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冷静になれた声は・・・(1/3)





「・・・Phantom、テメェが」



鉄骨に座る女に銃を向けるジン。だが、薄暗い倉庫の為、女の首元までしか見えず顔は陰になっていて見えなかった。



「・・・・・・・・」



しゃがみ込んだまま、バーボンはジンとPhantomのやり取りを息を飲んでみていた。



「まさかそっちから姿を現すとはな。大歓迎だぜ?Phantom・・・」



引き金に指を掛けて、笑みを深めるジン。



このままここに居ると不利だな、と感じたりゅうは、しょうがないと思いながらも鉄骨から飛び降りてキールとバーボンの前に飛び降りた。



スタッーーと着地すればりゅうもまた、左手で銃を構えてジンへと向けた。




「Phantomっ・・・こんな小娘が・・・?」



ウォッカが驚きながらも顔を見せた女に小さく呟けば、チラッとそちらへと視線を向けるりゅう。



「その小娘を一向に姿さえ捉えれなかった気分はどぉ?」




「・・・・・・・・」




りゅうがジンへと視線を向けながら口元に笑みを浮かべて言った言葉にピクッと反応するジン。




「ねぇ、教えてよ。次はテメェの番だと言ったくせに、一向に見つけられなかった相手がこんな小娘だったと分かった今の心境を・・・」



フッと見下したように、挑発的に笑むりゅうを見てジンは目を細めて何の予告もなしに引き金を引いた。



パァパァンーーーー



「なにっ!!?」


一発だけじゃなく、重なるように発砲された二発目の発砲音に目を見開いたのはウォッカ。



ジンはその光景を見て目を細めた後、ベルモットへと視線を向けた。



「フン、どうやら最初の弾丸を撃ち落としたのも、ベルモットが言っていた至近距離で撃ち落としたという話もまぐれではないようだな」




「人を試してるほど余裕がある訳だ?」




銃をジンへと向けたまま笑みを浮かべるPhantom。ウォッカとベルモットが銃を取り出そうと懐に手を入れた瞬間、上に向かって一発、発砲すれば「どこ狙ってやがる?」とウォッカが笑った。



「・・・・・・」



ベルモットは警戒したようにPhantomを見据えれば、ニッと口角を上げる彼女に嫌な予感がした。するとーーー



ブォン!!



