※サイケ独白
「いざや」
「すきだよ」
「おれ、いざやがすき」
画面の向こう側にそうささやく。ウィンドウを出したり引っ込めたり、デスクトップをいじってもすぐ元に戻したり、いざやがたいくつそうにおれの世界で遊ぶたび、おれはフォルダの影からいざやをみているしかない。だっていつだって、そのマウスポインタの動きは片手間にすぎないんだもの。
「いざや?」
「きこえてる?」
「おれのこと、みえる?」
いざやはおれのかみさま。おれを造って、ここに住ませてくれるひと。だからおれはいざやがだいすきで、大切で、だからぎゅってしたいし、ちゅうもしたいし、本当ならずっと一緒にいたいの。でもいざやはそうじゃないんだよね。
「ねえいざや、またしずちゃんのことかんがえてるの」
「おれのほうがいざやのこと、しあわせにできるよ」
はあ、ってまたため息をついたいざやはすごく悲しそうだった。いちごジャムみたいにとろとろ甘そうな目が、おれはすごくすきなのに、でもそれはおれのことなんか見てないんだ。
「いざやのこと、しあわせにしてあげたいよ」
どんなに呟いても届かない。だっておれは、いざやのいる世界にいけないんだもの。おれはそれを知っているけど、それでも口は勝手にうごいて、だめだよ、おれはいざやがすきだけど、しずちゃんのことだってだいすきなんだから。おれは二人ともしあわせになってほしいんだもん。
「いざや、どうしよう」
おれ、いざやのこと、すきにならなきゃよかったのかな。おれがいざやをすきな気持ちと、いざやがしずちゃんをすきな気持ちは、おんなじなのかな。どんなに考えても分からないんだ。もしかしたら、こわれちゃったのかもね。
『……シズちゃん』
だからね、おねがいいざや。そんなさみしい顔しないで。ひとりでなかないで。つられてさみしくなっちゃっても、おれじゃ、いざやみたいになみだを出せないの。
愛の意味は知らないけれど
(確かに君を愛してるの)
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@惨事のハニー
この後津軽が生まれます。
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