了平「本気に…させただと…?」 紅葉「そうだ、了平。貴様は自らの手で勝機を消し去ってしまったのだ」 芽埜「?(青葉さんは、何を言ってるんだろう?)」 動きを見切られた上に眼鏡も吹き飛ばされた。 了平の言うことが間違いでなければ紅葉は眼鏡がなければまともに戦えないのではないのか。 メガネは目の悪い人間がかけるものだと思っている芽埜たちは首をかしげる他ない。 紅葉「これで貴様を倒すことなど拳だけで十分だ」 え!?纏っていた森の炎を自分から取った!? 芽埜たちが驚く中紅葉は炎など必要ないと取り払ってしまう。 そんな自信が何処から来るのか全く分からない。 この状況は明らかに紅葉の不利だ。 了平は疑問を抱くも紅葉へと向かっていく。 了平「ならば紅葉、貴様の本気見せてもらうぞ!!」 ツナ「あっ飛び込んだ!!」 飛び込んで再び攻撃を掠めて、致命傷を負わずに炎をチャージする。 それでいいはずだが芽埜は何だか嫌な予感がした。 紅葉の目が鋭く了平を見つめていて、今までの戦いと違うのを感じ取っていたのだ。 ―――ビュッ、パァン! 腰の入っていないスピードだけのパンチが二の腕に命中する。 あの程度のパンチなら致命傷にはならない―――はずだった。 了平「ぐあ!!……ぐああ!!!う゛っ」 何が起きたのか、理解が追いつかない。 先刻のパンチに細工があったようには思えないの。 だが事実、了平はうめき声をあげて腕を押さえているのだ。 了平「何をした、紅葉!!」 紅葉「おいおい、何だ。その口ぶりは?言っておくが僕は拳に細工などしてないぞ。たしかに視力はとてつもなく上がったがな」 視力が…上がった!? 全員が驚く中紅葉が自分自身の能力を解説する。 了平が眼鏡を吹き飛ばしたということは視界を遮るものを取り除いてしまったということだ―――と。 それにより静止視力、動体視力、深視力、その他あらゆる視力が数百倍にも跳ね上がったのだ。 ツナ「眼鏡が取れて視力が上がるって……え?」 獄寺「貸してみろ!!」 鈴音「あ。それ…何も見えないけど?」 ランボと話していた鈴音から眼鏡を取り上げた獄寺が眼鏡をかける。 そして目を見開いた。 獄寺「んだこりゃ!?何も見えねーじゃねーか!!」 鈴音「だから、そう言ったじゃない」 紅葉「その眼鏡は僕の常人をはるかに超えた視力をセーブするためのもの。いわば拘束具のようなものだ。裸眼となった僕の眼にはキラースポットがはっきり見えるぞ」 <キラースポット>。 体中を血液が流れ筋肉が収縮し細胞が蠢くことによって生まれる肉体のひずみ。 鍛錬では補えない弱点のこと。 ツボと似て非なるもので、ツボが固定された部位であるのに対してキラースポットは動きと共に移動する流動的弱点。 全身の疲労と痛みがむき出しのまま集中するキラースポットでは軽い攻撃を受けてもとてつもないダメージを喰らってしまう。 芽埜「つまり先輩が狙われたのはキラースポットで、さっきの攻撃はそこを射抜いたからってこと…?」 紅葉「もっともキラースポットを射抜くことが出来るのは僕の正確無比な拳闘技術があってこそなのだがな」 了平「く… (腕が、上がらん…)」 紅葉「さあ仕上げだ了平!!そら!!」 了平「ぐああ!!」 一撃で炎が灯ってしまう重い攻撃。 あのダメージの喰らい方は危ない。 芽埜「(まともに撃ち合ったら―――やられる!!)」 紅葉「貴様らボンゴレの屑共はシモンの地で灰と化すのだ!!」 それからというもの了平は避けてばかりで攻撃に転じようとしない。 反面、繰り出される攻撃は身体を蝕んで60%ものダメージを与えてしまう。 ボロボロの体で有刺植物に掴まるようにして膝をつくまいとする了平に紅葉が叫ぶ。 けれど。 了平「フッ…紅葉よ。何をそれほど焦っている」 紅葉「何!?」 了平「やっと楽しくなってきたところではないか。のんびり12R戦うというのはどうだ?」 紅葉「くっ、ふざけたことを…ぬかすな!!!」 <必要ない>。 そう言って消した森の炎を使い始めた紅葉にどこか確信を持った顔をする了平。 何か考えがあるのだとは思うものの、心配は消えてくれない。 あんな体で攻撃を受け続けたらどうなるか分かったものではない。 紅葉「逃がさんぞ了平!!」 リボーン「紅葉の様子が変だな…」 ツナ「え?」 リボーン「攻撃が直線的で単調だ。了平はそのことに気付いてるみてーだがな」 紅葉「またんか!!何故逃げる!!了平!!!……ふっ、ぐわっ!!!」 攻撃を受けていないはずの紅葉の鼻から血が流れ始める。 