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泣き場所(1/3)




「お姉・・・ちゃん」



ソファに横になって小さく寝息を立てながら寝言を言う哀ちゃんに、起こさぬようにそっと毛布を掛けた。子供にしては大人びた顔、その目元には微かに浮かぶ涙。



ツゥと頬に伝う前に拭った後「ごめんね」と小さく呟きソファから離れた。立ち上がってすぐに目についたのは、床に散らばるガラスの破片。秀一が帰ってくる前に片付けないとな・・・。と思いながらそちらに近づきしゃがみ込み大きな破片を一つ拾った。そして泣きじゃくる哀ちゃんを思い出し動きが止まった。



「お姉ちゃんの命を奪ったジンが一番憎い・・・か。分かるよ、その気持ち。私もジンが一番許せないもの」



そう、直接的に命を奪った五反田も憎いが、それ以上にそうさせた黒幕であるジンが何よりも憎い。




「・・・哀ちゃんも、直接的に宮野明美を殺したのはジンでも私が挑発して彼女を餌にしていた事実を知れば・・・ジン以上に私を憎むのかな・・・?」



ガラスの破片を持ち、色んな思考が頭を巡る。どのくらいの時が経過していたのか、自分では全く分からなかった。




ポンッと肩に何かが触れたと気が付いた時には、咄嗟に手に持っていたガラスの破片を握りしめて振りかざした。



その腕を難なく受け止められたかと思えば「りゅう、落ち着け。俺だ」と声が聞こえてハッとし、慌ててその人物を見上げた。



「秀、一・・・」



そこには困ったような表情を浮かべながらも小さく微笑む赤井の姿があった。




「あ、ごめんなさいっ・・・」



慌てて振り降ろそうとしていたガラスを握った腕から力を抜けば、ゆっくりと握っていた指を彼の手によって開かされた。



カチャンーーーと小さな音を立てて落ちたソレには目も向けず、血が流れているりゅうの手の平に口を近づけ、血を舐めとる赤井にカァッ、と一気に顔を赤らめる。




「なっ、ななっ・・・!?」



「くくっ、血が出ていたんで消毒だ」



喉を鳴らす赤井にりゅうは「バカ・・・」と小さく呟きながら赤く染まった頬を隠す様に下を向いた。



「・・・大丈夫か?」



「え?」



心配そうな声色に彼の言葉、慌てて顔を上げれば苦笑いを零す赤井の姿。



「何度か声を掛けたんだがな・・・」


全く気が付かなかったから肩を叩いたんだ。と言った赤井に「全然気が付かなかった」と顔を俯かせるりゅう。



「・・・妹が来ていたんだな」



チラッとソファで眠る哀ちゃんに目を向ける赤井に、そうだった。と慌てるりゅう。



「早く変装しなきゃっ・・・」



「あぁ、すぐメイクをするさ。だがあと少しだけ・・・」


そう言いながら彼はヒョイっとりゅうの身体を抱え、部屋を後にした。



「ちょっ、秀一!?」


いきなりの事に慌てるりゅうだったが、赤井にシッと言われ哀ちゃんの方へと目を向けた。


そうだった・・。哀ちゃんが居るのだから静かにしなければ・・・。今は昴ではない秀一の姿なんだから。と思い慌てて口を噤んだ。



階段を上り寝室へと行けば扉を閉めた瞬間、降ろされ抱きしめられた。



「秀一・・・・」



彼に応えるようにりゅうもまた抱きしめ返せば耳元で「大丈夫か?」と先ほどと同じ言葉を掛けられた。



「・・・・・・」



「降谷君の前で泣けて少しはスッキリしたか?」



「・・・ん」



かなりの間を空け返事を返したりゅうの前に屈み頬を包む赤井。赤井はりゅうの表情を見て小さく苦笑いを浮かべた。



「その割には泣きそうな表情をしているが?」



「・・・・・・・・」



「泣くには泣けたが、言葉では吐き出せなかった。という所か?」



赤井の言葉を聞くや否や、しゃがんでいる為、いつもとは逆で見下ろしている彼の頭をギュッと抱きしめた。丁度お腹の位置にある赤井を抱きしめながら徐々に足から崩れ落ち、膝立の状態でお互いをキツく抱きしめ合う。




「ふっ、うぅっ・・・・」



赤井の肩に顔を埋めて泣き始めたりゅうの頭を撫でながら、片方の腕はしっかりと彼女の腰を抱きしめた。



「どうした?」



なにがあった?と優しく問う赤井に、りゅうは嗚咽交じりに途切れ途切れ言葉を話しだした。



「助けっ、られなかったっ・・・キュラ、ソー・・・・」



「お前のせいじゃないさ」



「キュラソー、もっ・・・アイリッシュも謝るなって言ってるのにっ、わた、私にっ・・謝るのっ・・・・」



「・・・そうか」



「私、なんでキュラソーを助けたようとしたんだろっ・・・?憎んでたはずなのにっ、仇の奴らなのにっ・・・・」



「りゅう・・・・」



「ごめんなさっ・・・ごめんなさいっ・・・お母さん、おばあちゃんっ、桜、にぃーにっ・・・ごめ、ごめんなさいっ」



「大丈夫、大丈夫だ。お前は何も悪くない。お前が謝る必要なんてないんだ」



しっかりと頭を抱えてチュッと小さく口づけを落とす赤井。それでもりゅうは謝罪を繰り返し続けた。




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