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銃の腕(1/2)







「どうしてなの!?僕、どうしてこんなんなっちゃったの!!?」



目の前には‘クロのお墓’と書かれた木の棒に抱き着きながら涙を流す冬馬の姿。



そして、その子を慰める様に、元気づける様に母親の冬美が力いっぱい抱きしめていた。




その姿を見ながらりゅうは静かに目を伏せた。



無理もない、彼は気を失い、頭に大けがを負い、目が覚めた時には八年の時が経っていたのだから・・・



身体は大人、15歳であっても、心は歩美達と同じ、7歳の小学一年生なのだから・・・




「・・・まるで私達とは逆ね」



灰原がコナンへと小さく呟いた言葉が聞こえた。




そんな冬馬を慰めるかのように、景色はキラキラと輝き始めた。




「わーー!見て!雪がキラキラ光ってる!!」



子供たちがその景色を見て歓声を上げ、蘭と園子もそれに見入っていた。



歩美が言葉を発すればりゅうはフッと笑う。




「ダイヤモンドダスト・・・・初めて見た」




「ダイヤモンド!?お宝が降ってくんのか!!?」



元太が嬉しそうに言えば、歩美と光彦も顔をキラキラさせた。




「違うよ、大気中の水蒸気が寒さで凍って氷の結晶になる現象だ」



コナンもその景色に見入りながら言えば子供達は「へぇー」と嬉しそうに見上げている。



トンッーーーと昴の胸元へ頭を預けてその景色を見ていれば、彼もフッと笑って私の頭を優しく撫でながらダイヤモンドダストを眺めていた。




「ほら、冬馬君も見て」



「綺麗ですよー!」



「へへっ・・・」



子供たちの声に冬馬は伏せていた顔を上げた。




「あっ・・・・」



ダイヤモンドダストに目を見開きながら立ち上がる冬馬に元太が「すげーだろ?お宝だぜ?」と笑う。



しかしその景色を眺めている冬馬の表情は感動じゃなく驚愕、怯えにも似た表情で、手をギュッと握り締めているのが目に入った。




「・・・・・・」



スッと沖矢から離れて、その様子を見た後、彼と目を合わせれば、沖矢も難しい表情を浮かべた。




それは私たちだけじゃなく、ボウヤも同様で・・・



「うっ・・・うぅっ・・・」



ガクンと膝を着き、頭を抱える冬馬を母親である冬美がすぐさま支えた。



「どうしたの!?冬馬っ・・・大丈夫!?」




「・・・記憶が?」



灰原が小さくそう呟けば冬馬はゆっくりと言葉を紡いだ。




「なんだろう・・・この光っ・・・前にもっ・・うっ・・・だめだっ・・・思い出せないっ・・・」




頭を抱えたまま蹲る冬馬に子供達は必死に声を掛け続けたのだった。




「っ・・・・!?」



りゅうが視線を感じ、そちらへと慌てて振り向くが、そこには誰も居なくて、ただ目を細めた。




「・・・・誰かの視線・・・ですね」




「昴も感じたのなら気のせいじゃないわね」




「冬馬君が思い出しかけたのは、恐らく・・・」



「八年前の出来事、そしてそれを思い出されたら都合が悪い、という人が身近にいる事は・・・確かなようね」



「・・・・・・・・」




「昴?」




「・・・冬馬君と、後、子供たちの様子をしっかりと見ていた方がいいかもしれませんね」




頭を抱える冬馬、そして心配そうにそれを見ている子供達へと目を向けて「そうね」と、りゅうも小さく頷いた。










「・・・・しっかりと見ていた方がいい、ねぇ;」



ホテルに帰って、すぐに部屋に戻り、色々と支度をしたり、朝食を沖矢と二人で部屋で取った後、レストランの様な所でご飯を食べに行く灰原達を見つけて、彼女に声を掛けたりゅう。



