※お年賀企画に投下させていただいたものの一部です。皆様ありがとうございました!
※来神
※愛され系純粋培養臨也さん
※正月全く関係ない



ふわふわに焼き上がっただし巻き卵。蛸や蟹の形に切り込みを入れたソーセージ。ひとつひとつかやくを変えたおにぎり。

「よしっ」

彩りのバランスを入念に確認してから、俺はぱたんとお弁当箱の蓋を閉じた。



「し、シズちゃん」
「あ?」
「えと……その、お弁当…」
「……作ってきてくれたのか」

雲一つないほどの青空の下、俺はシズちゃんと共に屋上に来ていた。というのも、今日に限ったことじゃない。普段から俺達は昼食はここでとっていたし、今はたまたま新羅とドタチンが委員会で遅くなっているだけだ。ただ、普段から人の入りの少ない屋上で、俺達が二人っきりであるということに間違いはなくて。

「上手くできたかは分からないけど…」

どうして俺がお弁当を作るという手筈になったのかは割愛させてもらう。

「いや。ありがとな、臨也」
「え、あ、…うん」

風呂敷の結びを解きながら呼ばれる名前が擽ったい。ていうかまず、俺のお弁当箱がシズちゃんの手元にあるっていう時点で、なんかもう、色々とやばい。色々と。
とか何とか考えてる間に、かぱり、と蓋が開いて。

「う……」
「うまそうだな」

こう、改めてまじまじと見られると、嫌でも不安になると言いますか。

「味見、一応したんだけど…でも不味かったら言ってね?」
「んな訳あるかよ」

俺がどきどきしながら見守る中、シズちゃんは卵焼きを箸で掴むと、そのままぱくりと口に入れた。
もむもむと咀嚼。

「……どう……?」

うわあ。どうしよう、凄く緊張する。
そしてシズちゃんは口を開いた。

「…臨也」
「っ、はい」
「次はハンバーグが良い」

ぼそっとそう呟いた横顔はほんのりと赤くて、つられて俺の頬にも熱が集まってしまう。
気に入って、もらえたんだ。
続けてシズちゃんが唐揚げに箸を伸ばすのを見ていたら、安堵感とか達成感がどっと押し寄せてきた。普段より早く起きたものだから、睡魔もじわじわと滲んでくる。瞼がだんだん下がってきて。あ、やばい。眠い……。



臨也の作ってくれた昼飯は予想以上に美味しくて、俺は一気にそれを平らげてしまった。からんと箸を置き、隣を見る。

「美味かったぜ、いざ……」

とす、と肩にかかる僅かな重み。それは臨也の頭で。すうすうと寝息を立てて、臨也は気持ち良さそうに眠っていた。
俺を差し置いて、と始めこそ苛立ちがあったものの、もしかしたら、これを作るために早起きしてくれたのかもしれない。そう思うと、健やかな寝顔も急に愛しく思える。

「……臨也」

手を伸ばして、出来るだけ優しく、柔らかい黒髪を撫でた。
その瞬間。

「あー!もう食べちゃったの!」
「ちっ」

重たい扉を開け、新羅と門田が屋上に乗り込んでくる。反射で臨也から掌を離した。いや、門田お前…今舌打ち…?

「遅かったな」
「うん、委員会で。それより静雄!どうして残しておいてくれなかったのさ、臨也の手料理!」
「はあ?手前何でその事」

普段より食い気味な新羅の口調に違和感を感じながら首を傾げると、代わりに門田が口を開く。

「臨也の奴、ずっと前から俺たちに相談していたからな。おかずはどうしようとか」
「まあ臨也が楽しそうだったから良いけどさあ」
「……」

あからさまに不満を滲ませた声色の二人に、俺は黙り込むしかない。暑くもないのに汗が背中を伝う。それくらい、新羅も門田も、鬼気迫る何かをこちらに向けていて。

「静雄。これからも臨也のご飯食べ続けたいなら、それ相応の男になってもらわなきゃ困るよ」
「取り敢えず手は出すな!俺たちを納得させてからだ」

先程までは嬉しかった筈の肩の重みは、今はプレッシャーでしかない。目の前で俺をじとりと睨む保護者二人に冷や汗をだらだらと垂らしながら、俺は臨也が起きるのをひたすら待つのだった。



Isn't it a lovely day?

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今年も宜しくお願いします。




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