グロ「んん…? (何を見ている……。 そうか、我が匣雨フクロウ(グーフォ・ディ・ピオッジャ)に興味を持ったか。無理もない。 荘厳な勇姿と美しい青い炎) ………!?」 フクロウに異変が起こる。 フクロウの纏っていた青い炎が藍色に変わってゆくのだ。 グロ「バカな!!炎の色が藍色(インディゴ)に!!」 青の炎を出していたはずのフクロウは藍色の炎を灯し、グロ・キシニアへ攻撃を加える。 ムクロウ《クローム、如月。今のうちに上へ》 クロームたちは指示に従い上へとあがる。 ムクロウは時間稼ぎをするかの様にグロ・キシニアを翻弄していた。 そんな時赤い瞳に気づいたらしいグロ・キシニアがフクロウを馬上鞭で叩き落す。 グロ「きっ、貴様!!」 ムクロウ「ガッ!」 グロ「眸に宿る六の文字!六道骸なのか!?」 話すはずのない動物に話しかけるグロ・キシニア。 だが、そのフクロウは予想に反して声を発した。 ムクロウ「………フ……クフフフ。 君の状況把握の早さは一目置くに値しますよ。グロ・キシニア」 フクロウから聞こえてくる声は骸と同じ声だ。 それを感じたグロ・キシニアは驚きに口を大きく開いたまま。 開いた口が塞がらないのだろうか? グロ「(六道…骸…!!こんなくだらぬ話があってたまるか!! 六道骸が憑依する能力を有しているのは知っているが…。 まさか匣に……しかも何のきっかけもなく……、!!……) もしや前回のあの戦闘で…」 ムクロウ「クフフフ。 そうです。あなたの雨フクロウ(グーフォ・ディ・ピオッジャ)に少し細工させていただきましたよ」 グロ「匣に憑依するなど聞いたことがないぞ!」 ムクロウ「クフフフ。 できてしまっては仕方ありませんね。それとも<夢>…ということにしましょうか?」 グロ「くっ、おのれぇ…」 匣に憑依されてしまった上、骸様に馬鹿にされた。 そのことに彼は怒ったらしいが、一瞬で冷静を取り戻す。 グロ「それほどあの娘たちが大事か」 ムクロウ「!」 グロ「それほど大事な娘たちを貴様の目で食すなど最高のシチュエーションではないか。 あの娘たちのうまさは増すばかりだな」 ムクロウ「(一緒にして冷静さを取り戻すとは…さすがミルフィオーレ11弔花の1人)」 《―――いいですかクローム、如月》 クローム「骸様!」 亞琉「はい?」 ムクロウ《僕はわけあって大きな力を使えません。 おまえたちをグロ・キシニアから逃がすことはできそうにない。 おまえたちがこの男を倒すのです》 クローム「…………はい」 亞琉「……了解です」 ムクロウ《大丈夫です。おまえたちにはボンゴレリングがある》 クローム「ボンゴレリング…?」 亞琉「でも、凍って…」 ゆっくりと溶け出したボンゴレリングの氷。 ムクロウ《その霧と霙のリングがおまえたちに力を貸してくれる》 * * * ―――ウ゛――ッ!! 会議室に突然鳴り始めた警報音に芽埜が肩を跳ねさせる。 ラル「何だジャンニーニ」 ジャンニーニ「一瞬ですがデータにない強いリングの反応が…黒曜ランド周辺です」 獄寺「!!」 ツナ「黒曜ランド!?」 ジャンニーニ「ただしこのあたりは電波障害がひどく、誤表示の可能性も高いです」 リボーン「もう一度黒曜ランド周辺のデータを分析するんだ」 ジャンニーニ「了解しました!」 ラル「新たな敵かもな」 そういうラルに緊張感が増す。 けれどツナと芽埜にはそうは思えなかった。 芽埜・ツナ「違う。きっと仲間だ」 瑠香「え?」 ツナ「ボンゴレリングを持った………クロームかも………」 * * * ムクロウ「ギィッ」 クローム「骸様!」 骸が乗っ取ったフクロウが壁に向け勢いよく飛ばされて衝突。 慌ててかけつければ、グロ・キシニアも階段から上がってきた。 グロ「やはりおまえはしゃべるだけのぬいぐるみか。