そこで灰原から聞かされた言葉に、ガクッと肩を落とした。




ーーー子供達なら冬馬君と遊びに行くってさっき出掛けたわよ?−−−




「まさか少し目を離した隙に、朝食も取らずに遊びに出かけてしまうとは・・・想定外ですね」




沖矢は何処か感心したように「ふむ・・・」と頷き言う。




「何感心してんのよ・・・。まぁ、元太君がお腹空かせたまま行くのは考えられないから、恐らく朝食は冬馬君と取ったんだろうね」




「追いかけますか?」




「行き先も分かんないのに?」




「行き先なら大体見当はつきますよ?」




「え?」



「帰り際、子供たちが冬馬君の記憶を取り戻すには何が一番いいか、聞かれましたから」




「・・・・落ちた崖って事?」




「えぇ、恐らくは・・・」




ニコッと笑いながら答える沖矢に「なんでそんなに笑顔なの・・・」とツッコみながらも外へと出て行く二人。




スノーモービルを一台借りて、彼の運転で崖へと向かう事にした。








「宝石強盗・・・ですか?」



スノーモービルを運転中の彼へと聞こえる様に少し大きめの声で話すりゅう。



「えぇ、あなたは8年前に日本に居たかどうかも分かんないから知らないけど、確か冬馬君が崖から落ちた日、そして山尾さんがひき逃げ事故を起こした日付の前の晩に、東京都の新宿区で宝石店強盗が押し入ったって話をさっき思い出したの」




「・・・なるほど、ダイヤモンドダストで反応した冬馬君を見て?」




「うん。その日の事、ホテルの人たちに聞いて回ってたでしょう?」




「えぇ。聞いた話によれば、八年前のその日にダイヤモンドダストは発生していなかった」




「それを聞いたら残る可能性は一つーーー」




「本物のダイヤモンド」




「だとすれば犯人は山尾さんって事になるんだけど・・・・」



そこまで言って言葉を濁すりゅうに、沖矢は首を傾げた。




「りゅう?」




「なーんか・・・引っ掛かるんだよねー」




「・・・奇遇ですね。私もですよ」




「強盗に押し入り、故郷であるこの村に逃げ帰った」




「その途中で、みずきさんの妹を跳ねてしまった。その現場を冬馬君に見られたと思った山尾さんは冬馬君を気絶させて車に乗せ、どうするかを悩みながら車を走らせた」




その最中に目を覚ました冬馬に顔を見られ、更にダイヤモンドや宝石がなんらかの原因で散らばってしまった。



その瞬間を見られた山尾の心は決まったはず。冬馬を口封じに殺すしかないとーーー



そして追いかけているうちに足を滑らせ崖下へと冬馬は転落。意識不明のまま八年の月日が過ぎた。




そして宝石を祖母の家の中のどこかに隠し、ひき逃げをしたと自首をした。強盗で捕まるより早く出所できると思ったから。



しかし思いのほか重罰が下され八年の牢に入っている間に、ダム建設が進み、宝石諸共村はダムの底に・・・




「だから、初めて会った時、役所でダムの位置と、村の位置を確認していたんだと思うわ」




「そしてそれを、氷川さんに知られてしまった」




彼は恐らく、黙っててやる代わりに分け前を寄越せと脅してきたが為に殺されたのだろう。




「最初から・・・この村で起こる事件は必然だった」




「都知事が命を狙われているのはカモフラージュ。彼がこの村へと来てしまえばマスコミやそのほかの関係者たちもたくさん集まり、宝石を探すのは困難だと思ったから・・・ですか」



だからこそ、都知事の命が狙われているとトンネルに爆弾を仕掛け、この村に来ることを防いだ。結果は成功。都知事はキャンセルしたのだから、後はダムの底に沈んだ宝石をゆっくり探せばいい。




「でも犯人に誤算が起きた」




「意識不明だった冬馬君が目を覚ました。恐らく彼は焦ったでしょうね。記憶が無いとはいえ、いつ思い出すかもわからない冬馬君に焦りを感じた」




「でも・・・なんだろう。今朝のあの視線・・・確かに嫌な感じはしたけどさ、殺気っていうか・・・そういうのは感じられなかった」




「・・・・とりあえず、先に子供達と冬馬君を見つけてから離れないように固まっている事を言っておきましょう」




「そうだね・・・・あっ」




「え?」




いきなり「あっ・・・」と言ったりゅうに、首を傾げながら振り向く沖矢。




「あ、ごめん、なんでもない」




沖矢のお腹に回っている手首を少し動かしながら、すぐさま答えるりゅうに「そうですか」と一言返して、彼はモービルのスピードを上げたのだった。



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