暫く休んだ後トレーニングルームへと向かった芽埜。
そこでは、まだ修行が続けられていた。




芽埜「(あちゃー…使えない、か…)」




どうやらこの部屋を使おうと思ってきたらしい。

だがしかし。




ツナ「なんで……!?なんで俺だけ炎がでないの?」

芽埜「?」




ツナがいまだ炎を灯せていなかった。




ラル「沢田……本当に覚悟はあるのだろうな…」

ツナ「…!!、あ……あります!!」

<本当に思ってるよ!絶対にみんなを過去に帰すって!そのためにはミルフィオーレより強くなって!眼鏡の男を…!!

だからなんだってやる!!どんな修業だって耐えるんだ!!!絶対に!!>




芽埜には<聴こえて>いた。
<心直感>、それがリング戦での芽埜の力の正体だ。

黒曜の時片鱗を見せて以来見ることのなかった<力>である。




ツナ「………やっぱりダメだ………」

山本「ツナ…」

芽埜「十代目…」

ツナ「やっぱり俺…口先だけのダメツナなんだ………本当の覚悟なんてわかってないんだ」

ラル「甘ったれたことを」

リボーン「言う(芽埜「ふざけるな!!!!」!(芽埜…?)」

ツナ「ぎゃ!!」

獄寺・山本「!!」




叫んだ芽埜がヒールの音を立てながらツカツカとツナに向かって歩いていく。
その剣幕は自分たちの知る彼女ではないようで獄寺も山本も、あのリボーンでさえも声をかけられない。


芽埜はツナに近寄るとぐっと胸倉をつかみあげる。




芽埜「口先だけのダメツナ?」

ツナ「め……芽埜…?」

芽埜「うちは…ッ、うちはそんな綱吉だったら力なんて使わない!!!
苦しんでまで救おうとは思わない…!!


苦しいよ、辛いよ、嫌だよ。


こんな時代に生きてるくらいなら死んだほうがマシなのにっ!!!」

ツナ・獄寺・山本「!!!」

芽埜「わからないよね、わかるはずないよね。
だってうちはいつも笑うだけでみんなの前で泣いたりしないから。でもね、それがうちの役目なの!!!
みんなを笑顔にするためなら、ずっとずっと我慢できるって思ってた!!!


でも綱吉がそんなだったらもう笑ってる必要なんてないよね!!?

笑うのだって、辛いんだよ……。みんなが泣いても苦しんでても、笑ってみんなのこと支えるのって辛いんだよ。


ねえ、綱吉。
綱吉がいなくなってから何度死のうとしたと思う?何度、死のうとしてやめて、苦しんだと思う?


死のうとしてやめたのは綱吉がいるからなのに!!!!!」

ツナ「俺…が…?」

芽埜「綱吉がいたから………、!!!」

ツナ「芽埜?」




―――ドクン、ドクン…ッ




芽埜「…ぅ、…っ…」




急に苦しみだした芽埜がうずくまる。
リボーンはそれを見て芽埜に駆け寄ると声をかけた。




リボーンは「(これがこの時代の獄寺が俺に伝えたかった事か…)

俺の出番だ。芽埜、お前はさがってろ」

芽埜「……!」




芽埜はギュウ、と胸元を握り締め座りこむ。




芽埜「(ど、して…?
ここは、あの放射線は…効かない、はず…!)」




1人、そんなことを思いながら。




リボーン「カッコつけんなツナ。お前はヒーローになんてなれねー男なんだぞ」

ツナ「え?」

リボーン「皆を過去に帰すとか敵を倒すために修業に耐えるとか、そんなかっこつけた理屈はお前らしくねーんだ。あの時の気持ちはもっとシンプルだったはずだぞ」

ツナ「あの時…?」

リボーン「初めてリングに炎を灯した時、何をしたかったんだ?」

ツナ「え…、それは…ただ…京子ちゃんと諒さんを守りたかった」

リボーン「いい答えだぞ。今は守りたいやついねーのか?」

ツナ「え……、そりゃあ決まってるよ。


―――皆を…守りたいんだ。」




大空の炎がリングに灯される。




芽埜「(…そっか…それが綱吉の…覚悟…。


やっぱり、ダメみたい。うち、もう綱吉のこと……なんにもわかってないや、)」




この時代は苦しいことばかりで自分のことで精一杯だった。
ツナに目を向ける暇もなかったくらいだ。

それくらい彼から離れていた芽埜がしてあげられることといえばツナの意見を尊重することくらいで……。




芽埜「(もう……芽埜なんて、いらないんだね………)」




10年前から考えてきたものだ。
<守護者>としてでなく<幼馴染>として傍にいる方法を。

だがこんなに長い時が経った今でも考えつくことが何1つない。

結局芽埜は<守護者>としてツナの傍にいることしか、できなかったのだ。




ラル「…………。

(これほどとはな…沢田の覚悟もリボーンの沢田への理解もたいしたものだが…驚くべきは沢田が何の躊躇もなく奥底の感情を素直に出せるだけの………二人の信頼関係。
いくつもの試練を2人で 乗り越えてきたのだな……)


