ミルフィオーレ本部では全17部隊隊長ミーティングが行われていた。
話し合われた内容は<10年前のボンゴレファミリーがこちらに来ている>ということだ。

そしてそこでは音羽鈴音がミルフィオーレボス、白蘭と婚約をしたと発表された。

<それはボンゴレの策略ではないのか><ボンゴレ雪の守護者は囮やスパイをやっていると聞いたことがある><貴方は騙されてはいないか!?>

色々な言葉が飛び交ったが白蘭はそれを見事に鎮圧して、鈴音を婚約者の座に据えた。
初めから分かっていたのだ、反論が出ることなど。


それでも彼は鈴音の事を一切諦めなかった……。




「あ。来てたんだ、鈴音チャン♪」




全17部隊長ミーティングが終わり、白蘭が最上階の自室に戻ってくる。
そこには見計らったように鈴音の姿があり、彼をぽやっとした笑顔で出迎えた。




鈴音「白蘭、お帰りなさい」

白蘭「ただいまーのハグ〜。


ねえ聞いてよ鈴音チャン。やっぱユニ怒ってたよー」

鈴音「……え………?
ぼくのこと、……みとめて…くれない、の……?」

白蘭「んー?そんなことないよ?鈴音チャンは今日からボクの婚約者だもの。

きちんと話してきたよ。過去の綱吉クンたちの事もだけど、君のこともね♪


今日を以て君はボクの婚約者。これで堂々と色んな所行けるね?」

鈴音「!、……うん」




白蘭を見て鈴音がぽやぁあっととろけるような笑みを見せる。
それはもう、鈴音なのか鈴音でないのか、誰にもわからないほどの。




「失礼します」




白蘭「お、レオクンどこ行ってたの?部隊長ミーティングにいてくれてよかったのに」

レオナルド「な!
いえ…、自分は下っ端ですので」




レオナルドはいきなりそのようなことを言われ焦る。
そして定められたように言葉を返した。




レオナルド「第11ヴィオラ隊よりたった今緊急連絡が入りました。

B級以上の部下4名を何者かに暗殺されたとのことです。ありえない状況での殺害とのことで現在調査を急いでます」

白蘭「そろそろモグラが動き出す頃合か」

レオナルド「モグラ?」

白蘭「聞いたことない?ボンゴレの特殊暗殺部隊<ヴァリアー>」

鈴音「ヴァ、リアー…?」




鈴音はつきん、と頭のどこかが痛んだ気がした。
けれど白蘭に頬を包まれこつんと額を合わせられるとなんだかそれもどうでもよくなった。
ぼんやりする意識の中ただ彼を愛する気持ちだけが残る。




<自分には白蘭しかいないのだ>―――と、植え付けられるように。




白蘭「まあ、でもよかったかな?」

レオナルド「は?」

白蘭「迷ってたんだよね。
日本のボンゴレリング回収の増援に第8部隊グリチネ隊と、第11部隊ヴィオラ隊のどっちを送ろうかさ。

レオクンならどっちにする?」




重要な問題をレオナルドに押し付けた白蘭。
レオナルドは驚いたような顔をして声を出す。




レオナルド「ヴァリアーが相手では、さしもの11部隊もすぐには動けないかと………」

白蘭「ってことで、第8グリチネ隊に日本に向かうように伝えてくれる?」

レオナルド「は!
では日本の入江正一氏にもその旨を伝えます」

白蘭「いや、あーチャンならまだしも正チャンにはまだ言わない方がいいな。
第8部隊の隊長みたいなタイプ正チャンキライだから。


―――下種なのに強いグロ・キシニアみたいな男はさ。


じゃ、ボク外でラーメンと餃子食べてくるね♪」

レオナルド「は、はい!」




そう言って白蘭が立ち上がる。
同時に鈴音が立ち上がり、彼を見送るように後ろについていく。

その反動で真っ白のふわりとしたワンピースが揺れる。




白蘭「鈴音チャン、いい子にしててねー。

はい、行ってきますのキス」

鈴音「ん……。

いってらっしゃい、びゃくらん」

白蘭「じゃ!」




額に白蘭のキスを受け、彼女も白蘭の頬にキスをする。
そして出て行く白蘭をレオナルドと共に追いエレベーターまで見送った。


その後鈴音もレオナルドと別れて自室に戻る。
あとはただ白蘭が帰ってくるのをぼうっと待つだけだ。
何もない自分の部屋で座り込んで待つだけ。


鈴音に与えられた自由は、鳥かごの中で過ごすような日々だった。


だが今日は違った。
部屋のドアがノックされる。




鈴音「(知らない人は、入れちゃいけないって…白蘭が、言ってた)



だぁれ?」

「!
レオナルド・リッピです」

鈴音「れお…?いいよ」

レオナルド「!、失礼します」




ドアが開きレオナルドが中に入ってくる。
彼の腕の中に抱えられていたのは大きな花束の数々だった。




レオナルド「<白蘭様とのご婚約おめでとうございます>と、各部隊より届けられた花束です。
本部タワーにいない部隊からはファックスでメッセージが」

鈴音「…そう…なの」

レオナルド「?、あまり嬉しそうでない様子ですが…」




嬉しくないわけがない。
けれど、レオナルドがそれを持ってきてメッセージである<おめでとうございます>という言葉を告げるのが嫌だった。

よくわからない想いが胸中に蔓延って、鈴音の中から出て行ってくれない。




鈴音「………レオ」

レオナルド「はい」

鈴音「あなたはなんでここにきたの?」

レオナルド「え………?」

鈴音「れおは、言ったわ。僕と……レオは、

しょうらいを、約束、してた……って。

レオはを、僕をとりかえしに?
それとも。
ただ、しゅうしょく先がここだっ…た……だけ?」




「………クフフ、クフフフ…」




鈴音がそう聞くとレオナルドの雰囲気が変わる。
片目の色が変わり、鈴音の耳元に顔を寄せてきた。


聞こえた笑い声は、普段のレオナルドからは想像できないもの。
艶やかで妖しくて、まるで鈴音の心を揺すり起こすような……そんな声だ。




「それはまだ、お話できませんよ鈴音」

鈴音「ぁ…

(ほら、また。貴方は僕の鼓動を早めさせる。

どくんどくん、と脈を打つ心臓。
貴方の所為でこうなってるなんて、貴方は知らないでしょう―――?)」




頬を包まれてレオナルドのオッドアイに見つめられて。
鈴音はただただ翻弄されるばかり。



けれど。
白蘭(彼)の声を思い出すと、レオナルドを遠ざけたくなってしまう。

決して許されない。




鈴音「れお……だめ、」

「!」

鈴音「ぼくは……、びゃくらんの……。


<――>くんの……モノには、もどれ………ない、」



そういった鈴音の頬を伝う涙。
それを見てレオナルドは盛大に顔を歪めた。




トゥリニセッテ




鈴音の体は、白蘭に征服されてしまっている。
髪も、目も、鼻も、唇も、頬も、首も、腕も、胸も、腹も、足も、

勿論あの場所だって、もう何一つ……




鈴音「ねえ……ゆるして、ゆるして……れお、



ぼくは、もう」




涙を流す彼女の奥底。
そこには<ダレカ>がいた。


鈴音は思う。
きっとそれが、自分の思い出せない<ナニカ>なのだと。






「許して、骸くん。


僕はもう、骸くんのもとには…………

戻レナイノ。」





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