三国先輩と拓人が絡んでます
蘭丸が暴力的なので苦手な方は注意
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 その日、俺は練習でミスを連発して苛立っていたこともあった。でも、神童が俺以外の誰かに性的な目で見られて、触られるのは嫌だった。

 不規則に何度も、ただひたすら謝り続ける神童は、怯えているといっても、俺に怯えている、ある意味で俺のことしか頭にないということ。そう考えたら、何とも言えぬ優越感で満たされた。

 もっと神童の泣く姿が見たくて、ポケットから護身用に、と忍ばせていたカッターをそっと取り出し、強く首元に当てた。

「…、……!?」
「声になってねーよ」

 さらに力を入れると、皮膚がめくれ、血がじわじわと滲んできた。それでもやめずに力を増すと、やがて血液はひとすじの道となって流れて行き、ユニフォームに赤い染みが広がった。

 苦痛に顔を歪ませるたびにぽろぽろとこぼれ落ちる神童の涙。嫌なら抵抗すればいいのに、そんな素振りを一切見せないものだから、萎えた…というよりは、自分が加害者なのだけれど、神童が可哀想になってきてしまった。

 一応、こんなことになってしまったのにも理由がある。最初にも記述があるが、俺は練習で立て続きにミスをした。だから、練習が終わっても一人で残って練習をしていたのだ。
 それも終わり、少し落ち込みつつサッカー棟に向かう。ふと靴箱に目をやると、神童と三国さんの靴が置いてあった。きっと次の試合の相談でもしているのだろう。邪魔をしないように静かにミーティングルームを通っていったが、二人の姿はどこにもなかった。
 少し不思議に思いつつも、あまり気に止めず更衣室のドアノブに手をかける。…瞬間に、神童の甘い嬌声が耳に伝わった。

 ―まさか、まさか。

 頭の中が真っ白になり、ぐちゃぐちゃになった。もし自分が考えていることが、この扉一枚の前でされているとしたら…とパニックになっている時間だけ、一回、二回、三回と聞こえてきて、まるで俺の思考に追討ちをかけられたような気分だった。

 このまま立っていてもらちがあかない。というより、何故こんなことになったのだろうか?腹が立ってきた。一応、(男だけど)俺と神童は恋人同士だというのに、先輩だからとはいえそんな簡単に身体を許して(男だけど)良いものなのか。
 そうこう考えているうちに、手が勝手に出ていてしまって。

 ドアノブを回し、扉を蹴った。いくら雷門イレブンだとはいえ、自分はDFなのでキック力はあまりないし、扉も厚く頑丈なため、普通に痛かった。
 だがそれよりも気になる二人の人物は、頬を赤く染め、制服を乱し、手を絡め合い、重なり合っていた。まあ、予想通りに行為の真っ最中だったわけで。

「き、り…の」

 完全に怯えている神童。それも無理は無いと思う。だって今の俺は、物凄く恐ろしい形相をしているだろうから。
 その顔のまま二人の間にずかずかと入っていき、三国さんのカバンと服、そして三国さん自身を引っ張って更衣室から放り出すように追い出し、扉を閉め、鍵を掛けた。

 今度は神童の前へと歩いていく。座り込みながら、気まずそうにこちらを見上げた神童の腹に、弱めの蹴りを一発と、顔面にビンタを一回食らって頂いた。
 信じられない、とでも言いたそうな神童の顔を見て、俺の方が信じられないよ、と言い放ち、ムカついたのでもう一度蹴った。

「なぁ、なんでお前、あんなことしてたんだ?それとも、そんなに溜まってた?」

 しゃがみこんで、同じ目線で、目をしっかりと見つめてながら言った。自分でも分かる。いつの間にか神童の泣き虫が移ったのかもしれない。なんか、泣きそうだ。

「最初は…最初は、ちゃんと…次の試合の作戦会議を、していたんだ。…でも、」

 神童が言うには、会議も一通り終わり、更衣室で制服に着替えていたところ、神童がよろけて三国さんに覆いかぶさってしまった。それで三国さんのアレが反応し、神童は一向に収まらないソレに責任を感じて、処理したはいいものの、三国さんに変なスイッチが入ってしまったらしく、そのまま…らしい。嘘じゃあないだろうが、なんか…どうにも腑に落ちない話だ。

