※モブ臨
※変なおっさんと一対一
※りんかんではありませんすみません



(くそっ…)

とあるビルの一室。日の当たらないようブラインドを閉められた窓を背に、折原臨也は悪態をついた。

(抜かった、くそ。俺としたことが)

その日、臨也は池袋に仕事に出ていた。新規の顧客へ、情報を受け渡すことを目的に。
情報屋という職業を生業にする者にとって、お得意様が増えることは損ではない――だからと言って、特別得な訳でもないけれど。古くから世話になっている客の紹介で自分を知ったというその男は、どういう理由か自分の会社内での取引を持ち掛けてきた。
臨也はそれに不信感を募らせたが、事前の情報収集の結果、相手はどうやら粟楠会と繋がっているらしいという疑いが耳に入ったのだ。職業柄、無下に断ることもいかず、仕方なくといった具合で臨也は今日、池袋に向かっていた。

(あいつに捕まらなかったからって…)

池袋を庭に暴れ回る天敵に見付かることもなく取引場所に辿り着いた臨也は、その安堵からか、明らかに油断をしていた。
思いの外ビルが新しく、清潔であったことだとか、あの男ではなく受付嬢が自分を部屋に通したことだとか、それらも全て疑いを吹き払う手助けになる。
結果として臨也は、安心しきって出された紅茶を飲み、その中の睡眠薬に気付くことのないまま、眠りに落ちてしまったのだ。

臨也の腕は何か紐のようなもので縛られていた。その身体は殺風景な部屋の床に転がされており、肌から冷たさが上手く伝わらないことは、自らが長時間この床に晒されていたということを嫌でも臨也に伝える。
トレードマークの黒いコートは、部屋の隅に乱雑に放られている。そのポケットの中に携帯やナイフが入っていることは間違いない。臨也は完全に、外部との連絡手段を断たれていた。

(俺馬鹿だ。信じらんない)

あの時用心しきらなかった自分に苛立ちが募る。しかし文句が声となって出ないのは、その口に猿轡を噛まされている故だ。
視覚や聴覚は自由だというのに、身体だけが動かせない。その事実は、臨也の精神を削るには余りにも十分だった。

遠くから、足音がする。男物のヒールの音。

「やあ、折原さん。ご気分はいかがですか」

開かれたドアからは、スーツに身を包んだ男が現れる。取引相手だ。
徐々に近付く男を臨也はぎんと睨む。その紅い瞳は鋭い、普通の人間ならば足を止めてしまう程に。

「そんなに睨まないでくださいよ」

しかし、爽やかな笑みを湛えた男は、僅かに肩をすくめただけだった。床に伏したままの臨也に目線を合わせるようにしゃがみ込むと、その頬に手を伸ばした。

「新宿からわざわざ、ご足労ありがとうございます。ぞんざいな扱いですみませんね」

うちの部下、気が回らないもので。
男は自らの指を臨也の頬に這わせた。つめたい。臨也の肩が冷気に震える。
その様子を見た男は、うっとりと目を細め、臨也の頭に手を回す。そのまま、口に食ませていた布を解いた。
臨也は数回咳込んだ。呼吸が落ち着いてから、男をまた睨み付ける。

「…どういう…おつもりなんですか」
「いや、取引ですよ。最初からそう話したじゃないですか」
「……何が狙いだ」

敬語を解き、一際低い声で端的に言葉を放つ臨也。男はにやりと口角を上げる。

「そうそう、そうでなくちゃ」
「……」

優しい手つきで、男は臨也の身体を起こした。しかし背中は冷えた壁につけさせたままだ。臨也に逃げ道がないことに、変わりはない。

「私はね、折原臨也さん。あなたが欲しいんですよ――抵抗の末に私に懐柔される、あなたが」

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つづきます。

中途半端なところで切ってしまいすみません…!
続きは不慣れですがちょっとえろすにします、もうしばらくお待ちください!

しかしこの男私と代わってしまえば良いのに…




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