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それから、南沢さんは本当に俺の目の前でセフレさんたちに電話をして、関係を終わらせたいと告げた。その数なんと9人。その内の何人かは「ちょっと待って」なんて引き止めようとしていたのに、南沢さんは「もう終わりなんだからごちゃごちゃいうな、そういう約束だろ」と無理矢理電話を切った。悪びれた様子も見せないものだから、いつもこんなものなんだろう。なんだか相手がすごく可哀想だ。
「…南沢さん」
「なに?ヤり足りない?」
「は!?ちげーよ!…ただ、無理に女切らなくても…俺は南沢さんにセフレいても全然構わないっすよ」
強がりとか、同情とかってわけじゃない。正直な気持ちだった。別に、俺は南沢さんに惚れてるわけではないし、この人を独占したいとも思わない。一緒にいれるだけでいいのだ。…たまにはさっきみたいな行為をするかもしれないけれど。
「それはさぁ、俺に本気で惚れることは絶対にないってこと?」
「受け取り方は人それぞれっすね」
「喧嘩売ってんの?」
「もし南沢さんが切った女からいじめられたら責任とってくれるんすか」
「そしたらその女ぶち殺す」
「責任取れないんすね」
半ば呆れ気味にいうと、ぽんぽん、と二回頭を撫でられた。
「ばーか、」
「もしそういうことがあったら直ぐに呼べ。絶対に助けてやるから」
「は?…えっ、う、あっ」
どうも俺は不意打ちに弱いらしい。血液が顔に集まってくるのが手に取るように分かる。あの真のしっかりした優しい声に、恥ずかしながらきゅんときてしまったのだ。
「おお、顔真っ赤」
馬鹿じゃないか、この人は。なんで俺が女の一人や二人相手にできない前提で話をしているんだ。…でも、この人のふいに見せる優しさ攻撃の威力は、俺が赤面してしまうくらい凄まじいものだったりする。いつもこんな南沢さんだったら、ルックスとの相乗効果で一発で恋に落ちてしまいそうだ。
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こうして皆騙されていく、と
2011/8/17