――― 十数分前守備地点。




ツナ達の後方を守るを担当をしていた琉輝及びリリアは武器を構えているものの誰一人どころか物音ひとつしないので退屈を極めていた。




リリア「誰も来ませんね」

琉輝「あぁ」




リリアに頷き返した時だった。




―――ピッチャピッチャ




琉輝・リリア「!!」




水音がして身構える。
だが、現れたのは水着姿のルオだった。




ルオ「あれー、月のお姉さんだー。何してんの?ルオはねー、水浴びー!!楽しいよ☆」

リリア「…え、っと…」

琉輝「…何してんだ?お前」

ルオ「あれえ?自己紹介まだだっけ?ルオはー、満里ルオだよ!!!ミルフィオーレ真11弔花の月の守護者だよっ☆でもさー、正直乗り気しないっていうかさー紅蘭の意見には賛成できないってゆーか。そんな感じで!!


ねえ、お姉さんたちも一緒に遊ぼう?」




チョイスの時とは違うルオの雰囲気に2人は身構える。
だが拒否権ナシでズルズルと引きずられていく。




琉輝「ちっ、仕方ねーな!」

リリア「えっ!?」

琉輝「少しだけだぞ!?大体お前敵だろ!!」

ルオ「少しとか言わずにずっとルオと遊ぼうよーっ!あと、敵とか何か疲れたからもういいじゃん!」

リリア「ええっ!?」

ルオ「あっ、そうそう。ルオねー、7歳の時に紅蘭に会ったんだー」

琉輝「ちょ…え?」




もうフリーダムすぎてついていけない。
2人はうなだれてルオの昔話に付き合うハメになった。




     *     *     *




〔ルオSide〕




ルオの家はねー、結構豪華でお金持ちだったの!
まあ、ルオの故郷ではだけどね!
で、ルオはルオの故郷で一番大好きなお花畑に行ったのね!!
そしたらさー、いっぱい綺麗なお花が咲いてて!!
しかも気持ちいい陽気だったわけでー、ルオはお昼寝しちゃいました!!




「あっ、大変…!!家に戻らなきゃ皆心配するよ!!」




起きたのは日が傾いた夕方。
いつもは起こしに来てくれる執事の人もいなくて驚いたわけ!
で、家に帰ってみると家中血だらけで真っ赤でさ!




「…え、ぁ…なんで…っ、…どうしてええええっ!!!!」




「これが現実さ。結局は、何も変わらない現実なわけ」




かつんと階段を下りる音が響いて、体中を真っ赤に染めた紅い悪魔が笑ってた。
ニヤリと笑って、悪魔は近づいてくる。

そして、入り口に置いておいたタオルで顔の血を拭くと真っ黒なコートと白いTシャツに着替え悪魔はルオを抱きしめて笑ったんだ。




「あの血はね…、彼等を殺した犯人を俺が殺したんだ。だから、あの血は犯人の血なんだよ?」

「…」

「可哀想に。俺が責任持って君を引き取るからね」

「…ふぇ…っ、いや、だ…。ねぇ、待ってよ…」




ルオはワンピースの裾を握り締めた。
摘んできた花は血だらけの床に落ちて真っ赤に染まっていく。




「何でも我慢するから、我がまま言わないから…いい子にするから……私を…っ、ルオを置いて逝かないでよぉおおおおっ!!」




えんえん、泣き叫んでも結局誰一人戻ってこなかった。


当たり前なんだけどさ!!
涙がとめどなく溢れた、その瞬間だった。
家中の花瓶が割れて水が家中の血を洗い流して外に消えていったの。




「…ふぇ…?」

「(あはは、俺と同じ化け物みーっけ♪うん、得したかなー)」




あれが、ルオの能力(力)が発覚した瞬間だったなー。




琉輝「………。」




ぴた、と動きを止めるお姉さん。


音葉鈴音の……ううん、音葉鈴音の姪。

何も救えないルオと同じで、この人も何も救えないんだ。
だって、何も知らなかったんだから。
だから少しだけ親近感って言うのかな、そういうのが沸いたって言うのもある。



でも、一番の理由はきっと…そうじゃない。




ルオ「どーしたの?遊びに行くんでしょ?行こうよー!!」

琉輝「…なんで、笑うんだよ…?悲しいときに笑う必要ないだろ!?」

ルオ「…?」

琉輝「亞琉が言ってた。お前の瞳は悲しいって。お前は笑ってても、笑ってない。側で見て分かった。お前はずっと、泣いてるよ…!」

ルオ「…………バレた?


