事件の予感(1/2)
「どっか行きたい所あるか?」
京都に着いて、降谷が隣りを歩くりゅうへと声を掛ければ「うーん・・」と悩みだす。
「京都って言ったら紅葉狩りとかを想像するけど・・・」
「今は春だから桜だな」
「じゃあ・・・お寺巡りかな?」
「お寺か・・・有名所でいけば、清水寺とか?」
降谷が「うーん」と考えてから口にしたが、りゅうはどこかを真っすぐ見つめていて・・・
「りゅう?」
声を掛けるが気が付いていないらしく、りゅうが見ている方へと視線を向けた。そして何を見ているのかが分かり「ははっ」と笑った。
「え?何?」
笑い声に気が付いてりゅうは漸く兄へと目を向ける。
「お前、お腹空いてたのか?」
「え?」
「それとも、京のとりが気になっただけか?」
「あ・・・バレた?」
「そりゃあ、あれだけ熱心に見てたらな」
「結構有名な京菓子だよね、あれ」
気になってたんだよねー、なんて言いながら足はしっかりとそちらを向いていて、降谷はクスッと笑みを零した。
「・・・何笑ってんの?」
笑われた事が少し恥ずかしかったのか、頬を朱に染めながらジト目で兄を見る。
「いや、お前も女の子なんだなって思って」
「・・・それどういう意味かな?」
そもそも女の子、って・・・;そんな年でもないんですが?
「あ、お前の場合もう‘女の子’じゃないか」
「いや、まぁそうなんだけど・・・言った本人であるお兄ちゃん自身に笑われると腹が立つ」
隣りで笑う兄をポカポカ殴れば「はは、悪い悪い」と笑いながら逃げるように小走りする兄。りゅうは逃がさないと言わんばかりに先を走る兄の腕に自身の腕を絡ませた。
「逃げられるとでも?」
「お前から逃げるとなると少し骨が折れそうだな」
そんな事を言いながらりゅうに持たれていない自由が利く方の手で、頭をワシャワシャと撫でた。
「あれ?安室さん?」
「え?」
後ろから呼ばれた自分の名に振り返って見ればそこには予想外の人たちが居て目を見開いた。
「あ・・・蘭さんに園子さん?それに先生まで」
りゅうは慌てて絡ませていた腕を外し、安室との距離を取る。
「わー!りゅうおねーさんもいる!」
「本当だ!」
「お久しぶりです!」
ヒョコッと顔を覗かせたのは歩美、元太、光彦の三人でりゅうは三人と視線を合わす様に屈んで小さく笑った。
「本当、久しぶりね」
「りゅうさんも京都に来ていたんですね」
「蘭ちゃん・・・・」
笑顔の蘭に、りゅうは気まずそうに顔を逸らした。
「りゅうさん!この前は災難でしたね。あの後痣になったりしませんでした?」
「え?」
言われた言葉に顔を上げて彼女を見れば心配そうにお腹に手を当てていて・・・
「雨宮さん、あの時結構荒かったから・・・」
聞こえてきた声に下を向けば・・・そりゃあこのメンバーじゃ、ボウヤもいるわな。そして言われた言葉にそう言えば、と蘭と同じようにお腹に手を当てた。
「・・・多少は痣にはなったけど、まぁ大丈夫」
「そうですか、よかった」
ニコッと笑う蘭にりゅうも小さく笑った。
「心配、かけてごめんね。後・・・あの時」
怖がらせてしまって、ごめんなさい。と謝罪しようとすればその前に「何かありましたっけ?」と本気で首を傾げる蘭。
その時、クイクイッと袖を引っ張られた。ボウヤだ。
「蘭ねーちゃん、本当に何も気にしてないから多分何のことか分かってないんだと思うよ」
コナンの言葉に「そう」と小さく返して蘭に「・・・ありがとう」とお礼を言えば、彼女はよく分かっていないようだったが、ニコッと笑い「よくわかんないですけど、どういたしまして」と返してくれた。
「雨宮・・・痣?」
そんな会話をしていれば安室が首を傾げていた。
「あー・・・まぁその話は今度アイツに会った時にやり返すとして、一旦忘れて」
「やり返す?」
「・・・ははっ;」
雨宮さん、ご愁傷様。とコナンが半目で笑った。
「それより、りゅうちゃんもだけどお前までこんな所で何してんだ?」
小五郎が怪訝な表情を浮かべてそう問えば「あー・・・」と言葉を濁す安室。
「それより!さっきお二人腕!組んでませんでした!?」
キャーキャー!と叫び声を上げながら声を発したのは園子で、りゅうは「やっぱ見られたか」と小さく溜息を吐きながらソッポを向いた。
「いや、ちょっと彼女を揶揄ったら怒ってしまって、逃げようとしたところ逃がさない、と腕を掴まれただけですよ」
ニコリと笑いながら安室は動揺することなく言い切った為「えー?そうなんですか」とどこか残念そうな表情を浮かべながらも納得する園子。
そう言えば、お兄ちゃんも昴同様、口がよく回るんだった。嘘がホイホイと出てくる出てくる・・・
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