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ヌイグルミ(1/2)










「あ、りゅうさん」





「・・・・・どうも」




あるスーパーでバッタリ会ったのは会いたくなかった安室さんの姿。



ニコッと笑顔の彼に対して、りゅうは小さく頭を下げるだけ。



「今日はお一人ですか?」




そんな様子を気にも留めずに安室は笑顔で話しかけてくる。




内心、勘弁してくれ、と思うもののどうにも邪険には出来そうにない。




ただでさえ、時折見せる彼の困ったような表情を見ると胸が痛むのだから・・・





「いや、連れは居るんですけど今駐車場に・・・」




「あぁ、なるほど、今日随分と混んでますから車を停めれるところがなかったって所ですか?」



「まぁ・・・今頃グルグル空くの待ってるんじゃないんですかね?」





「あはは、僕もグルグル何周か回っちゃいましたよ」





「そうなんですか」




椅子に座っていた私の隣に腰かける安室さん。





「・・・・・・」




その様子をりゅうは首を傾げながら見ていた。




「ほら、ちょっと今レジ混んでるので少しここで空くのを待とうかと思いまして」




ニコッと笑う安室にりゅうは「そうですか」と小さく返した。




「もしかして・・・お邪魔ですか?」




困ったように言う彼に慌てて首を振った。



「あっ・・そう言うんじゃなくてっ・・・・」




「だったら良かったです」




ニコッと笑う安室。




それに対して申し訳なさそうに眉を下げて顔を俯かせるりゅう。





「りゅうさん?」




「・・・ごめんなさい」




「え?」




「私・・・こんなんで、安室さんを・・・困らせてばかりですね」




「そんな事は・・・」




「・・・関わらなくていいですよ。私、多分ずっとこんな態度だろうし、嫌な気分になるでしょう?」




「・・・そんな事はないですよ。それに・・・りゅうさんが関わるなと言っても、僕があなたと話したくてこうして話しかけるんです。だからそんな風に思わないでください」




困ったように笑う安室さんが何処か寂しそうで、りゅうは更に顔を俯かせた。





「・・・・あ!りゅうさん、これ好きですか?」



その様子を見ていた安室は思い出したようにゴソゴソとあるものを取り出した。




「・・・・大きいヌイグルミ・・・・」




安室が取り出したものはりゅうの上半身位の大きさの猫のヌイグルミだった。





「さっきゲームで取ったんですけど、どうしようか考えてたんですよ。貰ってくれませんか?」




「え?でも・・・折角安室さんが取ったものなのに・・・」




「久しぶりに懐かしいクレーンゲームがしたくなってしまっただけなので・・・」




困ったように笑う安室にりゅうは、おずおずと手を伸ばして差し出されてるヌイグルミを受け取った。





「わぁ・・・フワフワ」



受け取ったヌイグルミが思った以上にフワフワでギュッと抱きしめた。




「さわり心地がいいでしょう?」



安室はニコッと笑って言った。




「・・・本当に貰ってしまっていいんですか?」




「迷惑じゃなければ貰ってください」




「・・・猫もヌイグルミも好きな方なんで・・・迷惑じゃないです」




「よかった」




「でも・・・・凄いですね。こんな大きなぬいぐるみ、ゲームで取っちゃうなんて・・・」



あれって確か結構難しいんでしょう?と言えば安室さんは少し気まずそうに頬を掻いた。




「?」




「あー・・・実は取れなくてちょっとムキになってしまって・・・」




「へ?」




「取れるまでやっちゃっただけで、別に上手いわけじゃ・・・・」




あははっと力なく笑う安室。




「・・・・ムキになって?」




「えぇ・・」




「・・・このヌイグルミが欲しくて?」




「まさか。ただ取れないと言われてたものでしたのでつい・・・;」



それに僕がそれを持ち歩いて部屋に飾ってたら・・・ねぇ?と困ったように笑う安室の姿に、町中、この大きな猫を抱っこして歩いて部屋に飾っている彼の姿を想像した。