「なっ!!?」



「えっ・・・!?」



ウォッカとベルモットに何かが向かってきて慌てて避けようとするものの、二人が手にしていた銃が弾き飛ばされた。



「・・・私が何の策もなしに一人で敵のど真ん中に飛び込んでくるほど能無しだと思う?」



余計な動きをすれば、先にあんた達を撃ち殺しても構わないのよ?とウォッカとベルモットを睨みながら殺気を飛ばした。



「くっ・・・・」



「っ・・・・」



その殺気に息を飲みながら、二人は銃が弾かれた時に痛めた手を抑えていた。




「・・・鉄球をあらかじめセットしておいて、二人の位置を確認し、銃を取り出せばすぐに動きを封じるための策を用意していたわけか」



ブラーンとウォッカとベルモットの傍を揺れる紐に繋がれた鉄球を見ながらジンが言えば「ご名答」とクスクス笑うPhantom。



「仕掛けはこれだけだと思わない方がいい。まぁ、これだけだと高を括ってくれても構わないけど?」




「チッ(心理戦か・・・)」



ジンは小さく舌打ちをした。



今、Phantomが言った言葉で、ウォッカとベルモットを迂闊に動かせなくなった。



仕掛けが先ほどの鉄球だけだと踏んでいたが、自ら一つだけじゃないと言った奴の言葉でそれがフェイクか、そうでないのかが完全に分からなくなった。



「・・・テメェが出てきた理由はキールか?バーボンか?」



お互いに銃を構えたまま、ジンが問えばりゅうはキョトンとした表情を浮かべたまま首を傾げた。



「二人のうち、どちらかを・・・または二人とも助けたいから姿を現したんじゃねーのか?」



口角を上げて言葉を発するジンに、ハッと鼻で笑いながら「そう取ってくれてもいいわよ?」見下したように言った。




「そしたら、あなたはこの二人を殺すでしょう?」



願ったりよ、と言えばジンは顔を顰めた。



「・・・だったらなぜ邪魔をした?」



「決まってるでしょう?あなたに嫌がらせをしたいから」



うふっと、言わんばかりに笑みを浮かべ、銃を構えたまま言葉を発するPhantomにジンは苛立ったように引き金に指を掛けた。



「今までのテメェの行動で分かってはいたつもりだったが…まさか本当に‘俺’に対して嫌がらせをしたいが為に俺ら組織に牙を剥いているのか?」




「えぇ」




即答するPhantomに対して反応したのはウォッカだった。




「ハッ!ご苦労なことだな、嫌がらせの為に自分の命を差し出すとはな!」




「そうね、私にはもう何もないもの」




「・・・・あぁ?」




「あなた達に殺されて、私はもう独りだもの。こんな命、必要ないわ」




「・・・Phantomが俺らに対して抱く感情は復讐心からだとは思ってはいたが、まさかこんな簡単に口を割るとはな・・・・」




「別にそんなに重要視する必要はないでしょう?あなた達が殺した人たちは数えきれないほど・・・・その中で殺された人たちの身内や恋人なんて多すぎて把握なんてしていないでしょう?」



あんたたちに対して復讐心を持ってる人間なんてこの世に結構いるのよ?とクスクス笑いながらPhantomは答えた。




「俺たちが殺した中に、組織へとたどり着く奴らは数少ないはずだがな?」



殺した奴に深く関わった奴らはある程度殺したはずだがな?と挑発的にジンは笑みを浮かべたまま・・・・




「失うものが何もなくなった人間が、どんなに怖いか・・・あなた達には分からないでしょうね」



失うもんが何もないからこそ、どんなことも出来る。捨て身だからこそ・・・いつ死んでも構わないと思うからこそ、なんだって出来る。とPhantomは言った。




「・・・お前は今も独りのようだな」




「・・・・ふふっ、さぁ?どうかしら?でも、足枷になるような、私にとって足手纏いになりえそうなら、遠慮なく切り捨てる」




今更、偽善者ぶる必要もないでしょう?天国なんて行けるなんて思ってないもの。あんたに、嫌がらせが出来るのであれば私はこの身がどこまで堕ちたって構わない。





「・・・憐れな女だな」




一瞬、ジンの目が悲し気な色を浮かべたような気がして、りゅうはカッと頭に血が昇ったように目を見開き、引き金を引いた。




パァンっーーーー



「ぐっ・・・・・」



いきなり響いた銃声、そして、その銃弾がジンの肩を射抜いた。




「憐れ・・・・?ふざけるなっ、お前にっ、テメェなんかにそんな事言われる筋合いはっ・・・・」




ーーーりゅうーーー



一瞬、我を忘れそうなほどな、怒りに身を任せようとしていたりゅうの耳に、赤井の声が聞こえた。



その声が聞こえた瞬間、ハッとした。




「・・・・・・・・」




「どうした?俺が憎いんだろう?憐れだとそう言われて・・・図星だったか?」



顔色を一切変えず、ただただ笑みを浮かべていたPhantomが初めて心を乱したことにジンは好機だと思い、追い打ちをかける様に言葉を発した。



「・・・そうね、図星よ。私は憐れな人間なんでしょうね。あんた達を憎む以外に・・・仇を取る以外に生きる意味を見出せなかったのだから」




「・・・・・(一瞬で冷静さを取り戻したか)」




憎しみに、怒りに身を任すかと思いきや、すぐさま我を取り戻したPhantomにジンは内心で舌打ちをした。





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