うそのようなほんとの話。
以前から、ゆうちょ銀行のキャッシュカードが使えない状態になっていた。
以前といっても、高校生のときからなのでおおよそ3年ぐらいは確実に使えていないことになる。
しかし、3年間まったく使えない状態だったわけではなく運なのか、ATMの機嫌に左右されてのことなのかは分からないが、最寄駅近くのATMでは使えるけれど自宅近くのATMでは弾かれるなど、その他断続的にぽつぽつと使えていた時期があった。
もしかしたら今も断続的に使える状態なのかもしれないが、通帳を忘れてしまったため強引に(暗証番号を入力した後使えないから窓口に行けと何回も付き返された)カードを使って現金を引き出そうとしたとある日、ついにカードがATMから出てこなくなってしまった。
左手のインターホンを利用して係員を呼び出してください、といったメッセージが出た。
結局、ICチップの不具合による接続かなんとかの理由で詰まってしまったようだった。
修理担当のお兄さんに事情を話してみたところ、「お時間のある際に窓口に持っていってみてください。」とのことだったので(当たり前)休憩中職場近くの郵便局にカードを持ち込んだ。
「いかがなさいましたか?」
「すみません、キャッシュカードの不具合なんですが・・・」
ATMでカードが利用できないこと、とはいっても使える場所もなくはないが使える日もあれば使えない日もあり、ちょっとした運試しのような状況になっていること、そして今まで皆様にも秘密にしていた現金を引き出す秘法があることを伝えた。
その秘法とは・・・
「えっ、セブン銀行ATMでは使えるんですか・・・」
そうなのだ。
比較的諦めの悪い私は(世間ではそれを頑固と呼ぶんだぜ)どうにかして自分の力でこのカードを使えるようにならないかと躍起になり、差込口があれば所構わずカードを差し込む手癖の悪い所持者になった。
その努力が功を奏したのか天が味方したのかはさておき、なぜかセブン銀行だけはどのATMにも拒まれた私のキャッシュカードを受け入れてくれたのだ。
裏を返せばATMのシステムが脆・・・なのかどうかは分からないが、とりあえず通帳もあるし、セブンイレブンなら24時間引き出し放題なのでそこまで不便ではないんですが、一応。
というような意味合いの相談をした。
この意味合いのような〜という単語は実に便利なので、今後物事をはっきり言ってしまうと角が立つような場面、例えばAちゃんがBちゃんのことをはっきり嫌いと言ってしまっていたとして、「AちゃんがBちゃんのこと嫌いって言ってたよ」とするよりも「AちゃんがBちゃんのこと嫌いみたいなこと言ってたよ」ならば「ほんとのことはよくわかんないけど」とフォローを入れて誤魔化すことができる。
便利だが、この例は場を引っ掻き回した挙句自分に被害が及ばないように逃げ切りたい人用例のため、トークのレポートなど誰かに気を使う場合にのみ利用することをお勧めする。
使わないに越したことはないけどね。
話が逸れまくって大気圏まで到達しそうだったので軌道修正すると、
局員さんは少し考えて「ちょっとカードをお預かりさせていただいても?」と言ったので、カードを預けた。着席を促されたので、座席で地雷捜索作業に取り掛かり、暇をつぶしていた。
長くなりそうなので、マインスイーパについてはまたの機会に語りたいと思う。
そのうち、局員さんが私を呼ぶ声が聞こえたので窓口へと向かった。
「コチラのシステムでは使えたのですが・・・。
確認のため、一度ATMで試してみてもよろしいでしょうか?」
なんとびっくり、脆かったのはセブン銀行ではなく、セブン銀行以外のATMだったのだ。
心の中でセブンイレブン本社に向かって頭を下げた。
半分気を失ったまま、入り口に設置してあるATMに向いカードを差し込む。暗証番号を入力する前に、窓口まで〜と見慣れたメッセージが表示される。
だめですね〜。なんででしょう。と軽やかや雰囲気の局員さん。
「ではちょっと、ICチップの部分を消しゴムで消してみましょうか」
今なんと?
私の表情を見て察したのか、薄汚れた私のキャッシュカードに丁寧に消しゴムをかけながら「恐らくICチップが原因なので・・・。こうやってこすってみると使えるようになる場合もあるんですよ」と局員さんは言った。
まもなく、「これでいけるはずです。試してみましょうか」恐る恐るATMにカードを差し込む。
暗証番号を入力し・・・。
やった!いけた!!
ありがとうございます!!と興奮気味にお礼を伝えると、「とんでもないです。」続いて「この記録を登録しておきますので、もしまた不具合がありましたらこちらでもお近くでも構いませんので申し出てくださればカードの交換受付ができます。故意の破損ではなく、おそらくカードの不良によるものなので無償で交換いたします。印鑑のみお持ちくだされば結構ですので、よろしくお願いいたします。」
世間ではこれを神対応というのかもしれない。
あくまで私個人の場合なのでいずれにもならないかもしれないが、セブン銀行のATMからしか預金を引き出せない事態になった人のため(意訳)のような書き記しであった。
ちなみにそれからどうなったかというと、現在進行形でまたカードが使えなくなった。
印鑑を父親に貸してもらうにも、作成した本人がいないのでどの銀行印を使っているのかわからず、放置しているがまあ…なんとかなるだろうという怠惰の極みでしかない書き手であった。