芽埜「ぐ…ぅっ…!!」

亞琉「弱いもの虐めを、させないでください。頼みますから、そこを退いてくださいよ」

芽埜「い…やだっ!!」




刀を持つ手は振るえ、銃を入れたポケットは重く、体中が痛みで悲鳴を上げる。
そんな状況になっても芽埜は、亞琉を遠さまいと彼の前に立ちはだかった。
今となっては<何のために戦っているか>など分からなくなっている。
それでも芽埜は彼に歯向かっていた。




亞琉「しつこい人だ。嫌われますよ?貴方」

芽埜「へへー。貴方にいくら嫌われても……いいよ。芽埜には綱吉もいるし、家族だっている。


ずっと泣いてる貴方より…<マシ>だね!!!」

亞琉「!!!」




戦っていくうちに分かった。
亞琉がずっと泣いているという事実を知ったのだ。


その言葉を聞いた亞琉からぞわりと身の毛も弥立つような<殺気>を感じる。
肌を撫でるその恐ろしい感覚は飲み下そうとしても、飲み下せるものではない。
息も出来ないこの空間に居続ける苦痛からか芽埜は自分の喉に刀を突きつけていた。




亞琉「死んだほうが<マシ>…ですか?

ならば貴方よりも私のほうがまだ<マシ>、かもしれませんね?」

芽埜「―――!」




言葉を言葉で返された。
亞琉の顔に笑みは浮かんでいない。
踏み込んではならぬ場所に踏み込んでしまい、本気で怒らせてしまったようだ。




亞琉「さぁ、どうぞ?


そのままグサリ、と…一思いに。」

芽埜「(まだ…死にたく、なかった……なぁ、)」

「ならば生きてごらんよ、girl!」



―――バシン!!



地面に<ナニカ>が叩きつけられると同時に、亞琉目掛けてライオンが襲い掛かってくる。
それを後方に飛び退き避ければ、ライオンは前足で芽埜の刀を叩き落した。




     *     *     *




鈴音「う…っ、うう…っぅ…」

「ついに…骸を倒したのね」

ツナ「!」




鈴音が涙を零す中、声が響く。
それは先ほど起き上がったビアンキのものだった。




ツナ「よかった!ビアンキの意識が戻った!」

リボーン「無理すんなよ」

ビアンキ「肩貸してくれない…」

ツナ「……?」




ツナはビアンキの台詞に違和感を持ち、近づいていく獄寺に制止をかける。
だが獄寺は静止の意味をとり違い、ビアンキに近づくと彼女が手に持っていた槍で傷をつけられてしまった。
リボーンがビアンキに目を覚ませようとするも、今度はリボーンを誘うとする始末。


そんな状況ではあたりを目をやっている暇はなく、鈴音が泣き止んでいることに気付く人物はいなかった。




リボーン「こいつは厄介だな」

ツナ「まさか…マインドコントロール……………!?」

リボーン「ちげーな。

何かに憑かれちまったみてーだ」

ビアンキ「何言ってるの。私よ」




ツナの中で違和感が強くなる。
それと同時にふっと頭に思い浮かんだのは……



ツナ「ろくどう…むくろ…?」

骸「クフフ。


また会えましたね」




髪とゴーグルで隠されていた右目が露になる。
そこには赤い瞳が浮き上がっており、<六>の文字もあった。




ツナ「で、でた――!!」

獄寺「祟りだ――!!」

リボーン「そんなバカなことあるわけねーぞ」

ツナ「でも…やっぱり死んでる!!」




倒れている骸は、確実に脳天を貫いて死んだはずなのだ。
だが幾ら死体を見ても目の前の現実は変わらない。




骸「クフフ。まだ僕にはやるべきことがありましてね。


―――地獄の底から舞い戻ってきましたよ」


骸の口癖でしゃべるビアンキからは確かに骸と同質の気配を感じる。
その時獄寺が「自分に任せろ」と、前に出て……




獄寺「臨・兵・闘・者!!」




魔よけをやり始め、それが効いたのかは定かではないがビアンキは倒れて動かなくなった。
ツナは恐る恐るビアンキに近付いていくが、その後ろでは獄寺が槍を持って立っていた。
ツナが後ろを振り向くと……




