帰ろう

雨が、降りはじめる
そんな、春の雨は冷たくて
でも、屯所には帰りたくない


土方さんと喧嘩した、とか
そういう事じゃないけど
俺は屯所から飛び出してきたから


原因は俺
今日だけは譲れなくて 土方さんに食い下がったけど
明らかに俺の我が儘で
土方さんが正しい
それが悔しかった、だけ
くだらないし、土方さんだって飽きれてるだろう
気にも止めずに



「…土方コノヤロー…」

呟いた言葉は雨にかき消されて聞こえないはずだったのに
驚いたのは

「…じゃ、ねーだろ」

聞きなれた低い声が 後ろから聞こえてきたから




「ひ、じかたさ…」
「傘も持たずに…バカかお前は」
「…え、え!?」


あ、油断した

ぐいっと手を引かれて
気づいたときには 土方さんと同じ傘の中に入っていた

「…今日だって、仕事あんのにサボりやがって」

土方さんが毒づく
…なのに

「…あんま心配かけさせんじゃねー…」

そういう土方さんの目が とても優しく思えた



そういや昔、武州にいた頃
俺が道場からいなくなると 決まって土方さんが迎えに来たっけ

普段はムカツク奴なのに
そのときは―…



『「ほら、帰るぞ」』



昔と今が、重なった





帰ろう



ゆっくり、ゆっくり 肩をならべて
昔のように 手をつないで

大好きな君と 家へ帰ろう





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1週間以上遅れの ひじたん記念!

イメージはYUKIの「home sweet home」

「home sweet home」の意味は
「帰ってこれてほんとによかった」
とかいう、「ただいま」より深い意味らしいんですね
大好きな土方さんに、雨の中迎えに来てもらって 一緒に帰ればいいじゃない!
と、軽い思いで書き始めたらコレです


2012/05/15




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