目を見開き痛みに声を上げた彼が額を抑える中、了平が構えを取った。 芽埜「(まさか…先輩はこのときを待ってたの…!?)」 紅葉「しまっ…」 ―――サンシャインアッパー!!! 60%の力で放たれたアッパーが紅葉を吹き飛ばして有刺植物の茎へと衝突させる。 了平も凄いがあの一撃を与えられたのはあの一瞬紅葉の動きが止まったからだ。 それは<オーバーヒート>という現象で紅葉の驚異的な視力が引き起こしたもの。 物がよく見えるということはそれだけ大量の情報が眼から頭の中に一気に流れ込むと言うこと。 普通の状態よりはるかに膨大な量の除法を処理するために眼や脳にかかる負担は半端ではない。 長時間の使用には耐えられないからこそ視力を抑えるメガネをかけていたのだろう。 リボーンが言うには、そういうことだった。 それで紅葉は早く決着をつけたがっていて、了平はそれを誰よりも早く見抜いていたのだ。 琉輝「なんにせよ笹川が勝ったって事だろ?それでいいじゃん」 紅葉「何も終わっとらんぞ!!」 了平「!!」 紅葉「ぬくぬく生きてきた貴様の軟弱パンチなどでやられる青葉紅葉ではないわ!!」 芽埜「そんな!!炎のチャージは60%に達していたはずなのに!!」 獄寺「あいつにはあのパンチが効かないのか!?」 リボーン「いいや。紅葉の腹を見てみろ」 亞琉「並の人間であればとっくに気を失っていて可笑しくない重症です。さらにいつオーバーヒートしてもおかしくないあの目で戦い続けることは無謀もいいところでしょう」 芽埜・琉輝・ツナ・獄寺「………。」 リボーン「それだけあいつにとってもこの勝負は負けられない戦いだということだ」 紅葉「当然だ!!貴様らボンゴレとは背負っている悲しみの大きさが違う!!」 了平「すまなかったな、紅葉…。少々お前を侮っていた。やはりお前は炎をフルチャージして倒さねばならぬ男」 紅葉「フン、ドアホウが」 今から炎をフルチャージするほどのダメージを喰らって了平の体が持つはずがない。 けれどそれは紅葉も同じこと。 とてつもなく負担のかかる眼で了平を倒すまで立っていられるのか。 リボーン「肉体のリミット対時間のリミットだな。 了平はバングルの炎をフルチャージするまで紅葉のキラースポットへの攻撃を喰らい立っていられるか。紅葉は了平の炎がフルチャージされるか自分の目がオーバーヒートするまでに了平を倒すことが出来るか、だ。 いずれにしろ決着(ケリ)がつく」 紅葉「ルールを忘れていないだろうな、了平」 了平「無論だ、紅葉。一度でも膝をつけば負け」 同時に炎圧をあげた2人が拳を振るい、避け、を繰り返す。 了平「があ゛あ゛!!!」 獄寺「あいつ、馬鹿正直に向かってきやがって!!」 リボーン「ちげーな。紅葉の動きに柔軟性が戻ったんだ。この戦いにかける覚悟が奴の焦りを消し去ったようだな」 紅葉「了平よ!!肉体の全てを使い物にならなくしてやるぞ!!」 了平「やれるものならやってみろ!!」 左腕、右腿、左肩、右手、側頭部、左腿、レバー。 キラースポットを狙われ射抜かれた了平はフラフラとしており立っているのもやっと。 それでもチャージされた炎は90%でフルチャージにはあと10%足りない。 さらには一歩も動けないどころか押せば倒れてしまうほどの体力しか残っていない。 その上全身を蝕むキラースポットが見えていると紅葉は言う。 こんな不利な状況で、了平が勝てる要素が見当たらなくて唇を噛み締める。 何も出来ないことが、こんなにも悔しい。 紅葉「了平…正直貴様との勝負は楽しかったぞ。だがもう貴様にはパンチの狙いを定める力すらありはしない!!」 了平「ビビッているのか青葉紅葉!」 紅葉「何!?」 了平「御託など聞き飽きたわ!!!ヘボパンチを撃ってこんか!!!」 紅葉「フッバカが。ならば結局望みどおり終わらせてくれる!!この拳でな!!死ね了平!!!」 ツナ「お兄さん左です!!」 獄寺「避けろ芝生頭!!」 琉輝「笹川!!!」 ―――ガキッ!!! 紅葉「どうだ了平!!!」 嫌な音を立てて防具が壊れる。 頭部から血が流れ落ち、地面に染みを作る。 ガクッと崩れ落ちた了平は紅葉に寄りかかるようにして倒れた―――かと思われた。 了平「…つか…まえ…たぞ、こう…よう…」 その瞳は真っ直ぐに彼を見ており、その腕は確実に彼を捕らえた。 そしてバングルに炎が灯り日輪のように光り輝く。 つまりそれが指すのは…―――。 眼 晴のVG、フルチャージ!!! 戻る |