ジャンニーニ「ヨヨヨ!!
リボーンさん!おしゃぶりが!!」

諒「何か起きたか…?」




その頃アジトではリボーンのおしゃぶりが光を放っていた。
この未来ではありえないことだ。

19階から戻ってきた諒や央樹、ジャンニーニが驚く中リボーンは冷静に解析していた。




リボーン「アルコバレーノ同士が近付くと共鳴して輝くんだが、この時代そんな事はありえねぇ。
あるとすればラルの奴が力を使ったか…」




自分のおしゃぶりを見てそうつぶやく。
すると自分の懐からも何かが輝いているのに気付いた。
リボーンが懐から取り出したのは迷彩柄をした匣とティアラの装飾が施してある匣。

その中身は……




ジャンニーニ「ラルさんが無くすといけないと託されたコロネロさんとシャランさんのおしゃぶりまで!!」

リボーン「…………ラルの身に何かが起きたのは確かだが…


(―――こいつの輝きは一体…)」




     *     *     *




ラルが持つおしゃぶりが青い光を発す。




ラル「コロネロとシャランへの侮辱を撤回するか死を選べ。ジンジャー・ブレッド」




青いおしゃぶりが放つ光のせいでラルの顔のアザが酷くなってゆく。




ジンジャー「醜いなぁ♪
それはなりそこないになった時の中途半端な呪いの名残りだろ?
まぁでも君もまがりなりにもアルコバレーノってわけだ。君の濁ったおしゃぶりはもう使い物にならないと思ってたよ。


ただ残念な事にラストスパートが遅すぎたね。
この指を鳴らせばクモが飛び出し君の体は粉々にはじけとんでお終い♪」

芽埜「そんな…!』




絶望を与えるかの様に、指を鳴らす準備をするジンジャー。
ツナたちが驚き、制止の声を発すが敵がやめるはずもなく、パチンッと指の音が響いた。




だが、ラルから血が噴出す様子はない。




ラル「確かに俺はなりそこないだ」

山本・ジンジャー「!!」

了平「おお」

ツナ「ラル!」

芽埜「ラルさん!!」




彼女が無事だと分かり安心するツナたち。
ジンジャーは何度も何度も指を鳴らすが彼女の体に異変はない




ラル「不完全な呪いに蝕まれた俺の体は歪な体質変異を起こし、体内を巡る波動までもが霧と雲の属性に変わってしまったんだ」

ジンジャー「……」

ラル「だがこのおしゃぶりは変わらない。
本来コロネロではなく俺が受け取るはずだったこの青いおしゃぶりは、俺の命と引き換えに炎を放つ。


―――属性は雨。」




話が終わったと同時に彼女の体から死ぬ気の炎が出る。
雨の炎の特徴は………<沈静>。




     *     *     *




〔ラルSide〕




了平「なぜクモが体を突き破り出て来ないのかわかったぞ。


あのおしゃぶりの力だ!!


クモの卵を急成長させる晴の<活性>の力を雨の<鎮静>で相殺したのだ!!」

ジンジャー「なるほどね〜♪そういう事か♪」

ツナ「で…でも、匣兵器じゃなくラル自身が炎を纏うなんて…」

了平「俺も初めて見るぞ。肉体から炎など…」




ラル「アルコバレーノの肉体構造はお前達とは異なる」




ラル以外「!!」

ラル「その肉体に背負わされた宿命。苦しみと絶望は誰にも分かりはしない。
俺があのままアルコバレーノになっていたら、魂を病み、バイパーの最期と同じ道を選んでいただろう…。

コロネロとシャランがいたから…俺は生きたんだ。
あいつらのおかげで生きてこれた。


(コロネロ、シャラン…お前らがいなくなって俺は…後悔ばかりだ…)」




ゴーグル中に涙が溜まっていく。


2人が去っていこうとしたとき、俺は………




「元気でな。おてんばせずに早く呪いを治すんだぜ。コラ」




少しでも、




「じゃあ、ムリせず呪いを直すんですのよ?」

「では。御機嫌よう、ラル・ミルチ。」





<待って>と思ってしまった。
手を伸ばしかけて、それを押しとどめて。


それで今日という日まで生きてきた。
結局あの日以来コロネロとシャランに会うこともなく。

シャランに関しては会おうと思えば会えたはずだ。
シャランの治める国に行けば、きっと奴は俺のことを<友人>として笑顔で迎えてくれはずだ。



それでも。
俺は会いにいけなかった。



シャランに会ったらきっと、




ラル「(俺はもっと、今という日々を後悔していただろう)」




弱くなってしまうから。
だからこそ会いにいけなかった。

アイツはアルコバレーノとなる12人が集められた時に俺に話しかけてくれた。
出会ったばかりの最強の12人が警戒心を互いに持ち続ける中仲を取り持とうとしたルーチェとは違い、シャランは執拗に俺に話しかけてきたのだ。


少しずつ話すようになっていたとき俺はシャランに聞いた。

<どうして俺に近づいたのか>―――と。


するとシャランは包み隠すことなくけろっとした顔で言ったんだ。




「わたくし、王女ですもの。国民を守るのが第一ですの。

だからね、軍人の教官であるラルと仲良くなって<鍛え方などを少し習えたら…>と思いましたのよ。」

「なっ!

お前はバカ正直すぎる………」

「あら、酷い言い草ですわね。

ならラル、わたくしは此処で<ただ貴方と仲良くなりたかっただけですの>といえばよくて?」

「…………。」

「疑わしそうな顔ですわね、ふふっ。


ねえラル、わたくしきちんと心得ていますわ。
明かすときは明かしますの。
明かさぬときは、決して明かしませんわ。


貴方に問います、ラル・ミルチ。
―――わたくしのこと、疑いますか?」





シャラン。
俺が12人の中で初めて信用した女。
よく言えば<良賢>、悪く言えば<狡猾>。
シャランはそういう女だった。


けれどそんな彼女が守る国はとても豊かで誰もが幸せそうな顔をしていた。
悪いことは許さない。
けれど、よいところはもっと伸ばそう。

そんなシャランだからこそ弟のドルチェも、執事のランスも真っ直ぐに忠誠の瞳を向け彼女についてきたのだ。

そして俺も、素直に彼女を尊敬した。




奴の凄いところは、結局そこなのだ。

<王女らしき威厳と統率力>。
誰もがシャランを敬い、讃えた。
だが奴は図に乗らない。

どれほどの賞賛を受けて喜んでもシャランは努力を怠らなかった。

そんな奴だからこそ俺もシャランを<親友>として、認めたんだ。




「まあ、とりあえず生きてればどうにかなりますもの。

それにわたくし、恋い慕うお方が出来ましたの!うふふ」

「あら、つまりませんわね。ラルもコロネロさんと共に行けばよかったですのに」

「うふふ。
じゃあラル、さようならですの。

折角お友達になれたのですからたまにはうちの国にいらしてね、ラル。
<ドルチェ>と<ランス>と共に待っていますから」

「じゃあ、ムリせず呪いを直すんですのよ?」

「では。
御機嫌よう、ラル・ミルチ。」






ジンジャー「ほーう♪
君にとってコロネロとシャランは救世主みたいだね。」




「あっ、1つだけ」




ジンジャー「でも結局君もここで死ぬんだし、またコロネロたちのしたことは報われないのさ♪」




「ラル、わたくしが死ぬときは………」




ラル「ジンジャー…………」




きっと寿命ですの!!
わたくしの手には弟や使用人、そして国民の命、生活、全てがかかってますのよ。

中途半端に亡くなってしまっては彼らを路頭に迷わせてしまいますの。
だから、寿命以外では死にませんわっ!!


だからね、ラル。
わたくし寿命で死ぬ前に、きっとラルの元まで行きますわ。」





ラル「死ぬのはお前だ!!」




「安心なさい、ラル♪」




ああ、大丈夫だシャラン。


俺はお前のこともコロネロのこともずっと………




     *     *     *




脳裏に蘇るのは大事な親友と、愛した教え子の―――<笑顔>。



     *     *     *




まだ余裕を見せるジンジャーに、立ち向かうラルは肉弾戦に持ち込もうと彼の元まで飛ぶ。
それをホウキで防御していたジンジャーは攻撃をかわすと、攻撃をしようとするがラルは雲ムカデを使いジンジャーの背後を取り、解かれないように力強くしがみついた。




ラル「最後のチャンスだ。撤回するか死かを選べ」

ジンジャー「ヤダヤダ、しつこい女だな〜。


だーれが言うかよ♪


僕が本気を出せばこんな拘束へでもないね。甘い甘いバァ〜…」




まだ余裕を見せたジンジャーだが、そんな彼も余裕でもいられなくなった。
理由は雨属性の炎が彼女の体を包んでいるから。




ジンジャー「!?

(意識が…遠のく…)」




そして、雲ムカデが彼の体を貫く。




ラル「俺の炎の鎮静力を甘く見すぎたな」

ジンジャー「くっ…そー。

でも…いいのかい?
これでコロネロたちを殺した実行犯は聞けなくなるんだよ………?」

ラル「おまえを生かしていたところでどうせ話さないだろう。自分で探す」

ジンジャー「憎たらしいメスだなぁ…でも…、


あ〜〜〜〜楽しかった♪」




妙に嬉しがっている彼の目、鼻、口から泡が噴き出している。
どうやら自爆する気らしい。




ラル「伏せろ!!」




―――ドゥン!!!!!




芽埜「ひゃっ!!!」

ツナ「あ、あれ?なんとも…な…


えっ、何これ!!?」

鈴音「ふう…」

芽埜「鈴音ちゃん!!だ、大丈夫!?」

鈴音「!、ええ」

了平「それにしても…これは<氷の壁>か?

リング戦の時も作り出していたが………体は大丈夫か?」

鈴音「あら、いつまでもあの時と同じだと思わないで。
僕だって成長してるわ」




鈴音がパチン、と指をならせば氷の壁が霧になって解けてゆく。
そしてすぐにラルの安否を調べるべく皆が走り出した。




ツナ「ラル!!」

ラル「う…、ああ…」

ツナ「ラル…」

獄寺「とっさにムカデのシールドを展開したんだな」

ラル「そうだ」

山本「やっぱすげーよラル・ミルチ」

了平「………極限によく倒したな。
奴も師匠たちの仇の一部に違いはない」

鈴音「違うわ…」

鈴音・ラル以外「?」

ラル「ああ、


…倒せなかった。」

鈴音・ラル以外「!?」

鈴音「あれを見たら理解できるかしら?」




鈴音が指を差した先には壊れた人形。
それはジンジャーが人形だったと言うことを示していた。




ラル「あれがジンジャーが魔導師の人形(マジシャンズドール)と呼ばれる所以だ。
未だ奴にとどめを刺した者はいない…。

不吉な殺し屋でな。ここ数年ファミリーが滅亡するような抗争では必ず目撃されている」

ツナ「…恐っ」

芽埜「やだ、何それー!」

了平「まるで妖精だな」

山本「妖怪の間違いじゃないっスか?」

鈴音「……?
これ人形でしょ?」

鈴音以外「………。」

鈴音「?、何?」

芽埜「(鈴音ちゃん天然さんだったのか…!)」




以外?な事実がちょっぴり発覚したところで獄寺が口を開く。



獄寺「おい、ラル・ミルチ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーか?」

ツナ「?」

獄寺「<アルコバレーノの謎>ってのをよ」




獄寺がそう発した瞬間皆が黙り込む。
しばらくの沈黙の後、ラルが発したのは……




ラル「…断る」




…その一言だった。




獄寺「てめっ、いつまでも1人で背負い込んでんじゃねーよ!!
なんで話せねーんだよ!!」

ラル「何と言おうと俺から話すつもりはない。

どうしても知りたければ山本に訊けばいい」

獄寺「なっ…野球バカが…?」

ツナ「山本…知ってるの!?」

山本「ん…?まあな」

芽埜「(武くん…知ってるんだ…)」




あいまいな返事をした山本。


そんな時、突然警報音が鳴り響く。




後悔




朱音「この警戒音なんでしょおーね♪」

「うち、忙しいから帰って」

朱音「酷いよ、スパナ!!瑞樹にも同じ事言われた!!」

スパナ「…はぁ…うるさい」

朱音「ムカッ!!


ウイルス入ったパソコン直してよお!!!
正一のところにいーけーなーいーっ!!!」




朱音がうろうろしている理由はそこだった。
彼女が座っていた場所のパソコンがウイルスに感染したのだ。
だから瑞樹に直してもらおうと思えば彼女は<嫌だ><面倒>の一点張り。

だからこそ正一以外のもう1人のメカニック、スパナの場所に来たのに彼も<お断り>。
彼女はもう泣きたい気分だった。




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