獄寺と芽埜がSHITT-P!と心を通わせた?翌日。
一行はリボーンから昨日起きた事件について話を聞かされていた。




ツナ「え!?どっ同盟ファミリーがやられたって!?」

獄寺「伝説の殺し屋集団ギーグファミリーが、スか!?」




部屋に響き渡ったツナと獄寺の声。
<ボンゴレの同盟であるひとつの凄腕ファミリーであるギーグファミリーが5丁目の工場跡で継承式の妨害を企む敵に返り討ちにあった>。
それがリボーンの話してくれた昨日の事件だ。

ツナは家から近いということで顔を青くしているが芽埜は顔をこわばらせながらも話に集中した。
いつもは一緒に怯える側だろうが今は何よりも情報が大事だと思ったのだ。




リボーン「どの死体も今までに見たことのないやられ方をしている」

ツナ「何…それ…」

アーデルハイト「敵の正体はわかったのですか?」

リボーン「いいや不明だ」




リボーンから不明だと聞いたアーデルハイトの目が小さく細められる。
芽埜はそれを見て一瞬胸騒ぎのようなものが起きて、ぞわっと背筋が粟立つようなそんな感覚に見舞われた。

確認するようにもう1度彼女を見ても何も起こらない。




芽埜「(なん、だったんだろう……?)」




だがとても恐ろしかった。
それだけが一瞬にして体に染み付いてしまったような感じがして芽埜はそっとアーデルハイトから目をそらした。

彼女を普通に見ることが、出来なかったのだ。




ツナ「つ…つまり…正体不明の敵が俺たちを狙ってそこら辺をうろついてるって事!?
ヤバイよ!!やっぱ継承式なんてとんでもないって!!」

芽埜「!」




震えるツナを見てやっぱやばいんだ。と今更実感が湧いてくる。




芽埜「(今まで戦いとかやって来たけど実際実感が湧いてこなかった。
シエラさんにしても紅蘭にしても芽埜の相手、狂気系とかダーク系とか殺人衝動アリアリの殺人鬼系とかでもなかったわけだし?
2人ともなんか妙に手加減して芽埜と戦ってた気がするし…?)」




対戦した相手、シエラと紅蘭を思い浮かべる。
あのふたりは共通して身内に甘く、誰かに負い目を感じていた。
心を囚われがんじがらめになっている2人のことを心直感ゆえなのか見抜いてしまいほうっておけなくなった顛末が今までの戦い。
鋭さで言えばあの2人よりも黒曜の時対戦した亞琉の方が容赦がなかったし、<殺されるのではないか>という危機感を抱いたものだ。


どれだけ痛い思いをして辛い思いをしても、いつどこでどんな真実を知りどんな過去を知ろうとも、彼女はマフィアに現実味など覚えていなかった。
そんな中継承式が訪れて、ようやっと実感を覚え、これが現実なのだと思い知ったのである。



―――どれだけ、過酷で残酷な世界なのかも。




獄寺「心配いりません十代目!!誰にも継承式の邪魔はさせません!!もちろん芽埜、お前もだ」

アーデルハイト「その意見に賛同します。我々シモンファミリーも継承式まで全力であなた達を守ります」

了平「必ずお前たちを十代目ボスと副ボスに出世させるぞ!!」

らうじ「継承式は大丈夫ら」

山本「安心しろよ、ツナ、芽埜」




ツナと芽埜の意見は完全無視に近い。




ツナ「み、みんな…いや…あの…!」

芽埜「い、いや…あの、まっ…!」

獄寺「よし!!とりあえず怪しい奴がいないか周囲をパトロールするぞ!!」

了平「おう!」

ツナ「え、ちょ…ッ、待…っ!!」

芽埜「まっ、待ってよ…!」




そう言いながらみんなはぞろぞろと部屋を出ていってしまう。
待ってほしくて呼びかけたのに誰も聞いてくれなかった。

正直、気分ガタ落ちだよ…!!と頭を抱える芽埜やツナの事など、誰も目に留めない。




ツナ「あの…そういうことじゃ…」




炎真と知花だけが部屋に残っていた。
ツナが炎真に話しかけると僕も行くね。と知花を連れて出ていってしまう。




―――パタン、




扉の閉まる音が何故か凄く怖く聞こえた。




芽埜「(なんか、気分、悪くなっちゃったな…。皆…気持ちばっかり無視していくんだもん。)