「・・・・・・・ぷっ・・・ははっ・・・」




なんだかそんな事を考えていたらおかしくなって笑ってしまった。




「!!」




そんなりゅうを見て安室は驚いた様に目を見開いた。




「飾ってる安室さんの姿も、これを町で持ち歩く安室さんも・・・ゲームでムキになっちゃう安室さんも・・・想像したら・・ついっ・・・」




あははっと笑う彼女に安室も、フッと笑った。




「酷いなー・・・;」



「ごめんなさいっ・・あはは・・子供みたいですね・・・」




「男はいくつになっても意外と子供っぽいんですよ?女性よりはね・・・」




そう言って笑う安室さんに、りゅうはまた笑った。






「りゅう」




名を呼ばれて振り返ればそこに居たのは。





「昴・・・遅かったのね」




「中々空いてなくてね。確か・・・安室さんでしたよね?こんにちは」




沖矢がゆっくりとした足取りで近寄ってきて安室へと頭を小さく下げれば安室もニコッと笑って頭を下げた。




「じゃぁ僕はこの辺で・・・」




そう言って帰ろうとする安室にりゅうは「え?」と首を傾げた。




「安室さん・・・レジ今なら空いてますよ?」




「あぁ、買い物しようとしたんですけど、さっきしたのを忘れてました」




そう言って笑う彼にりゅうはあることに気がついた。




そう言えば彼はレジからこちらへと歩いてきたのだ。



買い物をしていないわけがない。




だったらなぜ?と思ったが、あることを思い出した。




安室さんが隣に座るまでずっと絶え間なく男が話しかけてきていたのだが、それがピタリと止んでいたことに今気がついた。




「あ・・・・あのっ!」




去って行こうとする彼の背に慌てて声を掛ければ彼は首を傾げながら振り向いた。




「・・・ありがとうございました。隣に居てくれたことも・・・・これも」




これと言ってヌイグルミを見せると安室はニコッと笑って「いえ」と言った。




「今日はヘッドフォンを忘れてたみたいでしたので・・・男避けになってよかったです」




それだけ言って安室は去って行った。





「・・・・・・・・その大きなヌイグルミ・・・」




「あぁ、安室さんがゲームで取ったんだけど要らないみたいで貰っちゃった」




そう言ってヌイグルミを昴に手渡せば彼はヌイグルミに耳を近づけた。




「・・・・あの、爆弾とか仕掛けてはないと思うけど・・・・;」




「・・・・念のためです」




家に帰ったらとりあえず盗聴器がないか調べましょうと言う沖矢にりゅうは、やれやれと溜息を吐いた。




買い物をしている最中、いつも以上に沖矢は無口で、それは車の中でも一緒だった。




家に着いて、買ってきたものをしまっていればその間に彼はヌイグルミに機械を当てていた。





「・・・・・・・・」




「目当ての物は見つかりましたか?」




沖矢の隣に腰かけて、呆れたように言えば彼はチラッとこちらを見た。




「スーパーで会ったのも偶然、ゲームで取ったのも偶然。なのに仕掛けるわけないでしょうよ」




「・・・・・随分と気を許しているな」




いきなり口調を変える沖矢にドキッとしたが、りゅうはそれを表に出さずに言った。




「・・・・んなわけないでしょう。関わりたくない人ナンバー1よ」




何を馬鹿な事を言うのかと、呆れた表情を向けて沖矢が持っていたヌイグルミを取り上げてギュッと抱きしめた。





「・・・・・・・」




その姿をどこか面白くなさそうに見ている沖矢。




「・・・・あー、寝れそう」



さわり心地がいい、フワフワとした猫のヌイグルミに意識が持って行かれそうになった。




するといきなりグイッと手を引っ張られてソファへと押し倒された。




「へ?」




「・・・邪魔だな」




りゅうが持っていたヌイグルミをポイッと投げ捨て、りゅうの両腕を頭の上で片手で拘束した。




「ちょっ・・・なにっ・・・?」




ピッと沖矢が首元のシャツのボタンを外し、変声機が見えると、電源を落とした。




「・・・・随分と楽しそうだったな」




