苦くて甘い指先


「旦那ァ」

「ん?」


久しぶりの休日、旦那に会いに行って
万事屋のソファーに寝っころがってジャンプを読む旦那に問い掛けた


「俺が、旦那に何かしてあげられる事ってありやすかね?」


そう驚く事でもなかったハズだけど
口に出してみたら、何だか、らしくないと思った


「は?何で んな事?」

「いや、深い意味はないんですけど」


ただ単に、聞いてみたかったというのもあるけど
俺は旦那に与えてもらう側で

例えば好きだと言う回数だとか
ちゅうしてくる回数だとか
遥かに旦那からのが多くて

例えば不安を何も言わずに汲みとってくれたり
それが大体合ってたり
鋭い旦那と違って俺には難しい事で

他にも恋、とか
そういう恋人同士のこと…とか
教えてくれたのは全部旦那だから


「旦那にはいろいろと世話になってんで お礼でも、と」

「へぇ…珍しいなぁ、沖田くんがそんな事いうの」

「…い、意味はないって言ったじゃないですかィ。別にないならいいですけど」

「え〜…ちょっと待てよ。あ、家賃2ヵ月分…」

「別れやしょう」

「うそうそ!冗談!」



帰ろうとするフリをして立ち上がった俺を、旦那はそう言って引きとめた
イキナリの事に 俺の身体はバランスを崩して旦那の方に倒れた
そして、抱きしめられる


「だ…っ」

「沖田くんが、俺の事を好きでいてくれれば それでいい」

「!!」

「別れるとか言うなよ?」

「わ、分かってまさぁ!」


さっき別れるって言ったけどね、と優しく笑う旦那に
何だか悔しくなったけど
不覚にも素敵だなんて思って、見つめてしまっていた




苦くて甘い指先




「旦那も浮気なんてしたら、許しませんぜ?」

「…それはこっちのセリフだバカヤロー」


抱きしめていた旦那の指先の力が、より強くなった


指先から、いつも愛を知る



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移転

イメージはaikoの「ハチミツ」



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