ん〜〜〜……」

リボーン「どーしたんだ?浮かない顔して」

ツナ「当たり前だろ!?今日改めてマフィア世界の怖さがはっきりしたよ!!ファミリー同士の抗争とか殺し合いとか本当にありえないから!!」

リボーン「あっそ」

ツナ「あっそ、って何だよ!!?」

芽埜「で?芽埜はどうしたんだ?」

芽埜「…リボーンくん、分かって言ってるでしょ…。やっぱ違うよ…!!!誰も意見なんて聞いてくれなくて、みんな勝手に進めちゃうんだもん…!
ついてなんか、いけないよ。心が追いつく前に、全部全部過ぎ去っていっちゃう。………なんにも、わからなくなっちゃう。



もう、気分悪くなっちゃった…。芽埜、行くね」

リボーン「………待て。見ろ、九代目がお前等に会いたがってる」




窓の外を見ると高そうな車に2人の男性がいた。
九代目と共に日本にやって来た守護者の嵐の守護者コヨーテと雷の守護者ガナッシュだ。




ツナ「な…何?あのごっつい人達」

リボーン「九代目の守護者だ」



お前達を迎えに来たんだぞ。と付け加えて言うリボーン。


芽埜達を…迎えに…?
急な話に芽埜もツナも混乱を隠せない。




ツナ「そんなあ!!いきなりー!?」

リボーン「さぁ、行くぞ」




リボーンが窓から部屋を出て行くと芽埜達はポツン、と取り残された。




ツナ「は、はは…。もう、やだよ…。マフィアのボスなんてならないって言ってるのに、さぁ…」

芽埜「皆、気持ち無視して行っちゃうね…。あ、そうだ。綱吉も鈴音ちゃんと友達になれば良いんだよ」

ツナ「はぁっ?」

芽埜「鈴音ちゃん、全部芽埜の心を第一に考えてくれるの。きっと、綱吉も友達になれば少しでも心が安らぐはずだよ!」

ツナ「……でも最近の鈴音さん、ちょっと怖いんだよな。何考えてるかわからなくて俺たちに何も教えてくれなくて。<1人でなんでもできる>って言わんばかりに全部終わらせちゃって………。
今回だって、そうだよ。姿を現すまで……一体どこで何してたのか……」

芽埜「………………。
あっ……そ、そろそろ行こうか…。リボーンくん撃ってきそうだし…」

ツナ「!
そ、そーだね…」




ツナと一緒に沢田家を出て車に乗り込む。
だが内心穏やかではなかった。




芽埜「(ま、マジ怖いぃぃぃいっ!!!!!九代目の守護者マジ怖い!!!!!)」




ホテルに着くとこちらです。と案内され九代目のいる最上階へと案内される。
空気は怖いわ、貫禄が半端ないわ、ニヤニヤしてこちらを見てくるわ、見下ろされるわで2人は顔をこわばらせていた。
ツナの守護者は同年代とか1年上の先輩とか5歳児であまり貫禄ない人ばかりだからなのか、余計そう感じてしまう。


けれど、それよりも大事なことをこれから伝えなければならないのだ。
ここで怖がっていては、何も告げられないだろう。




ツナ<絶対…断るぞ…>

芽埜「(あ…。)」

ツナ<九代目に何を言われても「ボスは継ぎません」って断るんだ!!>




強い強いツナの想い。
それを感じてツナの手を握り締めて、笑いかければツナが固く瞑っていた目を開いて情けなくへらりと笑った。




芽埜「(そうだよ、芽埜は綱吉を守らなきゃいけないのにこんなことで怖がってちゃ駄目。マフィアとか関係無しに、芽埜は綱吉を守るんだから。)」




それから凄く広い部屋について、この階全てが部屋なのかと驚いていれば声がした。




「こっちじゃ、こっち。よく来たね、綱吉くん、芽埜ちゃん」




芽埜・ツナ「おじいちゃん!!」




九代目はトマトに水をあげていた。
呼びかけられた名前に2人してそう言うと九代目の守護者の一人にじっ、と見下ろされるわ、笑われるわで凄く恥ずかしい思いをしてしまった。




九代目「まだそう呼んでくれるとは、嬉しいよ。ありがとう、ツっ君、芽埜ちゃん」




つ、つい呼んじゃったと言うか…。
そんな気分で九代目をそろりと見上げる。
小さい頃に遊んでくれたおじいさんそのままの九代目がそこに存在しており、芽埜は微かに微笑んだ。