ツナ「骸!!…わあ!!!」




獄寺がツナに向かって槍を刺そうとしていた。
転がって何とか避けたが、刺さっていたら一溜まりもなかっただろう。




ツナ「ひいい!!獄寺くんが!!」

骸「ほう、まぐれではないようですね。
初めてですよ。憑依した僕を一目で見抜いた人間は……。


つくづく君は面白い」

リボーン「<憑依弾>は<禁弾>のはずたぞ。どこで手に入れやがった」

骸「クフフフ。


気付きましたか。これが<特殊弾>による<憑依>だと…」

ツナ「え?<特殊弾>って<死ぬ気弾>や<嘆き弾>のこと…?」

リボーン「そうだ。

<憑依弾>はその名の通り、他人の肉体にとりついて自在に操る弾だぞ」




<憑依弾>エストラーネオファミリーが開発したと言われる<特殊弾>。
それを使いこなすには強い精神力だけでなく弾との相性の良さが必要とされていた。
だが使用法があまりにもムゴかったため、マフィア界で禁弾とされ、弾も葬られたはずのものだった。




骸「マインドコントロールの比ではありませんよ。
操るのではなく乗っ取るのです。
そして頭のてっぺんからつま先まで支配する。


つまりこの体は


―――…僕のものだ」

鈴音「(エストラーネロ……。


ああ、そうか、そういうことか)」




それを聞いて鈴音の意識は闇へと閉ざされた。
ふらりと倒れた鈴音の体を瑠香が支えると同時に……




―――ガゴォン!!!




獄寺(骸)・ツナ・リボーン「!!?」




瑠香と鈴音は、氷のドームに飲み込まれた。




     *     *     *




「Hello、Night girl!!」

芽埜「え……、え?」

「何をそんなに驚いているんだい?もしかしてlionがafraid(怖い)?


それともEnglishがUnderstanding(理解)出来ないのかなー?」




芽埜の前に現れたのはライオンとシマリスを連れた赤ん坊だった。
首には黒いおしゃぶりを下げている。



芽埜「あー…I understand English. (私は英語を理解しています。)Ok?」

「I see♪

ところで……Sleet boy?
Night girlを苛めたんだ……どうなるか、Is it understood?(理解してるよね?)」

亞琉「……(霙…ボーイ…?)


No, it isn't understood.(いいえ、理解していません)」

「ふーん。あくまでそう言うattitude(態度)をとるんだ。Ok.ならこっちにだって考えがあるよ。


―――Cecily、Go!!」




―――バシン!!!




地面に叩きつけられた鞭。
どうやら先ほどの音も鞭を叩きつけた音だったようだ。


鞭の音ともに亞琉に攻撃を仕掛けるライオン(セシリーというらしい)。
獣を超越したセシリーの動きに亞琉は翻弄され、防戦一方。




亞琉「くっ…!!」




攻撃を受け止めていた槍でさえ、セシリーにより破壊されてしまった。
今現在亞琉の手元にあるのは針が数本のみ。
これ以上戦っても何の利益も得られないだろう。




「Night girlから手を引いておくれよ、Sleet boy。
今ここで君たちが争っても何にもならないはずだよ。だって、もうclockは回り始めてるんだろう?」

亞琉「!!」

「なら、ここでちんたらしてるLeisure(暇)はないはずだよ。でも今回ばかりは全部から手を引いてもらう…ということで、いいかな?」

亞琉「どういうことです?」

「君の大事な人間が強くなる機会を逃す手はないはず、って事さ♪」

亞琉「………………。」

「………。

手を引いて、亞琉」

亞琉「!!」




声がしたと同時に亞琉の姿が霧のように消えた。
辺りには気配もなく、亞琉が本当に手を引いたことが分かる。




芽埜「あ…貴方は…!!」




振り返れば芽埜を刺した白い外套の女がいた。




禁弾




「………。

これで満足かしら?
―――アルコバレーノ、エルパ・シーシャン」

エルパ「Yes, I'm satisfied with this♪(うん、これで満足だよ)」

「………。

そう、なら私はこれで失礼するわ」

芽埜「!、ま…待って!!!


貴方は、誰?!何で芽埜を襲ったの!?」

「……………。」




それに答える義務はない。
そう言わんばかりに女性は姿を消した。




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