その日琉輝は学校にもいかずふらふらと黒曜の街を歩いていた。
学がないとやってはいけないだろうが鈴音がいればいつでも教えてもらえるのだ。




琉輝「ふわぁあ……」




「ちゃおっス」




琉輝「!!」




その時足元から聞きなれた声がして琉輝が足を止める。
そこにはリボーンの姿があり、彼は軽く飛ぶと琉輝の肩に飛び乗ってきた。

琉輝からすれば相変わらずな<スーパーチャイルド>である。




琉輝「何か用か?」

リボーン「お前、明日ツナとここ行ってこい」




そう言ってリボーンに渡されたのは……




     *     *     *




翌日。
ツナの家には誰もおらず、し〜んと静まり返っていた。




ツナ「は〜あ…静かな朝もいーもんだなー」

リボーン「俺が気を使って追い払ってやったんだ」

ツナ「へ?」

リボーン「最近リング戦の修行ばかりだったからな。たまにはツナのために何かしてやろーとおもってな」

ツナ「なんだよ急に…。気持ち悪いなぁ」




冷蔵庫からパックジュースを取り出しながらツナがそういう。
背後ではリボーンが懐から<ナニカ>を取り出していた。




リボーン「これをやるぞ。

いってこい。羽を伸ばしてもいいぞ」




そう言って渡されたのは<並盛どうぶつえん>のチケットだった。
リボーンはなにやらセッティングをしたらしいが、ツナはあまり乗り気ではない。

そんな時……




―――ピーンポーン




チャイムが鳴り響き、来客を知らせた。
扉を開ければそこには淡いブラウンのワンピースを着た琉輝(ウィッグ込)が立っているではないか。




琉輝「おはよう、綱吉!」

ツナ「琉輝!お、おはよう。
(どーしたんだろ?なんか格好も可愛いし……)」

リボーン「お前と一緒に動物園に行くに決まってるだろ?」

ツナ「エェエエ!!(琉輝と!!?)」

琉輝「た、楽しみで仕方なくて昨日全然眠れなかったんだ。
動物園なんか初めて行くからこう、なんか色々頑張ってみたんだけども……

似合ってるか?」




その場でくるりと回った琉輝の笑顔はとてつもなく輝いている。
そう、今までにないほどに。

それほどまでに動物園が楽しみらしい。




ツナ「(う…うそ。うそだろ?琉輝と2人で動物園だなんて…


これって…


―――なにげに初デートじゃん!!)」




初めて想いが通じ合った異性と初めてのデート。
ツナは天にも昇る気持ちだった。




ツナ「!!(ゆ…夢なんじゃ…)

いてっ」

琉輝「Σ…?
な、何してんだ?」

ツナ「あ…いや、別に何も……」




頬をつねるが痛みを感じるので夢ではない。
つまり……




琉輝「綱吉!アライグマ!アライグマ!!」

ツナ「(今の琉輝って普段から考えられないくらい子供っぽい顔してる。まあ…そういう琉輝も可愛いんだけどさ――。
まさかあの琉輝のこんな一面が見られるなんて思ってもみなかったし。


リボーン!!本当にありがとう!!)」




本物のデートなのである。
ツナは泣きながらリボーンに感謝する。


だがしかし。
そうリボーンのセッティングしたデートが普通なわけもない。




琉輝「アライグマがちょうど何か洗ってるな。芋か?」

ツナ「うわ――、……ん?」




「ぐぴゃあっ」




ツナ「(ランボ〜〜〜!!?)」




アライグマに現れていたのは芋でも何でもない。
ツナの家の居候、ランボだった。

ランボがいることに驚きを隠せないツナ。
そんな中琉輝は、ぐっと背伸びをして洗われているものを見ようとしている。




ツナ「Σはっ

(これでもしランボの面倒見ることになったら今日1日デートどころじゃなくなる………!!)


る、琉輝!先にサルのショー見に行かない?」

琉輝「?、でもまだ…」

ツナ「こ、ここのショーってすっごく面白いらしいよ!」




そう言ってツナは琉輝をアライグマのゾーンから引き離すが、サルのショーは時間が決まっており上演されていなかった。
だが琉輝は気分を害すことなくラッコ館の方を指さした。




ツナ「(にしてもなんでランボがいたんだ…?チビ達も遊びに来てんのか…?

