これと同じ設定



「いらっしゃいま……げ」
「やっほーシズちゃん」

またお前か。ぴろんぴろんと間抜けな電子音の響くドアから現れたのは臨也だった。見慣れた短ランにげんなりしながらも一応、接客の一環として挨拶をする。例えノミ蟲と言えど、相手は客だ。粗相をしでかせば今度こそ、皮一枚で繋がっている俺のクビは飛びかねないのだ。
頭や肩に降り懸かった滴を掃い落としながら、ノミ蟲は俺のいるレジに近づいてくる。

「にわか雨とかやんなっちゃうね。雨宿り雨宿り」

相変わらず底の知れねえ笑いを顔に貼り付けながら、「あんまんちょうだい」と臨也はケースを指差した。

「案外続くもんだねぇ」
「あ?」
「すぐに辞めるもんだと思ってたよ、バ・イ・ト」
「……っせえ」

握り締めていたトングに力が入って、あんまんの形が僅かに歪む。
いけない、相手はあの死ぬ程性格悪ぃ臨也だ。下手につぶれたあんまんなんか渡してみろ、俺共々いちゃもんつけられて、この店なんかあっという間になくなっちまう。くそ、我慢、我慢。

「あんまん一点で120円になります」
「あ、ちょっと待って」

さっさと買って帰ってもらおう。苛立ちを抑えてそう思っていたのに、臨也は奥の棚へと移動してしまった。手前、あんまん買うんじゃなかったのか?何してやがる。

「これもよろしく」

ノミ蟲みたいにぴょんぴょん跳ねながらこっちに寄ってきた臨也は、追加商品を持って来る。一刻も早く帰らせる為その箱を奪い取り、バーコードを通そうとして目に入る文字は。

『薄さ0.03ミリ』

「!!」
「んー?どうしたの?シズちゃん」

にやにやとカウンタに肘を付いて俺の止まってしまった手元を眺める臨也。
いや。ちょっと。え、おい、これ…なんだこれ!おい…!
震える手で箱を掴む。たった一つのその箱が、なんだかひどく重く感じられて、それがこいつのせいだってのも途方もなく嫌な気分だ。っていうか。は?

「……お…お前…」
「なあに、シーズちゃん?」
「……。いや……」

腹立たしいが聞きたいことは山ほどある。かと言って、俺を面白がるこいつに下手に探りを入れても、言葉尻を掬われて馬鹿にされるのがオチだろう。ノミ蟲の顔を見ないよう意識して、俺は黙ってバーコードをレジにかけた。

「……」
「お待たせいたしました。あんまんに追加で、合計…」
「もういいよ。これで。お釣り要らないから」

会計を告げようとするも、投げやりな声色が俺を遮る。若干その態度に苛立ちを感じていると、臨也の手から札が一枚放られた。何となしにその桁を見てぎょっとする。

「…おい!これ、」

咄嗟にノミ蟲に視線を戻す。けれど奴は、さっきとは逆にじいっと俺の手元を見ているだけだ。ひどく不機嫌そう、と言うか…何となく泣きそう?な目をしている。どういうことだ?
雨はいつの間にか止んでいた。困惑したまま固まってしまった俺の手から、無言であんまんの入った袋を引っつかむと臨也は、扉をまたぴろんぴろんなんて押し開けて出ていってしまった。

「……」

なんだかデジャヴのようなものを感じながらも、俺はレジに残された福沢諭吉を見つめるしかなかったのであった。



「新羅新羅新羅しんらぁ!!」
『はいはい今度は何?どうしたの』
「新羅の嘘つき!俺ちゃんとお前の言う通り『目の前でゴム買ってシズちゃんをなんとなーく嫉妬させちゃおう大☆作☆戦』実行したのに!シズちゃん全然気にしてる感じ無かったもん!!」
『えっ何本当にやったの』
「えっ」
『えっ』


24時間嫉妬コンビニ
(釣りどうすっかなあ…明日渡すか…)(もうううう新羅の馬鹿!ばーかばーか!!)

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紅さまのリクエストでコンビニぱろつづきでした!
この二人の設定実はすごく気に入ってるので、続編希望していただけて本当に嬉しいです!わあい!ありがとうございました!
返品いつでも受付中ですーリクエストありがとうございましたでした!




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