「はっ・・?!ってか・・やめてってばっ・・・」




その格好で赤井の声は違和感がありすぎて嫌だと言うが、彼は聞く気がないようで・・・





「バーボンと何を話してた?」




「んっ・・・・・別にっ・・・たいして何もっ・・・」




耳元で聞こえる低い赤井の声に、ゾクッとする。




「何も・・・?その割には随分と楽しそうだったな?」




「やっ・・・耳元でっ・・喋るなっ・・・」



フゥっと息を耳に吹きかけられビクッと反応するりゅう。




「何を話してた?」




「はっ・・・・んっ・・・・」




ピチャッと耳元で聞こえる水音。



ゆっくりと、ねっとりと舐める彼の舌にビクビクと身を震わすりゅう。




彼を押しのけたくとも、腕を拘束されていて身動きが取れずに、されるがままのりゅう。





「・・・・りゅう・・・」




「ふっ・・・ただっ・・・話してただけでッ・・・・んっ・・・」




「何を?」




「はぁっ・・・あっ・・・彼がっ・・・ゲームにムキになってヌイグルミをっ・・・取ったって・・話でっ・・・」




「それで?」




「んんっ・・・・・ただっ・・それだけっ・・・本当にそれだけだってばっ・・・もうっ・・・」



離してっ・・・と途切れ途切れに言えば彼は漸く腕を離してくれた。




しかし腕は解放してくれたが彼の行動は留まることをしなくて・・・



プチプチとシャツのボタンを一個ずつ丁寧に外される。




「ちょっ・・・昴っ・・・?!」




「・・・・・・・」




無言で彼は首元から胸元にチュッチュッと小さく口づけを落としていく。




「んっ・・・ちょっとっ・・やっ・・・ねぇっ・・・昴っ・・・・・」




懇願するように彼の名を呼べば彼はゆっくりと顔を上げてりゅうを見た。





「・・・・・・・」




「・・・・・・妬いてんの?」




「・・・・悪いか?」




無言で見つめられるのが気まずくて苦し紛れに出た言葉に、すぐさま返される声。




「っ・・・ばかね。私は・・・あなたしか見てないわよ」




一気に顔を真っ赤に染め、スッと沖矢の顔を両手で包み、りゅうはフワリと微笑んだ。





そしてそのまま沖矢の顔を引き寄せてチュッと小さく口づけを落とした。





「・・・・ここまで。ね?やっぱ昴の姿は抵抗が・・・」



あると言おうとした言葉は、彼の荒い口づけで遮られた。




「んっ・・・・・」





長い長い口づけ、それはドンドンと深くなっていって・・・・




離される頃にはハァハァと肩で息をして涙目で真っ赤な表情のまま沖矢を睨むりゅう。




「ククッ・・・逆効果だぞ?」




その表情を見て沖矢は喉を鳴らして行為を再開させた。





「ちょっ・・・昴っ・・・んっ」




「なんだ?」




チュッチュッと口づけを落としながら言葉を返す沖矢。




沖矢なのだが、声も口調も赤井で・・・



ゾクッとした快感で正常な思考が働かないりゅう。





「いやだってばっ・・・せめてっ・・・・」




変装を解いてーーーーー






・・・・・・・・・・・・・・
(却下だな)
(ふぇ!!?)
(俺以外に笑顔を見せた罰だ)
(なっ・・なにそれ!?)
(それに・・・まだ昼間だしな。解いてから誰かが来たら困るだろう?)
(〜〜〜っ・・・)




ノン様!5万HIT&映画記念企画にご参加頂きましてありがとうございます!


安室さんと仲良く?話す夢主ちゃんに妬く沖矢さん・・・基赤井さんとのリクでしたが・・・このような出来になってしまいましたがよろしかったでしょうか?


なんだか赤井さんより安室さんの行動が・・・目立つ話になってしまいました・・・;


イチャイチャもとりあえずは裏表現なしで・・ギリギリ所ですね・・・;すみません;


お気に召さなかった場合や、違う話がいいという事であれば、ノン様のみ!書き直し依頼を受け付けます!


楽しかったです!この小説を書くのが!本当にありがとうございました!







         おまけ→



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