変わらないものに、少しだけ安心したのかもしれない。
九代目の笑みは昔から少しも変わっておらず、優しく温かい、祖父を思い出すようなもの。

けれど祖父の笑みを本当に思い出してしまう前に芽埜は軽く頭を振り、思考を遮る。
思い出してはならない。
どれだけ温かく優しい記憶でも祖父のことだけは、ならないのだ。


父が、……東眞がとても悲しんで、苦しそうな顔をするから。




九代目「お茶にしよう」

ツナ「はあ…」




そう言う九代目に曖昧に返事をすることしか出来ず、九代目を目の前にソファーに腰掛ける。
元々此処には継承式を断るために来たので、和んでいる暇はない。




ツナ「あ…あの…九代目…」

芽埜「私、たち…実は、話が…」




九代目「好きにしなさい。綱吉くんと芽埜ちゃんの人生だ」




芽埜・ツナ「へっ」




ニコリ、と微笑み九代目はあっさりと<好きにしていい>と認めてくれた。


…え、嘘…!!

驚いていれば九代目は話してくれた。
九代目はユニたちに夢で10年後の出来事を聞いたらしい。
そして、その戦いで沢田綱吉と言うボンゴレの十代目候補と紀本芽埜というシエロ二代目候補にしてボンゴレ副ボス候補はマフィアのボスには向いていないと改めて確信したらしい。




九代目「綱吉くんは<弱虫>で<優柔不断>で<優しく>て<仲間を想い過ぎる>。
芽埜ちゃんは<強い>し<素直>だけれどその反面<人一倍心が臆病>で<感受性が強すぎる>」

リボーン「褒めてねーぞ」

芽埜・ツナ「い゛っ!」

九代目「しかしだからこそ、綱吉くんと芽埜ちゃんなら今の肥大化してしまったボンゴレファミリーを本来のあるべき姿に戻せるかもしれない」




本来の…あるべき…姿?

首を傾げていればすでに聞いていると思うが…。と九代目が語り始めた。
T世が作った初代ボンゴレファミリーは元々住民を守る自警団だったこと。
大切な人を守るために戦いはしたがむやみに権力を広げる戦いはしなかったこと。
それは綱吉と芽埜のやってきたことによく似ているということ。


九代目の言葉はすとんと胸の中に落ちてきた。




九代目「変わったのはそれ以降のボンゴレじゃ」

ツナ「は…はぁ…」

九代目「おっ、そーじゃ。見せてくれんかの?T世たちから授かった原型といわれるボンゴレリングとシエロリングを」

ツナ「あ、はい」




首にかけたそれを差し出せば九代目はリングを見て感慨深そうに、と口にした。




芽埜「おな、じ…?」

九代目「今のボンゴレを壊してほしいんじゃよ」

芽埜・ツナ「!!」

九代目「純粋なボンゴレの意志を継ぐことが出来るのは綱吉くんしかいないんじゃ。そして、それを本来の意味で陰から支えられるのも芽埜ちゃんしかいないんじゃ。



もう1日だけ、じっくり考えてくれないかの?」

芽埜・ツナ「!」




九代目の目はとても真剣で、目が離せなくなった。
それと同時に凄く恐ろしかった。




―――あの瞳に全て見透かされているんじゃないか、と。




ツナ「で…でもまだ俺も芽埜も子供です!!なんで、そんなに急ぐんですか!?」

九代目「確かに就職するにはまだ少し早いがT世が自警団を組織し始めたのも君達の年の頃だ」

芽埜「で、でも、芽埜も綱吉もT世さんたちじゃありません…!!」

九代目「わしは未来での君達を見てもう大丈夫だと確信したのだよ。ならば善は急げじゃ。
君たちが1日でも早くボスと副ボスを継げば君の見たくない抗争や殺し合いが早くなくなるはずじゃ」

