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 それからはあっという間。色んなところを触られて、色んなようにされて。俺の記憶が正しければ、三回ぐらいはヤっている。今はもう気持ち良すぎて意識も朦朧としていているし、まるで快感のみを求めて欲を吐き出しあう獣みたいだ。

「…っ、出すぞ」

「う、あっ」

 ドクドクと流れ込んでくるそれは、最初より量は減ったものの、自分の中を微量ながら圧迫しているのが分かる。その圧迫感に反応してしまったのか、自身の先からも薄白い半透明の液体が溢れ出した。


 口の周りについたままの精液がだんだんと水分を失ってきているのが分かって、妙に気持ち悪く感じる。息も荒いし、頭がぼーっとする。ふと時計に目をやると、もう7時を回っていた。

「…んあ、流石の俺でももうダメだわ。今日はここまで」

 ふう、と一息つきながら隣に寝転ぶと、こちらを向いて、また怪しげな笑みを浮かべた。なんか、距離が近い。

「なあ、もう一回聞くけど、お前なんで抵抗しなかったわけ?ノンケなら普通、いくら先輩に無理矢理されたとしても暴れるだろ」

 …言われてみれば、確かにそうだ。普通ならそうするはず。多分、相手が南沢さんじゃなくて、何故こいつを思い浮かべたのかは分からないが松風天馬とかだったら、プライドを捨てて泣いてでも抵抗すると思う。

「…俺は南沢さんのこと、別に嫌いってわけじゃないから、じゃないですか」

「なんだそれ、ワケ分かんねー。つまりお前はホモってことかよ」

「違いますよ!先輩として尊敬してたってことっすよ…それより、話ってなんなんすか」

「…あー、そういえば話があるって言って連れ込んだんだっけ。ごめん、あれは嘘」

「は?」

「倉間とヤりたかっただけ」

「…はぁ?」

 なんだそれ。
 それが正直な感想だった。なんで女じゃなくて男、しかも後輩の自分なんかとやりたいなんて思うんだ、人のことホモホモからかっといてホモなのは自分じゃないか、本当になんだこの人、とか色々な思考がぐるぐる頭を駆け巡っていた。

「あれ、全然伝わってねー。つまり、お前のことが好きってことなんだけど」

「…はい?」

「もちろんlikeじゃなくてloveの方な。」

「いや、俺、男ですけど」

「知ってる」

 呼吸する間もなく、唇は侵入してきた舌に塞がれた。手足をばたばたさせて抵抗しながら、考える。どうにかしてこの舌を追い出さなければならない。たぶん永久に。そのためには今どうしなければならないのか。んうんう叫んでみても止めようとはしないし…被害を受けてるのはこちらなのに、なぜか心の中でごめんなさいと呟き、かぶっ…と舌を噛んでやった。

 一瞬ひっこんだすきを狙い、舌を追い出し近くにあったタオルケットで口元を守るように覆った。
 ぺろ、と舌なめずりをした南沢さん。さっきまで今以上のことをしていたのに、恐い。恐い、恐い。

「やっぱ嫌がってる倉間のが可愛いわ。その目とかさぁ、すげーそそる」

「…南沢さんなんかもう嫌いです、最低、いっそ死ね」

「んなこと言うなって。…お前さぁ、本当は俺のこと好きだろ?」

 わざと低めの声で囁くのは本当にやめて頂きたい。ぞくぞくして気持ち悪い。

「好きだったらなんだって言うんすか…どうせ性欲処理機として好きってことですよねー。そのぐらい分かってますから」

「お前が俺のこと好きなんだったら、女との関係は全部切るけど」

「…そこまでする必要あるんすか」

「だって倉間のこと好きだし」

 …なんて答えたらいいのか、さっぱり分からない。好きといっちゃ好きだけれど、恋愛対象というわけではないし、第一にこの人は男なんだ。しかも悪魔だ。もはやエロ大魔人だ。でも、この人の目を見つめていると、本当は好きなんじゃないのか?という疑問が沸いてきた。
 ずっと、毎日、俺はこの人を見ていた。飽きもせず。彼を見ていると、心のなにかが満たされて、あったかくなるように感じた。それがもし恋という感情だったら、もしそうだとしたら。俺は、この人が、

「…好き…かも」

「ん?聞こえねー。もっかい」

「もしかしたら、好き、かも、です。南沢さんの…こと」

 心臓がばくばくして、はち切れそうだ。さっきまでは違う意味でドキドキしていたのに、まったく人間ってものはよくできてる、なんて思う。

「好き、じゃなくて好きかも、かよ…まあいっか。近いうちにそのかも、を大好き!に変えてやるから」

「んなこと南沢さんにはできませんよ」

「できるに決まってんだろ」

「本当っすかねー…心配っす」

「じゃ、まず手始めに今日泊まっていけ。金曜日だから明日学校休みだし」

「いやいやいやいや!マジで何言ってんすか!?明日は朝練ありますから!」

「俺んちのが近いし別にいいだろ」

「そういう問題じゃ…って俺のケータイ!」

 俺のケータイで何かをしていると思ったら、急に画面を見せてきた。完全に負けた、と思った。その画面には、発信中 母と表示されていた。数秒して、通話中の画面になった。

「ほれ」

 悪気もなさそうにケータイを突き出してきた南沢さんに蹴りの一発でもおみまいしてやりたい気分だったが、我慢してしぶしぶ携帯を受け取り、今日は先輩の家に泊まると母に告げ、電源ボタンを押した。

「お前さぁ、ロックかけないとか触ってくださいって言ってるようなもんだろ。俺なんか一回ロック設定してなかったとき、ヤり捨てちゃった女に体育の授業中携帯パクられてデータとアドレス全削除されたときは死ぬかと思ったし」

「それは南沢さんが悪いんです」

「だって倉間のこと好きで好きで仕方なかったけど、嫌われるの嫌だから手出せなくてさぁ、女で我慢してたんだぜ」

「そういうわりには今さっき手出しましたよね」

「海の広さに比べたらちっぽけなことじゃねぇの?」

「誤魔化し方下手っすねー。勉強はできる馬鹿ってこういうことか」

「その馬鹿を好きになったお前は超馬鹿」

「死んでください」

 がんっと軽く蹴りを入れると、少し痛がって、お返しと唇にキスを落としてきやがった。

「なんかムラムラしてきたからさぁ、風呂沸く前にもっかい、ヤっちまおうぜ」


 …いつかこの人を自由に操れますように。それまでは、我慢しよう…我慢。

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気付いたらすごく長くなってた

2011/8/15
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