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京都へ行こう…?(1/2)



「りゅう、紅茶飲みますか?」


「え?私入れるよ」


「いえ、自分の分のコーヒーを淹れるついでですから」


「・・・じゃあお願いしようかな」


パソコンを触っていたりゅうに、沖矢が声を掛け紅茶を用意し、コトリと置いた。


「ありがとう」


「いえ」


「うーん・・・やっぱ消されてるね」


「先日あったページがもう・・・ですか?」


「うん。そのサイトを消してるのはやっぱ・・・あいつらかな?」


「組織にとって不利益な情報ではありますからね。可能性はゼロではないでしょうね」


「17年前の事件か・・・。まぁ、記事があったとしても組織の連中が発信元を特定できないみたいだから私がやっても無理だとは思うけど・・・」


それでもダメ元で調べてみようと思ったのだが、先日あった羽田浩二の事件の記事はもうすでに削除されていて・・・


「削除されていれば尚のこと無理ですよね」


「とりあえず、17年前の事件の謎が解明されたって所では一歩前進なんじゃない?」


「まぁ、そうですね」


「あんたよりも、組織の連中の方がその事実に気が付いたのが早かったみたいだけど?」


「ラム、という人物・・・さすが組織2と言われるだけの事がある。ということでしょうね」


「その組織の2がすぐに気が付かないほどのダイイングメッセージを残した羽田浩二って人もさすがだねー」


「・・・・・・」


りゅうの言葉に黙り込む沖矢を見上げた。そこには難しそうな表情を浮かべた彼の姿。


顔見知り、と言っていたけど恐らくただ顔見知りの人物、ってだけではないだろう。ただ、今聞くのはどうにも気が引けて・・・


ピリリリリッーーーー


突如鳴り響いた着信に、一瞬ビクッとしながら「あ、お兄ちゃんだ」とりゅうが呟き電話に出た。


「もしもし?」


久しぶりだね、大分公安の方も組織の方も落ち着いたのか?と問えば、大分な。と少し困ったような声色で返ってきて、りゅうもまた苦笑いを浮かべ「そっか・・」と返した。


「で?どうかした?・・・・は?」


沖矢はいきなり顔を顰めたりゅうに首をかしげながら様子を見ていれば・・・


「・・・や。」


駄々を捏ねる子供のように、首を振るりゅう。


「ぅ〜・・・・何か起こったらどうすんの?お兄ちゃんそっちに行くんでしょう?・・・様子を伺うだけって言っても、結局は公安の仕事でしょ?」


公安の仕事、と言うことは何かしら手を貸してほしい、もしくはカモフラージュとして付いてきてほしいという連絡なのだろうと沖矢は解釈し、電話中のりゅうを見て、クスッと笑みを浮かべながら彼女の隣に腰かけゆっくりと頭を撫でた。


