嫌な予感(1/2)
「あんた、なんでここに?」
「あー・・・・」
船に乗って意外な人物に会い、疑問をぶつければ気まずそうに目を泳がしながら頬を掻く大輔の姿に顔を顰めた。
嫌な予感しかしない。
「おい、オメーどこに行こうと・・・と、知り合いか?」
雨宮の後ろから白髪のおじさんが現れ、彼へと声を掛けようとするも、場の空気を感じ取ったのか雨宮の正面に立っているりゅうやその後ろにいる蘭たちへと目を向けた。
「あ、鮫崎さん。いやー、ちょっと外の空気でも吸いに行こうと・・・」
「今今外から来たところだろーが。どーせ、タバコだろ?若いうちからんなもん吸ってんじゃねーぞ、若造が」
雨宮が鮫崎と呼んだ年配の男性に言われた言葉に彼は「ははっ」と苦笑いを零した。
「・・・・・・・」
鮫崎?この人確か・・・。
そこまで考えた後、りゅうは盛大に眉を寄せた。この男性の職業を思い出したため、だ。
「鮫崎・・・あ!お久しぶりです!鮫崎警視!」
蘭は父親を通して顔見知りなのだろう。笑顔で挨拶を交わせば「おお!毛利んとこの娘の蘭ちゃんか!別嬪になったなー!」と男も笑顔で返していた。
「あー、りゅう。これはだな・・・・」
雨宮が何か弁解しようとすると、蘭も警察関係者が嫌いなりゅうを思い出し、心配そうに見た。
そんな二人からの視線に小さく溜息を吐くりゅう。
「別に。元警察だろうが現役だろうが私に害がなけりゃどうでもいい」
それだけ言葉を残してその場を去っていった。その背を雨宮や蘭、コナンは心配そうに見送った後、顔を合わし苦笑いを零した。
「りゅう?・・・お前の知り合いでりゅうっていやぁ、もしかしてあの銀の?」
「鮫崎さん、あいつの前でその話、絶対しないでくださいよ?」
「んなこたぁ、分かってるよ。・・・そうか、あの時の嬢ちゃんがもうあんなでかくなったのか」
「おじさんもりゅうさんのこと知ってるの?」
コナンが首を傾げながら問えば彼はフッと笑ったが、その表情は悲しげなものだった。
「まぁ、な」
それだけ残し、鮫崎もその場を去っていった。
「鮫崎さんは俺の親父の学生時代の先輩でな。今でもよく俺ん家に来たりして仲いいんだよ」
「雨宮さんのお父さんと仲がいいってことはりゅうさんとも知り合い?」
「知り合いっていうか、顔見知り程度だがあいつも数回会ったことはあるぜ」
コナンの問いに雨宮は答えていった。
「じゃありゅうさんの事件の・・・」
「鮫崎さんもその捜査に加わってたが・・・・」
あー、と頭を掻いて言葉を濁す雨宮に蘭とコナンは首を傾げた。
「・・・毎晩、親父と飲んで潰れてたな、と思ってな」
「毎晩・・・?」
「ほら、警察があいつの証言をなかったことにした・・・っていうのは知ってんのか?」
その言葉に二人は気まずそうに頷いた。
「そん時、鮫崎さんもその捜査員の一人だったんだが、上からの圧力で何もできなかった、って毎日親父と飲んでる時に泣きながら謝罪してた」
「・・・・・・」
「ま、あいつは・・・りゅうは、鮫崎さんがあの事件に携わってた事は知らねーはずだから内緒な」
フッと困ったように笑いながら雨宮は自身の口元に人差し指を置いた。蘭とコナンも同様に困ったように笑い、頷いた。
そんな話をしていれば、12人目の乗客が乗り全員が揃った、と船員が出発の準備をし始めた。するとある一人の店員が笑顔で「でも、元刑事さんに探偵さんがいるとなんだか安心ですね」と笑い話していたのが耳に入ったコナンが首を傾げて船員へと尋ねた。
「元刑事さん以外に探偵って・・・あのおじさん以外に探偵が乗ってるの?」
雨宮も不思議に思ったらしく、そちらへと向けば店員がニコッと笑った。
「はい、探偵さんがもう一人。とてもそんな風には見えないんですけどね」
りゅうは蘭たちと離れた後、船尾へと行き海を眺めていた。すると後ろの方で声が聞こえて何気なくそちらを見た。
「すみません」
そういいながら手に持ったものを見せるようにしている小太りの男性の姿。意味が分からない、と思いながら見ていれば声を掛けられた相手も分からないのか首を傾げている。
すると「あ、なんでもないです」と笑いその場を去っていく男。すると前から歩いてきた別の長身の男性に声を掛けられ首を傾げていたが、何かを見せていれば二人は笑い去っていった。
「・・・・・・・・」
なんだ?あの小太りの男が持っていたのは印鑑・・・だよね?相当古い物のようだけど・・・。そして長身の男が持っていたのは鍵。
大輔もこの船に乗り合わしていた。しかも元が付くが刑事と一緒に。そしてあの気まずそうな大輔の表情・・・。なんか事件に巻き込まれるんじゃないだろうな・・・;
「そーいや、忘れてて返事返したけど、事件ホイホイだ」
コナンがいる所事件あり、と言わんばかりの事件ホイホイマシンの機能を忘れていた。ハァー、と額に手を置くがもう後の祭りだ。ついさっき、この船は出発したのだから・・・
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