※仔静雄



ぴかっ、ごろごろごろ、どこかでかみなりがなっている。つめたい雨が流れ星みたくガラスをつたっていくのがなんだかさみしい。こんな日は自分がたったひとりきりになった気分になるんだ。暗くて重たい雲はこの空をおおいつくしてしまっている。思わずなきたくなって近くのドアを開けた。

「いざや」

ベッドの上にいざやはころがっていた。きっと、きのうの仕事がやっと終わって、ねていたんだ。悪いことをしちゃったな。

「シズちゃん。どうしたの」

ねてたのにかけっぱなしだっためがねをテーブルにおきながら、いざやはゆっくりと体を起こした。ぴかっ。まどの外が光る。こわくなっていざやにとびついた。ごろごろごろごろ。遠くでまた、かみなりが落ちた。

「シズちゃん?」

おれはいつもはこんなことをしないから、いざやはびっくりしているんだろう。こしにつかまったおれを引きはがすことなくかたまっている。でもおれは何も言えない。なさけないから。かみなりが、ひとりが、こわくなっただなんて。だまって鼻をならすと、いつの間にか鼻水が出ていて、ずずーっときたない音がした。

「怖くないよ」

しばらくそのままでいたら、いざやはおれをだきあげてひざに乗せて、目と目を合わせてくれる。いざやの目はすきとおっててきれいだった。ずっと見ているにはきらきらしすぎていて、はずかしくて、おれはいざやのかたにおでこを付けてにげる。

「俺がいるから」

ぴかっ。ごろごろごろ。あいかわらずかみなりはこわいけど、いざやがいるならだいじょうぶな気がする。せなかをなでてくれる手が、ぽかぽかしていて、気持ちいい。そのぽかぽかに負けて、おれはいざやのひらべったいむねでうとうとしてしまった。ゆめの中ではかみなりがありませんように。いざやといっしょにいられますように。ばちん、とまどに当たった雨つぶは、それでもお星さまじゃないから、おねがいも聞かずにこぼれてしまう。



オーバーブレイク

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ウオオー!こしず!ウオオー!




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