ではいよいよこの匣を開匣してもらう」

獄寺「まかせとけ。俺で終わらせてやるぜ」

ラル「やってみろ」

獄寺「よーし、見てろよ。出て来い!!」




嵐の炎を匣に注入する獄寺だが匣は何の反応も示さない。




獄寺「不良品だな。経験でわかる」

ツナ「え!?」




芽埜「(いやいや、経験も何も貴方匣握って1日2日の人間でしょーが!!)」




山本「俺にもやらせてくれよ。……こうするんだな」




山本も炎を注入するが、匣には反応なし。




獄寺「おい!やっぱこれ壊れてんじゃねーか?」

ラル「壊れてなどいない。匣が開匣できない場合、考えられる要因は2つある。

<炎が弱い>か<属性が違う>か」

ツナ「属性?」

ラル「リングが発する炎は12種類。ボンゴレリングと同じく


―――大空・嵐・晴・雲・霧・雷・雨・夜空・星・雪・月・霙に分類される。


更に匣も同じく12種類の属性に分類され、リングと匣の属性が合わなければ開匣できない仕組みだ」

山本「なんか鍵みてーだな」

獄寺「おい、ちょっとまてよ。10年後の山本はそんな事言ってなかったぜ。奴は<波動>がどうこうって…」

ラル「人の体を流れる<波動>とはリングが炎を出すために必要なエネルギーだ。
波動もリングや匣と同じように12種類に分類され、人に流れる波動の大きさとバランスは生まれながらに潜在的に決まっている。
大抵の人間には複数の波動が流れているが、1つのリングが炎にできるのは1種類だけだ。


そして、夜空の5属性を持つ人間は極めて少ない。
歴代ボンゴレの守護者の中にリングが適合したのは初代シエロ守護者5人と8代目の雪の守護者、と8代目月の守護者、そして10代目シエロ守護者5人という極めて少ない数の人間だけだ」




ラルの説明を獄寺以外は理解しておらずちんぷんかんぷんの様子。




山本「えーと…つまりどーいうことだ?」

ツナ「途中からさっぱり…」

ラル「これだけは忘れるな。
<波動とリングと匣……この3つの属性が合致しなくては匣は開匣されない>。」

ツナ「ってことはその匣は嵐の属性でも雨の属性でもないってこと?」

ラル「俺の霧の属性のリングでも開かなかった。次は沢田の番だ」

ツナ「え!?」

獄寺「結局あてずっぽじゃねーか!」

ツナ「それにその匣が大空の属性でもなかったら?」

ラル「その心配はない。12種類の属性の中で大空と夜空は唯一全ての匣を開匣できる」




3人が目を見開き驚く。




ラル「それが大空と夜空の<長所>だ。大空と夜空の波動を有する者はごく僅かしかいない」

獄寺「やっぱり十代目は特別なんスよ!!」

山本「やるなツナ」

ツナ「ええ!?」

ラル「さあ、やってみろ」

ツナ「う…うん。こう?」




大空の炎が注入されると匣が光だし、崩れていく。
匣が壊れツナの手のひらの上には2つの小さな物が残った。




ツナ「おっ、おしゃぶりだ!!」

山本「!?」

獄寺「武器じゃ…ねーのか?」




マモンチェーンの巻かれているおしゃぶりが2つ。



芽埜「(何で…匣に―――?)」



ラルはツナの手のひらからおしゃぶりを奪い取る。
その体は震えており、目が若干潤んでいたのは芽埜の見間違いだろうか?




リボーン「…どーなってんだ?」

ツナ「リボーン、あれってアルコバレーノのおしゃぶりじゃ…」

リボーン「あの戦闘痕…戦いの末、強引に摘出されたな(小声」

ツナ「?」

リボーン「とにかくメシにするぞ。ハラへったな」

芽埜「!

