南沢一家捏造してます。父親がダメ親だったり姉がいたりするので注意
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 ほんの出来心だった。

 今までの仕返しというか、どうせ卒業するんだしもうあの人たちとは関わらない、というか関わるつもりもない。肌色が少し黒くて、青みの強い灰色の髪…倉間に似ていて目付きの悪い女。倉間にそっくりすぎるし、全然好みのタイプじゃなかったけれど、あんなに露骨に胸を押しつけられてアピールされたら抱かないわけにもいかず。抱いたら抱いたで今度は倉間を見る度に思い出して、なんだか申し訳ない気持ちになるばかり。
 そして、卒業式の数日後、帰宅途中に声をかけられた。

「おい、ちょっと待て」

「…何です?今日は練習もないしさっさと家帰って勉強したいんですけど」

「お前さぁ、俺の女、抱いただろ」

「…それが何か問題でも?誘ってきたのはあっちなんですから文句ならそっちに言って下さいよ」

 この人の女と知ってて抱いた俺も悪いのかもしれないが、誘ってきたのはあっちなんだし俺に文句を言うのはやめて頂きたい。お前だって好みの女がいたら手出すだろ、とも言いたかったが、火に油を注ぐつもりはさらさらないので心の内に秘めておくことにする。

「ナメてんのかテメェ…ぶち殺すぞ」

「できるものならどうぞ」

「余裕ぶっこいた表情しやがって…相変わらずマジありえねぇ後輩だな、テメェはよ」

 ありえなくて結構、嫌いで結構関わらなくて結構。面倒なことこの上ないし、早くこの場を去りたかった。

「はぁ、じゃあもう俺帰りますんで」

 手を出してくるほど怒っているようには見えなかったので、さっさと横を通り自宅へと足を進めた。
 玄関のノブに手をかけたところで、珍しく母親の泣き叫ぶ声が聞こえた。何事かと思い扉を開けすぐにリビングへと向かうと、普段は温厚で滅多に怒るのことない母が受話器に向かってひたすら怒りをぶつける姿を見て、ひどく困惑した。

「…篤志」

 母の大きな瞳からこぼれ落ちる涙が、何があったのかを教えているようだった。受話器をこちらに渡すよう要求し、受け取り耳に当てると、聞きたくもない肉親の酒で焼けた声が聞こえた。

「久しぶりだなぁ、篤志。お前の話はよーく聞いてるよ。篤志の先輩くんからな。やっぱし蛙の子は蛙ってのはよく言ったもんだなぁ」

「…俺はお前とは違って誰彼構わず種振り撒いてるわけじゃねぇんだよ、一緒にすんなクソジジイが。…んで、用事は何なんだよ」

「ははは、まーた彼女妊娠させちまってさぁ、堕ろす金やんなきゃいけねーから半分ぐらい貸してくんねぇか?初期だったから大体六万ぐらいでいーわ」

「…お前さぁ、本当何考えてる訳?マジお前猿じゃねぇの、有り得ねぇわ。金ぐらい自分で何とかしろ。家に一銭も入れねぇくせにたかってんじゃねーよクズ、もう電話してくんな」

 そう言い放って強引に電話を切った。

「ごめんね篤志…迷惑かけちゃって…」

「別に気にしてねぇよ。つか母さん、今日同伴だろ?さっさと準備しねーと遅れんぞ」

「…そうだった!早くお化粧しないとすっぴんで同伴することになっちゃう。お客さんにすっぴん見られるのはちょっと嫌だもん。」

 母はそういつも通りの笑顔を見せると、メイク道具を持ちぱたぱたと慌ただしく洗面所へと駆け込んでいった。

 ここまで見て、大体の家庭事情というものが分かって頂けただろう。父親は数年前、リストラされてからろくに働きもせず、毎日酒やギャンブルに金を使うのだけで大迷惑だというのに、それに加え極度の女好き。…結婚してからはまともになって、一生懸命働いていたらしいが。ついでに言うと、俺の先輩の親と親父が飲み友達らしく、色々俺の女事情を聞いたりしているそうだ。
 そして、昼は内職、夜は近所のスナックで勤務している母親は、ろくに働かないあんな父親のことが未だに好き…というより、今のお父さんはお父さんじゃない、私が頑張ればいつか本当のお父さんに戻ってくれる、と考えを変えない。ちなみに、姉が一人いるが姉は大学近くのアパートで一人暮らししているため、今はこの家にはいない。

 そもそも、俺が内申内申うるさい内申至上主義になった理由は父親にある。こいつがまともな学歴を持ってなかったってこともあるが、親父のせいで一家は崩壊寸前になり家計は厳しくなる一方。俺が雷門を辞めて市立の中学にでも入れば多少は楽になるのだが、母が「サッカー大好きなんでしょ?楽しいんでしょ?だったら辞めちゃダメ。お金ならなんとかするから。そんなに心配なら内申上げて勉強もがんばって高校で特待生になってちょうだい!」と半ば冗談で言ったことを真に受けて、今こうしているわけで。

 自室に入り、鞄を放り投げると制服にも関わらずすぐさまベッドに潜り込み、携帯を開く。新着メールが二件あった。残念なタイミングというか、なんというか、差出人は倉間と、倉間そっくりの先輩の彼女から。前者は借りたCDを返しにいく、後者はシたいから家行ってもいい?という内容。普段の俺なら構わず後者を取るのだが、今日は気分が違った。倉間の顔が見たくなったからだ。後者に今日はパスっとく、とメールを返して倉間の到着を待つことに。

 待つこと数分、ぴんぽん、という何の変哲もないチャイムが鳴った。こんな胸の弾むような気持ちになったのは久しぶり…と思いながら、玄関の扉を開けた。


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南沢の家庭事情ってこんなんだといいなってかこんなんだから内申内申うるさいのかと思った 最初は

最近自分の思うように文章が書けない…むむむ…

2011/8/24
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