあえず俯けば、溜まった涙がまた大きな粒になってフローリングに落ちた。

さて、これからどうしようか。

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涙が止まらなくなっちゃった臨也さんの話。つづきます
ちなみに新羅は寝起き




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