「?」


不思議に思い、りゅうが沖矢を見上げれば彼は口パクで「行って来たらどうだ?」と言う。その事に、また顔を顰める。


「ちょっと待ってて」


電話口の兄にそう言って、声が聞こえないようにマイクの所を手で押さえた。


「どうした?」


「なんか・・・イージス艦?の体験航海に誘われたんだけど・・・」


「行ってきたらどうだ?ゆっくり話せそうだろう?」


「いや、まぁそうなんだけど・・・」


実際、兄もゆっくり話せる機会だしと言う事で誘ってくれたのだが何分その目的がイタダケない・・・。


「公安の仕事がどうの、と言っていたな?」


「そうなんだよねー・・・なんでもスパイが乗り合わせるかもしれない、テロの可能性が少しでもあるからその様子を見にっていう仕事らしくて・・・」


「ホォー?テロやスパイなどの探りは公安の本業だからな」


「そうなんだよねー・・・」


「その仕事にお前を連れていくのか?」


降谷君にしては珍しいな。と少し驚きの表情を浮かべる沖矢に「口調っ・・・」と言えば「失礼」とすぐに口調を戻した。


「なんでもその可能性は低いから、公安だとバレない様に彼女でも連れて旅行気分で行って来いって言われたらしくてね」


「ホォー?なるほど。そしてもし事が起こればすぐに連絡できる位置に待機する、ということか?」


「そうそう。事が起こっても公安が潜り込んでる事は内密らしくて表立って行動する必要はないから危険もそんなにはないだろうって事らしいんだけど・・・」


「だったら大丈夫なのでは?」


何をそんなに嫌がる?と沖矢が問えば「・・・だって警察の仕事中でしょ?」と不機嫌さを露にするりゅうに、沖矢は小さく笑った。


「彼なりに早くりゅうと話したいんじゃないか?」


「・・・まぁ」


「あれからまだ何日も経っていないし、降谷君も急いでゴタゴタを片付けたんだろうな」


「そうだよね・・・でもなぁ〜・・・また船かー・・・」


最近、本当につい最近、嫌な思い出があったんですがっ・・・、と項垂れるりゅうに「あぁ、そういえばそうですね」と沖矢は小さく苦笑いを浮かべた。


「最近、落ち着いているからすっかり忘れてました」


「そりゃあ、あんたがいたからね」


あの時の言葉通り、帰ってきてからはずっと一緒にいて、話を聞いてくれて、甘やかしてくれて・・・そして行きたくもない事件現場まで連れ出されたな・・・。


「おや、随分と嬉しい事を・・・」


チュッと口づけを落とす沖矢。


「んっ・・・いきなり何っ・・・?」


すぐに離されたそれに、顔を真っ赤にするりゅうを見て、喉を鳴らした。


「あなたが可愛い事をいうからですよ」


「は?なにそれ・・・意味わかんない」


フイッとソッポを向いた彼女の耳は真っ赤で、それをみて満足気に沖矢は笑った。


「それより、ずっとお待たせしてますが・・・」


「え?」


「それ・・・・」


それ、と言われて彼に指さされた物を見れば携帯で・・・「あっ」と慌てて電話口から指を外し「もしもしっ?」と声を掛けた。


<切られたかと思った>


「ごめんっ・・・、あー・・のさ」


<嫌なら無理しなくていい。ただ何も起きなければゆっくりとお前と話せるな、と思って誘っただけだから>


「・・・行くよ」


<!!・・・いいのか?>


「でもっ!何か起こったら私、関与しないからね!」


<あぁ、もちろんそれは構わないさ。というより、そっちの方が俺としてはありがたいな>


お前はすぐに無茶をするからな、と言われて黙り込むりゅう。


<じゃあ、明日迎えに行くよ>


「明日?その体験航海は明後日なんでしょう?」


<前の日にゆっくり京都見物もいいだろ?>


「京都見物ねぇ・・・・」


それから数回会話を交わして電話を切った。


「明日からということは3日間ほど留守に?」


「うん、そうなるねー」


「・・・まぁ兄である降谷君が一緒なら大丈夫か」


「心配してくれてんの?」


「当たり前でしょう?」


照れ隠しに言った言葉に即答で返され言葉に詰まった。


「イージス艦、といえば恐らく携帯なんかの使用は無理でしょうからね」


「そーだろーね」


「その艦に乗ってる間は連絡もできないでしょうし・・・」


「ま、お兄ちゃん居るし・・・」


「・・・・・・・」


「・・・お兄ちゃんにも妬くの?」


「もしも何かあった時、傍に居るのが俺じゃない、というのは些か気に食わん事は確かだな」


不機嫌そうに顔を背ける沖矢を見てりゅうは小さく笑った。


「可愛い人・・・・」


沖矢昴の姿で、赤井秀一の口調であった為、指摘しようとも思ったのだがそのソッポを向き、何処か拗ねているような彼を見て注意より先にその言葉が出た。しかし、その言葉が気に入らなかったのか、彼は「ホォー?」と呟きながら笑みを浮かべた。


「な、なに・・・?」


その笑みに嫌な予感しかない。


「男が可愛いと言われて喜ぶとでも・・・?」


座っていたソファへとりゅうを押し倒し、覆い被さる沖矢。


「えっ、ちょっ・・まっ」


待って、と言葉にしようとするが「待つと思うか?」と喉を鳴らし口を塞がれた。


「んっ・・・・・」


「三日分、たっぷり愛してやる」


チュッ、と小さなリップ音を立てながら口づけは徐々に下りていった。


「三日っ・・、ちょ、嘘でしょう?」


彼の言葉にヒクッと頬を引き攣らせながら言えば「可愛いかどうか、お前が判断するんだな」と楽し気に言われた。


「っ・・・・・」


前言撤回っ!こんな奴全然可愛くないっ!!!


りゅうの心の叫びも虚しく、夜は更けていった・・・



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