 やっぱり、イライラはおさまらなくて。
 胸ぐらを掴み、力いっぱい殴る。そのまま崩れ落ちた神童の腹を、また、蹴った。
 俺、こんなひどいことできるんだなーなんて呑気に考えていたら、神童は体を起こし、完全に怯えきった目で俺を見つめ、ふるえる声で、ごめん…と、不規則に、何度も謝罪の言葉を口にした。

 ―そんなこんなで、冒頭の行動に至った訳だ。


「きり、の」

「…なんだよ」

「…本当に…本当に、すまなかった」
「俺、が…軽い気持ちで…あんな、ことっ、し、た、からっ…」
「だから…だか、ら、」

「…嫌いには、ならないで、欲し、い…」

 まだ涙を流しながら口にしたその言葉は、神童にしてはひどく弱々しいものだった。
 また暴力をふるわれるかもしれない恐怖と、それでも俺とまだ一緒にいたい、という気持ちが混ざり、しかも泣き続けたことで頭が混乱して、訳が分からなくなってしまっているのだ、たぶん。

 そんな神童を見て、どうでもよくなった…わけではないが、一応、俺も練習でミスをしなければ残ることも無かったし、二人は行為に至ることはなかった。
 所謂、やつあたり。俺がいなかったことが、あの行為の要因だということを見ないようにして、一方的に神童を責め、傷つけた。
 もう、神童は俺にひとかけらの好意的な気持ちもないだろうと思っていたのに。

「神童、」

 そっと神童を抱きよせて、つよく、優しく抱きしめた。シャンプーのいい香りと、血のにおいが鼻につく。

「俺、どうかしてた。なんか、二人がヤってるの見て頭イカれちゃってさ…ここも、痛かっただろ?抵抗しなかったんじゃなくて、我慢してたんだよな…。本当、謝っても足りないけど、ごめん。こんなことして…本当に、ごめん」

 言い終えるころには、大粒の涙が頬をつたって流れ落ちていた。神童を抱き締めていた手をゆるめ、シャツを捲ると青紫の痣がいくつかできていた。それをそっと撫でると、また涙が溢れてきた。ほんと、バカみたいだ。

「こっち向いて、…霧野」

 ふいに聞こえた言葉に従い、顔を上げると、くちびるに暖かい感触、高そうな、シャンプーのいい香り。
 だが、それはすぐに遠ざかってしまい、神童の落ち着かない息が軽く頬にかかる。

「…謝らないでくれ。俺も悪いんだから。それに、霧野になら、暴力振るわれたって、何されたって、構わないから…だから、俺のこと、嫌いにならないでくれ…お前じゃないと、だめなんだ…」

 後半になるにつれて、弱く、か細くなっていくその言葉は、喧嘩するたびに必ず言うもの。
 俺たちがいつまでも一緒にいられる絶対の保障があるわけではないし、神童も今は俺がいないとダメだけれど、大人になれば、お互い普通に恋をしたりして、いつかは離れ離れになってしまう時も来るだろう。だから、今だけは、

「…心配すんな、ちゃんと、そばにいてやるから」

 自分だけを見ていてほしい


 (一応絆創膏貼ってみたけど、デカいのしか無かったから目立つな)
 (キスマークだと思われたらどうするんだよ…)
 (まあ、それはそれで。何なら、つけてやろうか?余白はあるんだし)
 (…えっ)


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なんか、蘭丸ってものすごく機嫌悪いと暴力振るいそう。好きな人も平気で殴りそう。

なんかこういう昼ドラみたいな展開が多いんですけど…なんででしょう…無意識に…

2011/8/8
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