白蘭「ダメだよ、鈴音チャン」 鈴音「…!」 その頃ミルフィオーレ本部では鋏を手にしている鈴音の姿があった。 白蘭はそれを背後から掴んで止めるともう片方の手で掴んでいた髪を開放させる。 はらりと宙に舞った長ったらしい髪を見て鈴音はため息をこぼす。 鈴音「切らせてくれないのね」 白蘭「うん。だって切ったらもったいないでしょ?こんなに綺麗な髪なのに」 鈴音「無造作に伸びきっちゃっただけじゃない」 白蘭「じゃあ明日美容室に連れて行ってあげる。それならいいよね?」 鈴音「さっぱりショートヘアにしてあげるわ」 白蘭「ダーメ♪」 そう言って背後から抱きしめてくる白蘭に再びため息をこぼして鈴音は鋏を手放し体の力を抜く。 逆らおうとは思わない。 ここはどこより安全で、どこよりも自分がいなければならない場所だと鈴音自身が自負していたから。 鈴音「ねえ白蘭」 白蘭「ん――?」 鈴音「僕、貴方にお願いがあるの」 白蘭「ん〜〜〜………<ここから出して>とかはナシね」 鈴音「まさか。 ここが一番安全で貴方の傍が一番安楽なのに、どうして逃げる必要があるの?」 白蘭「だってそれは鈴音チャンの意思じゃないだろ?ボクは鈴音チャンが自分の意志でここにとどまってくれるのが一番嬉しいんだけどな」 鈴音「そう。 それはそうとして僕のお願いっていうのはね………、修行させてほしいな、ってことなんだけど」 白蘭「えー。これ以上強くなってどうするの?ここから逃げる気?」 鈴音「疑り深いのね」 そういえば白蘭は鈴音を床に強く押し倒した。 ドッと打ち付けた背中が痛むのも気にせずに鈴音は白蘭を真っ直ぐに見つめる。 白蘭「だってさ、君……」 近づいてきた顔が鼻先スレスレで止まった。 彼が喋るたびに息が唇にあたってくすぐったいがそれは我慢するとして。 白蘭「一度ボクから逃げただろ?」 鋭く自分を射抜いてくる彼の視線を受け止めることだけに意識を集中させる。 受け入れなければ始まらないのだ。 そして受け入れて尚、彼を受け入れきってはならない。 鈴音「あら残念。次は逃げないわ」 白蘭「ホントかな?」 鈴音「本当よ。 ところで白蘭、貴方は10年後の僕を孕ませて何をするつもりだったの?大方はわかっているけれど、教えてくれる?」 白蘭「フフッ、本当に君は敏いね鈴音チャン。 ボクはね、君がボクとの子供……まあつまりはボクと君の<愛の結晶>とでも言えるモノを産めば君が逃げられなくなると思ったんだ。失敗しちゃったけどね。 でも本当に君は怖いよ。 ボンゴレのみんな、君が自分の置かれている状況すべてを札で理解したってこと知らないんだろ?」 鈴音「僕がこの時代で貴方に何をされたのか全てを知って尚ここに来たのだということなんて彼らには関係ないわ。 ただ理解していればいいのは僕が貴方について行ってボンゴレを裏切ったということだけでしょう?」 そう言って笑った鈴音の頬に白蘭が口付ける。 白蘭「きっとそれすらも嘘だよね。だって君は元からボンゴレなんかじゃない。 ―――骸クンしか見えてないんだもの。」 * * * 突如聞こえた爆音に駆けつければツナが<ナニカ>に襲われていたのが見えた。 炎の塊で出来た怪物のように見えるそれはツナの足元に落ちているボンゴレ匣から出てきたもののようだ。 ツナ「危険だ。下がってろ!!」 自分の不始末は自分でと言うことなのか、そう叫んだツナ。 怪物から離れていくツナを怪物が追う。 ツナはそれを利用し怪物に攻撃し、怪物の上まで移動すると空中回転を利用した足蹴りを繰り出す。 だが怪物は少しも怯まず、少しの隙を突かれツナは四肢を封じられてしまった。 ツナ「(なんてパワーだ。ほどけない)」 動けなくなったツナへ向かい突っ込んでゆく怪物。 ツナは四肢に巻き付く炎を振りほどけず怪物の攻撃を受け、壁へ衝突。 獄寺「十代目!!」 山本「ツナ!」 応じられる状態でないツナは傷ついていく一方。 そのツナを助けようと獄寺が匣を開こうとするが、バジルとリリアがそれを阻止する。 バジル「獄寺殿の嵐の匣兵器の特性は<分解>!!」 リリア「ヘタをすれば沢田様の匣兵器を傷つける恐れがありますわ!!」 獄寺「だったらどーしろっつーんだ!!これ以上苦しむ十代目を見てらんねー!!」 バジル「拙者が静めます。皆さんは下がって下さい。 いくぞアルフィン」 開匣された匣から出てきたのは全身に雨属性の炎をまとう雨イルカ(デルヒィーノ・ディ・ピォッジャ)だった。 バジル「(アルフィン、あれで行こう)」 左右のヒレが光り出し、ドルフィンエッジという雨属性の炎の刃が放たれる。 だが…… 芽埜「やめて!!!!」 芽埜以外「!!?」 バッ、と怪物を守るように立ちはだかった芽埜は雨属性の炎を夜空の炎で収容してしまう。 その様子を見ていた獄寺たちは芽埜の行いに目を見開くほかない。 芽埜「皆も、綱吉も…この子に攻撃するのはやめてほしいの…!!」 獄寺「何言ってやがる!!そいつは…!」 芽埜「大丈夫。芽埜が止めるから、」 ゆっくりと怪物に近づいてゆく芽埜は警戒されることなく怪物に触れることが出来た。 怪物は芽埜の姿を見てどこか安心したように手に擦り寄る。 芽埜「うん…もう平気だから。……うん…大丈夫だよ。安心して?」 怪物「………。」 芽埜「んー…そっか。 芽埜の言葉じゃあ届かない、かあ…。じゃあ、おいで、シャルア!!」 普通の匣を開匣した芽埜。 芽埜の腕の中へと収まったのはウサギの匣兵器、シャルアだった。 いつもなら反抗するであろうシャルアは大人しく腕の中に収まっている。 芽埜「シャルアなら…大丈夫?」 2匹の匣兵器はジッ、と目を見合わせる。 すると、次の瞬間怪物が匣へと戻っていった。 芽埜「綱吉、大丈夫?」 シャルア「??」 ツナ「…うん…。みんな、ゴメン…」 バジル「やはり今のは沢田殿の匣兵器………………」 ツナ「う…うん…、普通に炎を注入したつもりだったんだけど…いきなりあんなのが飛び出してきて…」 バジル「ですがおかしいです!匣は全て地球上の生物を模しているはず!」 「まさか…入江の奴が不良品を!!」と言い出す獄寺に反論が飛ぶ。 芽埜「あのね、アレは綱吉が悪いんだよ!!?」 ツナ「!?」 「芽埜の言うとおりだ。今のはツナが悪いぜ。あれはお前の匣兵器本来の姿じゃない。 特に大空と夜空の匣はデリケートなんだ。こんな開匣を繰り返していたら使い物にならなくなるぞ」 怪物 現れたのはディーノだった。 一方その頃白いボンゴレ匣へと1つの手が伸ばされていた。 戻る |