いやいや、だとしたらそれこそデートどころじゃなくなるぞ。出来るだけ関わらない方向で…)」




その時背後から声が聞こえた。




「パンダはいないのかって聞いてるのよ。あの白と黒のフォルムを出せって言ってるのよ!」




ツナ「(パンダ好きか…)

!」





振り返った先にいたのは…




「パンダを出せって言ってるでしょ!!!」

ツナ「うそ―――!!」




琉輝の姉、鈴音の姿があった。




飼育委員「困りますお客さん」

鈴音「動物園ならパンダくらいいるでしょ!!見せなさいよ!!
こちとらそれを見るだけにここにきてんのよ!!」

飼育委員「ですからうちの動物園には……」




ツナ「(鈴音さんなにやってんのー!!!)」

琉輝「どうした?綱吉」

ツナ「(ま、まさか妹のデートを監視しに――!?)

い、いや別に…」




とりあえず何もみなかったことにしたツナ。
だが事件はそれだけではなかった。

了平が<熊と戦わせろ!!>と言っていたりビアンキが<珍しい食材を吟味しに来ただけ>と動物の捕獲をしに来ていたり、なぜか今日は知り合いが多くいるのだ。




琉輝「誰かいるのか?」

ツナ「Σいや、だ…誰も!!

それより琉輝!ラッコだよラッコ!!」




デートに集中しようと思い、そういったツナだったが運が悪かった。




子供「あ――貝を石で割ってる――」

ツナ「お。……ん?」




子供の言葉に期待してラッコを見るツナだったが、そこには再びランボがいた。
ガッガッと石で殴られて可哀想だ。




琉輝「ラッコいたか?」

ツナ「い、いや、いない!残念!!留守みたい!
かわりにライオン!ライオン見に行こ!」




次々と現れる知り合い達。
意地でも知り合いを避けようとするツナに琉輝は首をかしげながらもついていく。




「おいっ!!肩にぶつかっといて挨拶ねーのか!」




その大声にびっくりしてツナが足を止める。
声のした方向を見るとそこには不良と獄寺の姿があった。




不良「コラガキィ!!」




ツナ「獄寺くん!!!