ツナ「そ…そんな……」

芽埜「そんな事、言われ…ても…」




どうすればいいのか分からなくなっていれば、これでは継いでくれと頼んでいるようだスマン。と謝ってくれた九代目。
明日までに嫌なら嫌だと答えれくれればいいと言う。




ツナ「でも…もし断ったら継承式は…」

九代目「なーに、そんなものはキャンセルすればいいだけじゃ」

芽埜「で、でも、凄く大きな迷惑がかかるんじゃ…!」

九代目「平気じゃ平気♪


さてっどーだいツっくん、芽埜ちゃん。一緒に夕食を食べて行かんか?」

ツナ「えっ、いや…も…もう……失礼します!!」




泊まって行く。と言うリボーンを置いてホテルを出た。
家まではそう遠い道じゃないからと車を断ってツナと2人、帰路を歩く。




ツナ「………な、なぁ…芽埜は、どうするんだ?」

芽埜「…え…?」

ツナ「ほら、好きにしろって言われただろ?」

芽埜「…うん」

ツナ「だから、どうすんのかな、って」




ツナにどうすると聞かれた。
けれどそれには答えないと、密かに決めたのだ。

あくまで今回のみ。
今回のみは、ツナのことを自分から突き放すことに…決めたのだ。




     *     *     *




〔ツナSide〕




芽埜「言わない」

ツナ「え!?」




芽埜は立ち止まって、そう言った。
ここは芽埜の家と俺の家の分かれ道だから、気になることを聞こうと思ったのに。


言わないって…どうして…。




芽埜「綱吉が自分で決めた答えが、綱吉の答えだよ。芽埜の答えを聞いて、それに合わせるような事はしちゃ駄目」

ツナ「な、なんで」

芽埜「?」

ツナ「お前こういう時は全然相談乗ってくれないんだな!!俺は真剣に悩んでんのに!!!!!」




<最低だ>。
ごちゃごちゃになって、訳分かんなくなってる頭の中にそのワンフレーズだけ浮かんだ。
芽埜に嫌われるんじゃないか、なんて…そんな事ばっかりぐるぐると頭の中を巡る。





いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ…!!!



そんなの、いやだ…!!




―――ぎゅう、




ツナ「!!」

芽埜「綱吉を信じてるんだよ。……って言ったらきっと、都合よく聞こえるから別の言葉で言うね?」




俺を抱きしめる体温は芽埜のものでじわりと目元に涙が滲む。
嫌わないでほしくて強く強く抱きしめれば芽埜が耳元でくすりと笑った。




芽埜「紀本芽埜は綱吉の幼馴染で貴方が大好きです」




ああ、知ってる。
俺だって、お前の事が大好きなんだから。




芽埜「紀本芽埜は綱吉の言葉を疑ったりしません」




それも、分かってる。
芽埜とずっと一緒にいたんだから、言わなくたって分かるんだ。




芽埜「紀本芽埜は綱吉のことをずっと見てきました」




言われなくたって知ってるよ。
お互いの成長をずっと傍で見てきたのは芽埜なんだから。




芽埜「紀本芽埜はずっと綱吉を護り続けてきました」




思えばずっと芽埜に護られっぱなしだった。
小さい頃俺を助けてくれたのは何時だって芽埜だった。




芽埜「紀本芽埜は………」




芽埜…?




芽埜「綱吉の、傍を…っ…離れたく、なんか…ありま、せん…!!」

ツナ「!!」

芽埜「でも!…何時までも、お互いに甘えてたらっ…駄目、なんだと…思う、から…!今回だけは、別々で考えようと…思いましたっ」

ツナ「芽埜……」

芽埜「だから、…ごめん。教え、られない」




色々と考えていたらしい。
俺は心の奥底で芽埜なら絶対答えてくれると確信してた。
だって芽埜はもう俺の一部で、俺の家族みたいな存在で、俺の片割れみたいなそんな存在だったから。
何時だってお互いの異変には気付いたし、何時だってお互いを支えあってきた。




ツナ「……芽埜、俺……芽埜が大好きだよ」

芽埜「、うん」




家族や、友達、恋人、どんな人物に思う気持ちとも違う。
幼馴染に対する好きって感情ともちょっと違う。

でも。
大事なのに変わりはないんだ。
いつだって泣き虫で弱い俺を助けてくれた、同じくらい臆病で泣き虫な幼馴染。




ツナ「俺、考えてみる。同じ決断を迫られてる芽埜に結論を聞くんじゃなくて、自分で」

芽埜「綱吉…、」

ツナ「だから、待っててほしいんだ」




俺が、芽埜のいる場所に追いつくまで…―――。




     *     *     *




リボーン「あんななまっちょろい言い方でツナと芽埜が後を継ぐと思っているのか?」

九代目「一瞬あの子達の目が真剣に考えてくれているのが分かった。それで十分じゃよ」




そう言いながら九代目が小さな箱にかけられた布を取る。
その下にはボンゴレの紋と装飾が施された箱があった。




リボーン「これがそうか?」

九代目「ああ。T世より代々継承式で受け継がれてきたボンゴレの至宝―――




九代目




―――罪じゃ」




ボンゴレ継承式まであと―――2日。



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