二人の約束(2/2)
先ほど割ってしまったコップの破片を片付けようとすれば、秀一に溜息を吐かれた。
「…なんで溜息?」
「お前は阿呆か」
「は?」
いきなり言われた言葉にムッとしてしまうが、彼は更に呆れたように「やれやれ」と一言漏らし、立ち上がった。そんな彼を目で追えば、救急箱を片手にソファへと腰を下ろし、ポンポンと隣を叩く。そんな秀一の行動に首を傾げながら近づけば、手首を掴まれてグイッと引っ張られた。
「手の平をだせ」
「手の平?」
言われて両手を差し出せば、自分の手から血が流れてるのに気が付いた。
「あ…」
「…忘れていたのか?」
「うん」
秀一の言葉に頷けば、心底呆れた、というようにもう一度大きな溜息を吐かれた。そして無言のまま手当された。包帯が巻かれた手を見ていればいきなりギュッと抱きしめられる。
「わっ、…秀一?」
「頼むから、極力自分で自分を傷つけるのはやめてくれ」
私、Mじゃないから自分から傷つけるなんて早々しない、と言おうとしたが彼の声が少し震えてるような気がして、素直に「…うん、ごめんね」という言葉が出た。
「秀一も怪我してる…」
消毒液を染み込ませた脱脂綿を彼の頬へと当て、ピッと絆創膏を貼る。
「ごめんね…」
「なに、大した傷じゃない。それに…」
「?」
「お前が傷つくよりずっといい」
膝へと抱きあげられ、向かい合う様な形で今度は優しく抱きしめられた。そんな彼の肩へと頭を預け、ポンポンと秀一の背を軽く叩いた。
「…私は秀一が傷つくのは嫌だよ」
「俺もお前が傷つくのは嫌なんだ」
「そっか」
「ああ」
少し無言になったので、預けていた頭を動かして秀一を覗き込めば、彼も同じように見つめ返してきた。
「一緒、だね?」
「そうだな」
コツン、とお互いの額を合わせて囁けば、彼も小さく頷きお互い笑った。
「んっ・・・、こら、いきなりっ」
「こんな近くに居てお預けしろと?無理な話だな」
そう言われてゆっくりとソファへと押し倒された。
「あのっ、コップ!片付けなきゃっ…」
「後でも出来る」
「片付けてからでもっ…」
「却下だ、俺が待てん」
フッと笑いながら近づいてくる秀一に顔を真っ赤にすることしかできなかった。
チャンチャン
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