※短い
僕はあの人のことが大嫌いなのである。
そう思い込むことで、僕は僕を保とうとしている。
けれど、あの人に直接そう言うことはあまりにも耐えられなくて、仕方なしに、僕はあの人に身体で分からせようとする。
殴って、蹴って、突き飛ばして。
罵倒の言葉を浴びせたり、時には言葉すら交わさなかったり。
しかし、どうやらあの人は、この幼稚な暴力の裏にいる僕の、本当の想いを見透かしているようで、
「曽良くん」
いつもその優しい声音で僕を呼ぶものだから。
僕は今日も、半歩後ろについてくるあの人の声を、影を、足音を、振り払うことができずにいるのだ。
理不尽な恋
(僕はあの人のことが大好きなのである)
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