知ってたよ。紅蘭についてく事は悪魔に魂売るのと同じだし、殺人犯についてくのと同じだって。

家族殺したのは紅蘭で、新しい家族になってくれたのも紅蘭。
でもね、紅蘭はルオがどんなことしようと怒らなかった…。寂しかった。お父さんもお母さんも執事もメイドも皆ルオの家族みたいに悪い事したらきちんと怒ってくれたし、いい事したら褒めてくれた。
…でもね、紅蘭は何もしない。家族になってくれただけ」




だから、ずっと…悲しかった。


溢れる涙はあの時と同じ。
ずっと、ずっと…悲しかった。
お父さんとお母さんが生きてたあの時間は…きっと、取り戻せないんだろうな…。
あの時間はどんな言葉で語っても語り尽くせないほどの理想で、幸せな現実だったんだから。




ルオ「ねえ、お願いがあるの」

琉輝・リリア「…?」

ルオ「白蘭と紅蘭に残された時間は余りに少ない」




ルオは紅蘭に視てもらった。
あの後紅蘭は泣いて泣いて泣いて、ルオをずっと抱きしめていてくれたんだ。

だから、<もう大丈夫だ>―――って思えた。
どれだけ残酷な未来が待っていようとルオはそれを受け入れて、白蘭と紅蘭を1人にしないようにするだけ。




ルオ「白蘭と紅蘭を……殺さないで欲しい」

琉輝・リリア「!!」

ルオ「悪い人だよ。……っ、悪い人なの!でも、…それと同じくらい、優しい人なの」




白蘭も紅蘭も残酷な人。




琉輝「……でも、俺らはあいつを倒さないと……そうしないと、過去に帰れない」

ルオ「分かってる。でも、…そのお願いを、聞いて欲しいの」

琉輝「…は、ぁ?」

ルオ「ボンゴレが白蘭と紅蘭を殺したらきっと、2人共1人になっちゃう」




だから―――。




ルオ「だから、殺さないで…ッ!!!」

琉輝「あ、あー…分っかんねぇ!!つまり、何が言いたいんだよ!?」

ルオ「つまり?……えっと、……っ!て、敵対する気はないからルオを連れて行ってッッ!!!」




そう言ったら音羽琉輝は笑ってルオの頭を撫でた。


あぁ、そっか。
救えないんじゃなくて、ルオは―――。




ルオ「…っ、」

琉輝「ど…どうした?」

ルオ「音葉鈴音に酷い事言った…!酷い事を言わせてしまった…!」




《僕が救えてるんじゃないわ。あの人は誰にも救えない。
僕は救えてなんかいない。僕は周りを壊す事しか出来ない、そんな女だもの。誰かを壊して生き延びる、それが僕の生き方だもの。

貴方は違うでしょう?貴方は壊しも救えもしない。ただ、そこにあるだけ》





救えないわけじゃなかった。
ただ、ルオはずっと大好きな2人が怖くて恐ろしくて後ろでビクビクしながら機嫌を伺って従ってただけだったんだよね。

鈴音(あなた)に出会えて、琉輝(あなた)にも出会えて、ルオは知ったよ。
きちんと意思を伝えなきゃいけないこと。
逃げてちゃどうにもならないこと。
怖くても恐ろしくても真っ直ぐに向かい合わなきゃ、伝わらないんだよね。



もう全部取り返しがつかない終わったことなんだって、思ってたけど………まだ、始まってすらいなかったんだよね。
ルオはまだ、何一つやるべきことをやってないんだから。




ルオ「ねえ、2人共」

リリア「何ですか…?」

ルオ「ルオに出来るかな」

琉輝「あー…<何を>かは知らねぇけどやりたいならやればいいじゃん。お前が正しいと思ってることは常時正しいとは限らねえと思うけど…、多分今回ばっかりは正しいと……思う」

ルオ「……そっか!じゃあ、信じる!」




ルオ、やるよ。

ねえ、お父さん、お母さん、使用人の皆も見ててね。
卑しく今まで生き延びたルオの―――……を。




少女Rの決意




大好きだからこそ、言わなきゃいけないことも、しなきゃいけないことも、全部全部、やらなきゃいけないんだって。
だからね、いつまでも怖がってないで一歩踏み出すよ。


それが、やるべきことで、やらなきゃいけないことなんだと……思うから。




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