Clap
公安の後輩ちゃんが居たら・・・part6(出会編:降谷side)
「降谷!お前すごいな!」
「同期の中でもずば抜けて能力高いからなー」
「上司からも期待の星なんだろー?」
「やーっぱ、世の中不公平だよなー」
「顔よくて、才能もあって、なぁ?」
そんな言葉を笑顔で交わしながら降谷は屋上へと足を進めた。
どいつもこいつもっ・・・・・人の努力を才能だぁ、能力だぁ、世の中不公平だぁ抜かしやがってっ・・・
俺は目的のために警察に入り、努力して認めてもらって公安まで上り詰めたんだ。なんの努力もせず、ただ流れに身を任せてるやつらとは違うっ・・・・
周りの言葉に、妬みの感情、女から発せられるキーキー声、そして上司から期待というプレッシャー・・・、自分が保てなくなる。このイラつきをどうしたらいい?誰も分かっちゃくれないっ・・・
全てを愛想笑いで流して、自分を偽ってこんなドロドロした感情を俺が持っているなんて、きっと誰も知りはしない。
ーーー気づいてくれないーーー
階段を登り切り、見えてきた扉をイラついた感情のまま乱暴に開けた。
バンッーーーと大きな音を立てたと思えば「きゃっ」と声が聞こえてきて首を傾げながら扉の後ろへと顔を覗かせた。
そこには女が一人、そしてその女の周りに散らばる缶ジュースが2.3本転がっていて、すぐに乱暴に開けた扉のせいで驚き転んで落としてしまったのだと分かった。
「わっ、悪い!大丈夫か?」
スッと手を差し出せば女はニコッと屈託のない笑みを浮かべて俺を見た。その笑顔をみて「きれいだ」と思った。俺とは違う、作り笑顔なんかじゃなく、本物の笑顔ーーーまぶしく見えた。
「いえ、私のほうこそすみませ・・・ふっ、ふふふっ・・・・・!!?」
「ふ?」
いきなり女が顔を真っ赤に染め上げた。そして差し出していた手に乗せようとした手を慌てて引っ込めて、口元を手の甲で隠す。
「降谷先輩!!?す、すみませんっ!!私っ・・・・」
慌てて立ち上がり頭を下げる女に「あぁ、こいつもか」と内心で冷めていく感情があった。
「・・・なんでお前が謝る?」一気に低い声が出た。自分でもなぜ、会ったばかりの女にこんな声を、言葉を向けているのかわからなかった。恐らくイラつきが抑えられなかったのだろう。いつもの愛想笑いもポーカーフェイスも身を潜めていた。
「だっ・・・て、あの降谷先輩に手を貸してもらうなんて、それに転んで缶をバラまいたのは私がただどんくさいから・・・」
ははっ、と困ったように笑う女に、妙にイラつきが抑えきれなかった。俺じゃなかったら・・・?さっきのような笑みを浮かべていた・・・?
謝らなくていい場面でも謝ったのは、‘俺’だから・・・・?
「どいつもこいつもっ・・・・」
「・・・・先輩?」
「人を見れば、すぐに態度変えやがってっ・・・才能!?能力っ!?ふざけるなっ!!」
いきなり大声をあげてガンッ!!と扉へと八つ当たりのごとく、拳をぶつければ、ビクッと肩を跳ねさせる女。
あぁ、こんな自分を見せたのはいつぶりだろうか?少なくとも大人になってからはこんな風に外でいきなりキレるなんてことはなかったーーー
なのに、無性にイライラする、抑えきれないーーー
「・・・・・・っ」
「・・・・・・・」
ギリッと拳を握りしめて、顔を俯かせる降谷。
ガキか、俺は・・・・
何をしているんだろうか?初めて会った女の前で子供のように癇癪を起しものに八つ当たりなんてして・・・今からでもなかったことに出来るだろうか・・・?