京子ちゃんとハルちゃんのご飯ー♪行こっ、綱吉!」

ツナ「え、あ、う、うん!」




先ほどの剣幕が嘘のようににこにことツナの腕を引く芽埜。
その眼は若干の赤みを含んでいる。


リボーンだけがそれに気づき、そっと目を伏せた。




リボーン「(お前の気持ちに気付いていながら、結局俺はお前に何もしてやれなかったんだな……)」




芽埜「隼人と武もいくよ―――!!」

獄寺「…っ//(隼人!?)」

山本「ん?(武…?)」




それからツナ達は上の階へあがり、京子たちの作ったカレーを食べた。




芽埜「おいし〜〜♪」

ツナ「本当にすごくおいしいよ!!」

山本「だな!」

ハル「よかったです」
私と京子ちゃんが腕によりをかけましたからね」

獄寺「カレーなんて誰が作ってもかわんねーだろ」

ハル「おかわりよそいませんよ!!」




芽埜はいつもの光景だなーと苦笑しながらそれを眺めていた。




ハル「はい、芽埜ちゃん」

芽埜「あ、ありがとー」




ハルから飲み物を貰ってお礼を告げる。




芽埜「ふぁ…

(それにしても、連日の書類整理の所為でちょっと眠いかも…。
入れ替わったって事はその人の分までしなきゃやってけないからねぇ……)」




芽埜は水をひとくち飲むと、ぐっと伸びをした。




山本「鬼教官、結局来なかったな……」

リボーン「ああ」

ランボ「おやつぅ!!ランボさんもーおやつにする〜〜〜!!」

ツナ「そんなものないよ!ガマンしろよ」

ランボ「プリンは?アメは〜!?」

ツナ「ないって!!」

芽埜「ラ〜ンボくんっ!あとで持ってきてあげる」

ランボ「ほんとか!?」

芽埜「うん。ランボくんの<親分>がた〜〜っくさん置いて行ってくれたからイーピンちゃんにもあげるね」

イーピン「!、ありが…とう!」




芽埜がランボとイーピンにそんな話をしていると、扉が開く。




ツナ「あ、」

諒「あれ、ボンゴレたちもう飯?」

央樹「ふぁ〜あ……眠いー…。

芽埜さん、ぼく水貰ったら寝ますね」

芽埜「はーい」




ハル「あ、あの!!」

央樹「え?ぼくですか?」

ハル「カレーどうですか?」

央樹「え…っと……、はい。じゃあ食べて寝ます」

ハル「はひ、結局すぐ寝ちゃうんですか!?」

央樹「はい、まあ…少々事情が…。ふぁ…」

ハル「はひ!?」




席につくとダンッ、と頭をぶつけ眠ってしまった央樹。
彼からはすーすー…という規則正しい寝息が響いてくる。




諒「おい、央樹!!!テメッ、起きやがれ!!!まだ、プログラミング終わって…、あ…俺も、眠…っ、」




―――ドサッ




諒が床へと倒れこみ、寝息を立てる。
それをみて芽埜が叫んだ。




芽埜「うぉい!!!


…はぁ〜あ…うちだって眠いのに2人のばかぁ!!!」




     *     *     *




皆が寝静まったであろう夜。
京子、ハル、イーピンの部屋では京子が1人体育座りをしていた。




了平「何?沢田達が見当たらん?心配いらん!どいつもくたばりそーにない奴ばかりだ」

ツナ「ええ――!!?なんで10年前の京子ちゃんが!!」

太猿「なあに、怖がることはない。一瞬であの世だ」

ツナ「大丈夫…君は守ってみせる」

リボーン「この時代の了平は行方不明なんだ」





京子「(ごめんね、ツナくん、ハルちゃん。
私……。)」




―――ウィン…




「どこに行く」




京子「!!!」




冷たい声が、響いた。




     *     *     *




翌朝。




央樹「ふぁ…。
あ、おはようございます。大変なんですよ」

芽埜「?、おはよう、央樹くん。どうしたの?」

リボーン「ちゃおっス、芽埜、央樹」

ジャンニーニ「夜の見張りありがとうございます、央樹さん!」

央樹「いいえ。

あ、そうそう。大変なんですよ」

芽埜「いや、もう2回目…」

央樹「アジトの外にですね、ミルフィオーレのブラックスペルが沢山いるんです

芽埜・リボーン・ジャンニーニ「!」




央樹がマウスを弄るごとに画面が変わっていきブラックスペルの姿がどこそこに写る。
うわー…と芽埜が顔を引きつらせたのも無理はない。

それくらいいるのだ。




ツナ「あ。芽埜に央樹さん。ジャンニーニさんにリボーンも!」

ジャンニーニ「おはよーございます、十代目」

リボーン「ちゃおっス。朝一番のグッドニュースだぞ」

ツナ「え!?何?」

リボーン「外にミルフィオーレのブラックスペルがウジャウジャいる。こりゃ外に出たら戦闘は免れねーな」

ツナ「どこがいいニュースだよ!!」




―――ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ!!!




警戒音が鳴り響き画面に<S7S>の信号が大量に浮かぶ。




ツナ「何これ!?」

ジャンニーニ「救難信号をキャッチ!!味方からのSOSです!!」

芽埜「うん、今のは味方だ」

ツナ「味方って…!?」

ジャンニーニ「ボンゴレ内で取り決めた秘密信号なんです。信号の発信源を捕捉しました!」

央樹「ボス、モニターに映しますね」

ツナ「!!」




<S7S>という秘密信号。
モニターに映ったのは……




波動・リング・匣




ツナ「あれはヒバリさんの!!!」

リボーン「隣は…匣か?」

芽埜「あっ!瑠香ちゃんの匣兵器―――星すずめ(パッセロ・ディ・ステラ)!!!」



…映ったのは2匹の小さな鳥だった。




*前 次#
戻る



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -