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髪遊び(1/2)



「・・・・・・・・」



「・・・・・・・・」



ジーーっと本を読んでいる赤井の後姿を見つめるりゅう。



赤井はその視線に気が付いてはいたが、あえて知らないふりをして本を読んでいた。しかし、あまりにも長時間見つめられれば気になって仕方がない。



フゥー、と一呼吸してパタンと小さく音を立て、本を閉じた。




「・・・なんだ?」



「何が?」



「さっきからずっと見ているだろう?」



「そぉ?気にしないでいいよ」



「・・・気になって本の内容が頭に入らん」



まるで本当に気にするなと言わんばかりのりゅうの態度に、赤井はもう一度溜息を吐き、訪ねた。



「何をそんなにジッと見ている?」



「・・・・・・・別に大したことじゃない」



「・・・・りゅう」



スッと彼女に近づき、そのままソファへとりゅうを押し倒した。



「ちょっ、何!?」



「なに、気にするな」



「気にするわっ!!んっ・・・ちょ、とっ・・・」


いきなり首筋に落とされるキス。ピクンと反応するりゅうを見て赤井は喉を鳴らした。



「構ってほしいのなら言えばいくらでも構ってやるのに・・・」


ペロッと首筋を舐めながら徐々に下がっていく赤井の舌にりゅうは焦った。



「ちがっ!んっ・・はぁっ・・・やめっ・・」



慌てて彼の身体を押すが、ビクともせず、それどころかしっかりと両腕を纏めて頭上で拘束された。




「違う・・・?だったらなんでああも見ていた?」




「ふっ・・・そんな、に見てた・・・?」




「あぁ、穴が開きそうなくらいな」



真っ赤になるりゅうを見ながら喉を鳴らし徐々にエスカレートしていく彼の行動。



「ふっ・・・あっ、わかっ、分かったっ!言う!言うからっ!!」



一旦離せ!と真っ赤な顔で叫ぶ。



「・・・別に言わないなら言わないでも良かったんだがな」



「そしたら先に進めるんでしょう!!?」



「くくっ、勿論」



「っ・・・・・」




とりあえず、上からどいた赤井に、すぐに体を起こすりゅう。




「で?」



「・・・本当に大したことじゃないよ?」



「大したことじゃないならいいだろう」



早く言え、と彼は小さくため息を吐いた。



「髪が・・・」



「髪?」



いきなり言われた言葉に首を小さく傾げた。



「髪、長かったんだよね?」



「あぁ、少し前まではな。それがどうした?」



「・・・ちょっと見てみたかったなって、そう思っただけ」



りゅうの言葉にパチパチと瞬きした後、短くなった自分の髪を摘まんで見る赤井。



「長髪が好みか?」



「いや?ただ、そんなだけ長かったら色々と遊べそうじゃん?」



「・・・遊ぶ?」



「三つ編みしたり、ポニーテールだったり・・・あ、ちょっと見てみたい」


ツインテールとか似合わなそうっ、と笑い出すりゅうに、赤井は彼女に会う前に髪を短くして良かったと心の中で安堵した。



「お前だって長いだろう?人のじゃなく自分ので遊べ」



「いやよ」



めんどくさい。人の髪だから好きなように結えるんじゃない、とりゅうは笑った。



「・・・自分のを結うのは苦手か?」



「なんで?」



「いつもおろしているな、と思ってな」



「人のは出来るけど、自分だと難しくない?それに面倒だしやろうとも思わないかな」



そう言いながらりゅうは自分の髪を一房掴みクルクルと指で遊んでいた。



そんな姿を見た後、ふむ。と何かを考え込む赤井にりゅうは首を傾げた。



「秀一?」



首を傾げて名を呼べば、ジッとこちらを見た後「後ろを向け」と言われて意味の分からないまま後ろを向かされた。



スルッと突如、撫でられる感覚に何事かと振り返ろうとすれば「動くな」とグイッと無理やり前を向かされた。



「いっ!!?」


ちょっと!加減しなさいよ!と言うが、彼はお構いなしに人の髪を手櫛で梳く。



「・・・・・・」



「・・・・・・」



暫く大人しくしていれば高い位置で左右に結われたのが分かった。



「・・・秀一」



「なんだ?」



「あんたさ、根に持ってる・・・?」



「くくっ、何にだ?」



こいつ、絶対分かってるっ・・・・


先ほどツインテールとか、似合わなそうと笑った私の言葉を根に持っているのだろう。



「こっちを向け」



「・・・・・・」



言われた言葉に「今更抵抗しても遅いか・・・」と彼の方を向けば、なぜかキョトンとした表情をする赤井。




「・・・・・・・っ・・・くくっ」



「おい、人の顔見て笑うとか失礼だな」



こいつマジ失礼。いきなり顔を背けたと思ったら俯いて吹き出しやがった。



「悪いっ・・・くはっ・・ははっ」



「謝る気ないよね!!?」



ソファから立ち上がり怒鳴るが、左右で揺れる尻尾。



あ、これ絶対説得力ない。



「ハハハハハ!」



・・・・声を上げて笑い出す赤井に、珍しいな。と思いつつその笑顔に魅入ってしまった。


ただその笑う理由がいただけない。ジト目で赤井を睨むりゅうに、彼はもう一度謝ってきた。



先ほどと同じようにかなり軽かったが・・・



「そうやって見ると幼く見えるな」



普段、老けていいるというわけではないぞ?と念を押された。



「・・・そりゃあ子供っぽい髪形すれば幼くなるでしょうよ」



「年を考えた方がいいな」



左右で結って違和感がないのはせいぜい高校生までが大半だな。と先ほどよりは収まったのか、いつもの様に「くくっ・・・」と喉を鳴らす赤井。




「お前がやったんだろーが!!!」



年を考えろ!?じゃあ結うなよ!せめてポニーテイルにしろよ!!



左右に結われていたゴムをブチッと引きちぎった。



パサッと髪が下りてブンブンと軽く首を振ればすぐにいつもの様な髪型に元通りだ。



「短気な奴だな」



「誰のせいだよ!!?」



「くくっ・・・・」



だめだ、こいつのペースに乗れば自分だけが疲れる。そう思って、ハァーと溜息を吐いて落ち着くように自分へと言い聞かせた。



「髪なんかこのままで十分よ」



「たまには変えたらどうだ?」



「・・・誰かさんが笑わなきゃね!」



「くくっ、別におかしくて笑ったわけじゃないさ」



「それ以外に何があるよ?」



「新鮮なお前が見れて俺は嬉しかったんだがな?」



「・・・は?」



赤井の言葉にキョトンとするりゅう。そして彼はニィッと口角を上げたと思ったら腕を掴まれてそのまま引っ張られた。




「わっ・・・」



いきなりの事にバランスを崩し引っ張られるまま、彼の上へ身体が落ちて、ギュッと抱きしめられた。




「し、秀一?」



「どんな髪型でも似合ってるさ」




「っ・・・・・・」



いきなり耳元で聞こえてきた低い彼の声と言葉に顔を一気に真っ赤に染めたりゅうを見て、赤井は彼女の肩へと顔を埋めて喉を鳴らしていた。





髪遊び
(降谷君に写メでも送ればよかったか?)
(絶対!やめてよね!!?)
(くくっ・・・)
(笑い事じゃないからね!)
(たまには髪形を変えるか)
(・・・ツインテールはもういい)
(あれはちょっと遊んだだけさ)
(人で遊ぶな!)
(お前も遊ぼうとしていたんだろう?)
(そ、そうだけど・・・)
(くくっ、今度は普通に結ってやるさ)
(・・・・出来るの)
(妹のを少しだけやった事があるからな)
(真純ちゃん、短くなかったの?)
(・・・あの短さで三つ編みはかなり手こずったな)
(・・・・はは、あんた器用だもんね。そういえば)





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