「悪い、忘れてくれ。少しイライラしてて八つ当たりだ」
ニコリと笑って女を見れば女はキョトンとした顔をしていた。
謝っているんだからそんな顔をしていないで何か言えっ・・・
内心でイラつきながらも顔に出すことはもうしないように心がける降谷に、その女は予想外の言葉を発した。
「・・・笑顔が下手ですね、先輩」
「−−−は?」
「笑いたくないときは無理に笑わなくてもいいんですよ!」
花が咲いたような笑顔を降谷へと向けて言う女。
「・・・お前だって笑ってるだろう?」
笑顔を引っ込めて冷めた目でいえば女は「うーん」と考え込んだ。
「私は、笑いたいから笑ってるんです!」
「笑いたいから・・・・?」
「大きな物を背負っている降谷先輩の荷物を私なんかの笑顔で少しでも軽くできたら・・・それって素敵なことだと思いません?」
「はぁ?」
この女が何を言っているかが分からなかった。初めて会った女の笑顔に軽くなる荷物ってなんだよ。
「あ!そうだ、これ飲みませんか!?」
間違って押しちゃって・・・と差し出されたのはコーラで。
「は?いや俺は別に・・・」
「まぁまぁ、遠慮しないでください!先輩!」
そういって蓋を開けたら一気に噴き出てくるコーラ。女はそれに驚き目に見えて狼狽えていた。
「ひゃぁあああっ・・・ナニコレなにこれ、なにこれ!!!?」
「・・・さっき落としたのに蓋を開けるからそうなるんだろ」
呆れたように言えば彼女は「そうなんですか!?」と驚いていた。
「お前、そんなことも知らなかったのか?」
「だって私炭酸なんて飲めないですもんっ・・・っていうか、これ!これ!!どうやったら止まります!!!?」
「・・・・全部出るまでじゃないか?」
「こっ、困ります!!先輩に差し上げようとしたジュースなのに!!あぁぁ〜・・・お願いだからもう止まって〜・・・・」
情けない声を出して泣きそうな表情を浮かべる女に、なんだか呆れを通り越して笑いが込みあがってきた。
「くっ・・・・ははっ、あはははははっ!!」
「ちょっ、先輩!?今違いますからね!?笑うところじゃないですからね!!?」
人の不幸をみて笑うとかドSですか!!?と、先ほどの笑みとは程遠い焦って、少し怒ったような表情を浮かべる女。
コロコロと表情が変わる女。降谷は公安にきて初めて本気で笑った気がした。
「・・・・・もう収まりましたか?」
「ああ・・・・くくっ」
「まだ笑ってる!!?」
「わ、悪いっ・・ははっ」
「まぁ、いいですけどね。降谷先輩の本当の笑顔が見れたんで」
「え?」
「だって先輩、いつも愛想わらいじゃないですか?愛想笑いばっかだと疲れてしまうのは当たり前ですよ」
もっと気楽にいきましょうよ。笑いたくない時は笑わない、怒りたい時は怒る!じゃなと、先輩つぶれちゃいますよ?と笑う女の笑顔は、最初に見たきれいな笑顔だった。
「そうは言ってもな・・・・」
「まぁ、突然そんな風に変わったら周りが驚きますよね。あ!じゃあこうしましょう!!」
「?」
「私には愛想笑いも、偽った態度もしないでください!私鈍くさいんで、きっと怒られてばかりなんですが、先輩が素でいられえる場所にしてください!」
「・・・俺の素なんて、そうとう冷めてるぞ?」
「それはさっき知りました!そして怒ってる先輩も知りました!」
だから大丈夫です!と言い切る女に「なんだ、それっ・・・」と笑う降谷。
「先輩は凄いです!仕事ができて、人当たりもよくて・・・・」
「・・・・・」
「一杯、一杯努力して、私なんかには想像も付かないほど勉強して・・・だから今の先輩があるんでしょうね!」
彼女の言葉に救われた気がした。俺をわかってくれる人がいた。そしてありのままの自分を受け入れてくれる人がいた。
「お前、名前は?」
「−−−です!これからも至らない後輩ですがよろしくお願いしますね!」
あれから何日も過ぎて再会した彼女は、あの時の笑顔のまま俺を見てくれた。
ーーーありのままの自分でーーー
そう言われた言葉を思い出して、彼女が自分の下に就いた時、ありのままの自分で接し続けた。彼女なら・・・受け入れてくれた彼女なら大丈夫だと、そう思っていてーーー
・・・・・・・・・・・・・・
(お前、本当に最初にあった時の事覚えてないのか?)
(だから、コーヒーを・・・)
(違うっ!)
(うぅ〜・・・・あっ!)
(思い出したか!?)
(一年位前、屋上に続く階段から滑って落ちて頭打ったんですよ、その時の前後の記憶が曖昧で・・・その時に会ってるんでしょうか?)
(・・・はっ!?)
(誰かと話してたのは思い出せるんですが、それが誰かとか、話した内容とか全然思い出せなくて・・・って先輩?)
(・・・・記憶がない、そうか。そりゃあ・・・怯えるよな)
(はい?)
一気に書き上げたので意味不明だったらすみません><
※返信不要でも管理人は返信したいです!
それでも中には返事は要らない方もいらっしゃると思います。
ですので、絶対!返事は要らない!という方は、冒頭で「返信不要」の四文字を先につけて下されば、返信は致しません。
冒頭にその四文字の漢字がなければ、不要です、の方も返させてください!