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嫌う理由はもう一つ…(1/2)



「じゃあ、後はよろしく頼むぞ!」なんて安室にご機嫌で声を掛けて小五郎は帰っていった。


その際に「はい、先生の代わりにしっかりとお預かりします」と笑顔で返している兄に、安室透としての顔と、降谷零での顔はどこまでが作り物かが未だに分からない。


せいぜい違いといえば、敬語か敬語じゃないか、位だろうか。あ、後はFBIに対しては随分冷たいのは・・・多分、降谷零としても一緒か。


そんな事を考えていれば、カツッと足元に何かが当たり、下を見れば何かが落ちていて何となしに拾ってみた。


「名刺入れ・・・?」


銀のケースのようなもので、あちこちから見るが名刺入れだと思われる。とりあえず中身を見てみるとそこには・・・・


「・・・・・・・・・」


少し呆れてしまった。金色の名刺って誰が作るんだよ、一体・・・と思いながら名を見ればそこには「毛利小五郎」の文字があり、あなたですか・・・、と頭を抱えた。


多分、落としたんだろうと思うのだが、彼はもう見えなくなっていて、仕方なしに蘭ちゃんへと渡しておくことにした。


「蘭ちゃん」


「はい?」


「これ、多分毛利さんの落とし物だと思うんだけど・・・」


ごめんね、勝手に中を見ちゃったけれど、と言えば彼女はすぐにそれが何かわかり、恥ずかしそうに頬を朱に染めた。


「っ・・・、すみません!もうっ、恥ずかしい・・・こんな名刺を作っただけじゃなくて落とすなんて・・・」


拾ってくださったのがりゅうさんでよかったです。と笑顔になった蘭にりゅうも小さく笑った。


「まぁ、派手だけど目立つ名刺で毛利さんらしいね」


「本当、お恥ずかしい限りです・・・」


そんな話をしながら蘭はその名刺ケースをズボンのポケットへと簡単にしまった。


「お待たせしました」


安室が小五郎の見送りが終わり、輪に加われば蘭が「ご迷惑をお掛けしてしまいすみません」と頭を下げた。


「いえいえ、全然。ここまで来て楽しみにしていたイージス艦に乗れないのはあまりに可哀そうだからね」


ニコリと笑顔で歩美達と視線を合わせるように屈めば、子供たちは嬉しそうに「ありがとう!安室おにーさん!りゅうさん!」と声を合わせて言う。


「ガキンチョ共!安室さんとりゅうさんのご厚意で乗れるんだから絶対問題起こすんじゃないわよ?」


園子もまた申し訳なさそうに頭を下げた後、元気いっぱいの子供たちへと声をかければ「はい!!」と元気よく返事が返ってきた。


「とりあえず、今日はどうしますか?僕たちはそこにある京のとりを買って少し出かけようと思ってたんですが・・・」


明日のイージス艦の時だけで今日はお互いを気にせず自由に行動しますか?と問えば「私たちも今から京のとり買いに行こうとしてたんです」と蘭が笑う。


「じゃあとりあえず店に行ってその後の事は後々決めようか?」


安室の隣でりゅうが提案すれば「そうですね!」ということになり、とりあえずは手近な店へと向かった。


「りゅう、ごめんな」


最後尾を歩いていれば、兄が小声で謝ってきたので小さく笑う。


「いいよ、こんな偶然は予想外だし、子供たちの楽しみ奪うのもね・・・」


どうせ乗る予定だったんだから、子供が増えようがなんでも大丈夫。と答えれば苦笑いされた。


「お前とゆっくり話せる機会だと思ったんだがな」


「まぁ、それは夜にでも話せたら・・・、それより私は事件ホイホイと安室さんとのコンビで嫌な予感が物凄くしますが」


「コナン君はよく事件に遭遇するからな。今回の噂ももしかすると読み通りの可能性が大だな」


「・・・ねぇ、それに自分も入ってるって気づこう?」


事件に遭遇する率が高いのはボウヤだけじゃなくて、あなたもですよ?と内心でため息を吐いた。


店につけば、子供たちは京のとりの映像に釘付けで「うまそー・・・」と元太が涎を垂らしている。


「うまそーじゃなくて、実際うまいのよ」


「へぇ、園子ちゃんはこれ食べたことあるんだ?」


「はい!よく取り寄せたり京都に来た時は必ず買ったりしてます。蘭なんて私の家で食べてからすっかり京のとりにはまっちゃって・・・」


「へぇ、それは楽しみ」


「りゅうさんって、こういうお菓子好きなんだね!」


コナンが笑顔で聞けば「まぁ・・・」と言葉を濁すりゅう。


「りゅうさんは、甘すぎるものは苦手ですけど、京菓子とかそういう物は好きみたいですよ」


ニコッと笑顔の安室に「・・・・なんで知ってる?」と内心驚くりゅう。


「えー!!そんなぁっ・・・・」


いきなり聞こえてきた声に、外で映像を見ていた皆が一斉に店の中にいる蘭へと近づいた。


「どうしたの?蘭」


「聞いてよ園子!チョコ味!全部売り切れだって・・・」


その言葉を聞いて、みんな脱力した。


「なぁんだー、そんなこと・・・吃驚させないでよ、何事かと思ったじゃない」


「だって・・・その為にわざわざ京都に寄ったんだよ?」


「・・・これ目的で京都に来たんだ」


りゅうが小さくツッコめば安室が隣で「あはは;」と苦笑いした。


「もうイージス艦が本命なのか、京菓子が本命なのか分かんないよね」


コナンもまた苦笑いを零していた。


「でも、チョコ味おいてるのってここだけじゃないですよね?」


残念そうな蘭に代わって園子が笑顔で店の女将に声をかければ「へぇ。うち意外ですと・・・」と4つほど店舗を教えてくれた。


「私たちお寺巡りする予定だから何店舗か見てこようか?」


二手にでも別れれば、どこかに売ってるでしょ?と蘭へと声を掛ければ、どこか気まずそうな表情を浮かべる。


「でも・・・・」


「新発売のチョコ味って私も気になるし、どうせだったら昴にも買って行こうかなって思ってるから迷惑じゃないわよ?」


「ありがとうございます!」


蘭が楽しみにしていた京菓子の話はこれでなんとか纏まりそうだと思い、違う味の京のとりを手に持つりゅう。


「おや?ここで買うんですか?」


「チョコ味じゃなくてもいいからとりあえず今食べたい」


「なるほど」


「安室さん、何味がいい?」


「僕は別になんでもいいですよ」


「・・・・なんでもいいが一番困るのよね」


じゃあ抹茶かな・・・、と見比べていればいきなり店にやってきた人が「ホンマかっ!?チョコレート味がみんな消えたてっ・・・」と言いながら慌てていた。


彼の話を聞けば、今度は女将さんが困ったような表情をして話し出した。なんでも、今朝確かに納品されたのに、店を開ける直前、忽然とチョコ味だけが消えてしまったという。



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