(なんでいるの――!?なんでいつも戦場なの〜〜〜!?)」




不良「シカトしてんじゃねーぞ。なんとか言えコラ!」




その言葉に堪忍袋の緒でも切れたのか獄寺がダイナマイトに火をつけ始めた。
ツナはそれを見て顔を青くする。




琉輝「顔色悪いぞ、お前。
向こうに休憩所あったよな?そこ行くか?」

ツナ「る、琉輝!ここは危険だ!」




は?と首をかしげた琉輝の腕を引っ張ってツナがかける。
小動物コーナーの方へ向かうとそこには……




瑠香「うさぎですよ!白いんですよ!もふもふですよ!」

雲雀「(小動物に囲まれる瑠香。GJ)」




無表情の癖にキャラ崩壊バリバリで瑠香の写真を連写する雲雀とウサギと戯れる瑠香の姿があった。
彼女の周りには小動物が集っている。

小動物ハーレムだ。




ツナ「(邪魔したら咬み殺される――!!)こ、こっち!!」

琉輝「!」




ツナは駆ける。
2人のデートを死守するために。


だが、しかし。




芽埜「見てみて獄くーん!!さっきペンギン歩いてたの!!」

獄寺「あ?」

芽埜「飼育委員さんが一緒に撮ってくれたんだよ〜っ」




ツナ「(芽埜まで―――っ!!)やっぱこっちー!!」




了平「じゃあ虎と戦わせろ!!」

飼育委員「おちついて!」




ツナ「(お兄さん!!!)やっぱあっちー!!」




ビアンキ「何が美味しいのかしら」

飼育委員「で、ですから」

飼育委員「食用ではないんです」




ツナ「(ビアンキ!!!)あっちだ――!!」

琉輝「ちょっ!」




鈴音「パンダがいないってどういうことよ」

飼育委員「で、ですから!!
うちには飼育できる職員がいませんし……設備も…………」




ツナ「(鈴音さんだ!!!)こっち―――!!」




「亞琉……、フクロウがいる………」

亞琉「私はどちらかといえば孔雀の方が……。
凪さんはフクロウ、お好きなんですか?」

クローム「普通……?」




ツナ「(あの2人までーっ!!)やっぱそっちダメ――!!」




「リリア殿!アライグマだそうですっ」

リリア「サツマイモを洗っておられますわね!バジル様のお洗濯姿にそっくりですわ!」

バジル「拙者はあれほど上手くないですよ、リリア殿。
で、ですが……ありがとう、ございます//」




ツナ「(また知り合い――っ!!!)こっちもダメ――!!」




その後もどこそこで知り合いに出会ったツナは琉輝の手を引いて動物園中を走り回った。
2人は息も上がっていて、現在は休憩所で休憩中だ。




ツナ「ご…ごめん、琉輝……。無理やり引っ張ったりして…」

琉輝「んー…別に構わないけどさ。


―――動物園ってあんなふうに見るもんなんだな!!感激したぜっ」




激しく違う。
だが琉輝はにこにこと嬉しそうなので、ツナは今更否定することもできなかった。

その時。




「ガル…」




ツナ「(うるさいなー。なんだよこの声――)

……!、うっうそぉ〜〜!!」




アナウンス《お客様にお知らせします。先ほどの爆発により檻が半壊しライオンが逃げ出しました。
大変危険です。速やかに園外に避難してください》




それは獄寺のダイナマイトにより檻が<半壊>し<ライオンが逃げ出した>というアナウンスだった。


だがツナ達は逃げるどころではなくたった今<目の前に>ライオンがいるのだ。
逃げられない。
ツナは近くにリボーンを見つけたが彼は鼻ちょうちんを作り眠っていた。




琉輝「えっ、なっ、ちょ…!?」




ツナがリボーンに助けを求めている間に琉輝が襲われそうになっている。
着なれない服や靴のせいで上手く逃げられず彼女は尻餅をついてしまう。


このままでは琉輝が…!!―――と思ったツナはライオンの前に立ちはだかる。




ツナ「それはダメ――っ!!」

琉輝「ツナ!!

っ危ねえ!!!」




その時、ライオンが吹き飛んだ。
―――了平のパンチによって。




了平「うむ。やはり動物園に来たらこのくらいせねばと割が合わん。
今日から俺のリングネームは極限ライオンパンチニスト了平!!!」




そう叫ぶ了平の背後では爆発が起こり獄寺が2匹のライオンを捕まえていた。
だがビアンキの登場で倒れてしまう。




「大丈夫ですか2人とも!」

「ツナくんたち、平気?!」

「ツナ兄〜!」

「また派手に遊んでんなー」

「結局パンダ見られなかったわ」

「ここではさすがに見られないかと思われますよ?主様……」

「パンダ………私も、みたい……」

「沢田殿!ご無事で何よりですっ」

「無事でよかったですわ!」

「うさぎ…連れて帰っちゃダメでしょうか……」

「欲しいの?」




そこには動物園内で見かけたメンバーに加え、山本、ハル、フゥ太の姿もあった。




ツナ「みんな!!ど…どーして」

ビアンキ「どーしてじゃないでしょ?あんたのためにみんなここに呼び出されたのよ」

ツナ「え?」

リボーン「そろそろお前にもレオンやエンツィオみたいな相棒ペットが必要だと思ってな。
みんなにツナに合う動物を選んでもらおうと動物園に呼び出したんだ」

ツナ「な…なに勝手にやってんだよ!」

ハル「でもみんな忙しくて時間が合わなかったので時間の合う人同士で現地集合にしたんです」

ツナ「えっ…じゃあ!」




琉輝デートのつもりではなかったのか?と彼女を振り返る。
そこには鈴音に小突かれてからかわれている琉輝の姿があった。


彼女はツナの視線に気づくと彼に駆け寄って耳元で囁いた。




動物園




琉輝「かっこよかったよ、綱吉」

ツナ「!!」

琉輝「ありがと、」




―――ちゅ、




ツナの頬に落とされた琉輝からのキス。
ハルがそれを見て叫ぶが琉輝はしれっと言うのだった。




琉輝「あいさつ」




霧戦のクロームのように。




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