人様の匣を使ってしゃしゃり出ようなどとちゃちだなぁ。 そんな姑息な手で私に勝てると思っているのか?」 ムクロウ「く……、今のは……」 クローム「骸様っ」 ムクロウ「まさかまだこれほどの力を持っていたとは…やりますねグロ・キシニア」 クロームが倒れたムクロウを抱き上げた。 だがその体は濡れている。 ―――ズゥン…ドリュ… その上不気味な音まで響き始めた。 グロ「教えてやろう。トップオブトップであるAランク以上の11弔花。 その中でもホワイトスペル3名には白蘭殿よりメイン匣とサブ匣を授けられているのだ。 貴様のその体はサブの匣のそれだ。とるに足らない相手に使う通常兵器といえる。 だが私の真の力はこのメイン匣 ―――雨巨大イカ(クラーケン・ディ・ピオッジャ)にある!!」 亞琉・クローム「………!!」 床下から突然現れた10本の巨大なイカの足。 2人が驚いていれば骸の声が頭に響く。 ムクロウ《うろたえてはいけませんクローム、如月。ボンゴレリングそのものの力を引きだし戦うのです》 クローム「リングの………?」 亞琉「力、ですか……?」 ムクロウ《お前たちの覚悟がリングから炎を引きだし、幻覚を強めてくれるはずだ》 クローム「………はい…」 骸に言われたとおり、リングに集中する。 するとリングから藍色と藤色の炎が灯された。 グロ「ほう…如月はまだしも霧の守護者の部分でしかない女がボンゴレリングに炎を灯せるとはな」 クローム「負けない」 三叉槍を回転させると、床につける。 部屋中に大量の火柱が現れ、威力は先ほどの何倍にも増している上、火柱の先が全てグロ・キシニアとイカに向かっていた。 クローム「すごい…」 亞琉「壮観です…」 驚いている暇もなく、火柱の中から現れる1つの人影。 それは間違なくあの男……… グロ「たしかに死ぬ気の炎の混合された火柱はリアリティが増したな。 だが所詮はまやかし。笑わせる」 …グロ・キシニアだ。 ムクロウ《おまえたちの一番信じるものは何ですか?》 再び頭に声が響いてくる。 ムクロウ《幻術のリアリティとは術士の持つリアリティ。一点の疑いも持たぬ真に信服している事象現象こそが最も強い幻覚となる》 クローム「一番信じるもの……?」 ムクロウ《僕のわずかな力をおまえの幻覚の触媒にするのです。成否は2人のイメージの同調にかかっている。それに、如月》 亞琉「?」 ムクロウ《霧の炎に霙の炎を掛け合わせればより強いリアリティになるのですよ》 そう言われてリングに灯る藤色の炎を見つめる。 藤色の炎は空気に溶けるように淡い色になったり元の色に戻ったりを繰り返していた。 まるで、どちらにもいけぬかのように。 グロ「別れ話はすんだか?」 亞琉・クローム「!」 グロ「心配するなクローム髑髏、如月亞琉。おまえたちはそのフクロウの前でかわいがってやる。 ………そう、骸の前でな!!」 亞琉・クローム「!!」 グロ・キシニアが手を振るとイカの足が2人に向かってくる。 ムクロウ《今です》 その言葉に3人で同調をはじめる。 すると…… ―――ギュィイイ、ドブチ!ブシャッ! イカの足が近距離まで近づいた瞬間瞬間、ヘッジホッグやひっかきで足が引き裂かれた。 ケモノの叫びのような声とクロームの三又槍を奪う手にヨーヨーを納める手。 ゆらゆらと視界で揺れる長い髪にしゃんと音を立てたぶき、めんどくさそうに欠伸をしながらも矢を番えた手。 それを見た瞬間、クロームの目には涙がたまってゆく。 ムクロウ《やはりおまえたちの最も信じるものもこれなんですね》 現れたのは10年前の姿をした黒曜メンバー。 ムクロウとクローム 骸「強力ないい術です。これなら僕も遊べそうだ…。 ―――少々、懐かしいですがね。」 戻る |