※臨也さんが料理下手



「酷いよ、シズちゃん!」

黒いAラインエプロンを着け、おたまを片手に、臨也はこちらを睨み付ける。

「俺の料理が食べられないっていうの!」

臨也が大きく声をあげる度に、振り回したおたまからは雫が飛び散る。どうやら小鍋で夕飯を作っていたらしいが、おかしい、青色をした味噌汁なんて俺は知らない。寒気を感じながら俺は両手を上げた。降参のポーズ。

「いや、悪い。俺もう食ってきたから…」
「どこで!」
「駅前のファミレス…」
「誰と!」
「仕事仲間、と」
「誰と!!」
「……トムさん、とか、」

ヴァローナとか。恐る恐る名前を出した途端、臨也は、目に見えて機嫌を悪くする。唇をわなわなと震わせ、紅い瞳には涙を浮かべ、今にも泣き出す寸前だ。
ああ、まずい。非常にまずい。

「ごめん臨也」
「む、ぅ」

先手必勝。とまではいかないが、エプロンの端を掴んで臨也を引き寄せ、そのまま俺の胸に押し付けた。ぎゅうぎゅうと抱き込み、背中を摩る。
臨也はうーだのむーだの始終不服そうな唸り声を漏らしていたが、やがて観念したのか、肩の力を抜いたようだった。

「悪かった。会社の付き合いだったんだ」
「うん」
「言い訳に聞こえちまうかもしんねえけど、仕方なかったんだよ。社長には色々世話になってるから…でも酒は飲んでねえし、途中で抜けてきた」
「うん」
「早く帰りたかったから。臨也が、待ってたから」
「……うん」

シャツの胸元がじわりと濡れた。落ち着くまでこのままで居てやろう。悪いのは、確かに俺だ。暫くすればまた腹は減るだろうし、(色は怖いけれど)臨也の作ってくれた飯を食べよう。
臨也の腕がもぞもぞと俺の背に回される。握っていたおたまの先からまた雫が垂れ、そしてそれは俺の背にかかった。ぼっ。じゅわああっ。布の焦げる臭いと共に、背中から煙があがるが、おかしい、服を熔かす味噌汁なんて俺は知らない。



おかえりなさい

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うちの臨也さんは料理できたりできなかったり
…これ料理ってレベルじゃねーぞ!




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