鈴音と亞琉




〔Side芽埜〕



「彼女が5歳、私が15歳のころです。私と彼女は同じ一族の生まれではありませんが一緒に住んでいました。」

「それから3年後、私と彼女を育ててくれていた人物が突然行方をくらまし、彼女を探していた人物と共に彼女の実家だという場所に住むことになったんです。」

「そこは広く大きな社でこちらでは珍しい仏教信仰の場所でした。彼女には実家の記憶がほとんどなく仏教徒だという記憶もなく、そこが本当の実家かはわかりませんが。」

「そんな場所で暫くの時を過ごしたのですが、私たちはその家に心を開くことなく2人だけで暮らしてきたようなものでした。」

「そんなある日のことでしたよ。私が少し買い物に出ている間に社が闇ギルドに襲われたのは。」

「私は彼女を助けなければならないと思って、急いで社に戻って、彼女を助けに入った。けれど」



「亞琉さんの魔法は全然通じなくて、一方的に嬲られた…かぁ」

「それで鈴音って人が彼もよく知らない能力で闇ギルドをぶっ倒したってワケね。それが」

「はい。きっと私が見た鍵の力に違いありません」

「で、なんでそれを評議員がそいつのせいにすんだよ?正当防衛だろ」

「それが謎なのよねぇ」

「とにかく鈴音ってやつを見つけ出して気絶させてでも連れていきゃあいいんだろ!」

「アンタね!!」




ナツ―――!?
それじゃあ亞琉さん怒りかねないでしょ!!

もう!とルーシィちゃんが怒って、ナツがぐくっと表情を崩す。
ナツが無茶苦茶なのはいつものことだから、もう放っておいていいや。
ルーシィちゃんがいるしー。




「にしてもお前が言ってた鍵ヤローってのが手配犯だとは思わなかったぜ。まぁ妙に濁すからおかしいとは思ってたが」

「ご、ごめんなさい」

「まぁ?あの時点で素直に言われてても俺は絶対真面目に聞かなかっただろうけどよ」

「…でしょうね…」




こっちはこっちでなんかいい雰囲気?
グレイは瑠香のこと結構大事にしてるし、瑠香も満更じゃなさそうだしぃ。

…まぁ瑠香はもうお相手いるけど。




「はぁー…にしても、どうしてまたハコベ山なのよー!」

「だ、だってここで見つけたんですもん!」

「それはわかって 「なんじゃ、今度は集団で迷子か?」 ……へ?」

「え…えええ!?こんなあっさり!?」

「あいつだ!!」

「捕まえろ――!!」

「っな!妖精の尻尾も評議員の犬に成り下がりおったか!!」




逃げるように身を引く鈴音・ロヴェッタ。
ナツとグレイはジリジリと距離を縮めて行き、わたしたち女子は後ろで各々戦闘態勢を取る。


でも、これ、なんか誤解されるんじゃないかなぁ?




「覚悟しろ、鈴音・ロヴェッタ!!」

「くっ。
―――開け!地陸宮の扉!!―――己!!

「あれが瑠香の言ってた鍵の力ってやつね…!?」

「は、はい!」

「嵌めたのか…小娘!この妾を!!」

「ちが、違います!話を聞い、…きゃあ!!」


「―――私自身、貴方に恨みはないんですが……まぁ命令ですから」




急に吹き飛ばされる瑠香。
襲いかかったのは鋭い刃。


チン、と鞘に納まるような音が響き鈴音・ロヴェッタの隣に影が現れる。




「ぜ、全員追い払って!!」

「………いいんですか、それでは貴方はまた 「命令よ!!!」 ―――……ええ、分かりました。」




すらりと抜き放たれる鋭利な刀。
鞘を消した男は両手で柄を持つとわたしたちを鋭く見据える。

一瞬でも気を抜いたら、死ぬ―――…!!




「そいつをぶっ飛ばしてでも話を聞いてもらうぞ!!」

「任せろ、ここなら俺の戦場も同然だ!!アイスメイク―――槍騎兵!!」




グレイの造形魔法で生み出された槍が男向かって飛んでいく。
援護するために鉄扇に魔力を込めたとき、男が微かに動く。

軽々と多数の槍を避けると、そのスピードのままに近づいてくる。
標的は―――。




「っ、避けてルーシィ!!」

「えっ!?」




シ、パンッ…!


タックルするように雪の上に倒れこむ。
その上を刀が通りすぎ、髪がハラハラと舞う。




「………避けましたか」

「へへ、一番戦闘慣れしていない人物から狙うのは常套手段でしょ」

「早く終わらせて帰りたいんですけど」

「なら帰っちゃえば。わたしたち、貴方に用はないから!!



風弾丸(ウィンドガン)!!




至近距離で鉄扇から放たれた風魔法。
それが直撃して吹き飛ばされていく男。

これで勝ったとは、思えない。




「水竜の―――咆哮!!!」

「水、…これは好都合。―――止めろ、小龍(シャオロン)」

「仰せのままに!!」




何…!?




未の盾(ペコラ・ディ・スクード)!!」




急に現れた男の人が地面に手を着くと同時に土が膨隆して巨大な盾を作り上げてしまう。

水は火を消す。
火は氷を消す。


なら、土は?土は水を―――どうする?




「消され、た…!?」

「相手が悪かったですね。」

「っ、…がはっ!!」

「瑠香!!」




腹部を深く刺された瑠香。
グレイが駆け寄って傷口を凍らせて止血する。


刀を伝って滴った赤が雪を赤く染めていく。




「―――帰っていいぞ、小龍」

「…御意に」




姿を消した男。
再び1対5に戻るっていうのに、あんな力があるとわかった以上迂闊に手は出せない。

まず瑠香の攻撃は大半が防がれると思ったほうがよさそう。
効果だって半減しちゃうしあまり意味ない。
氷だって元を正せば水なんだからグレイの攻撃も同様だと思う。

というかまずこれ以上戦わせるわけにはいかない。



なら。




「ナツ!!」

「おう!!」

火竜の―――咆哮!!」
風舞―――螺旋華!!」




風は炎を増強させる!!!


ナツのブレスにわたしの風魔法が合わさって、炎の勢い位がます。
狙うのは男じゃなくて鈴音・ロヴェッタ本人。


これなら……!!




開け―――水瓶宮(すいへいぐう)の扉




え…何…?




―――壬、癸

「あ、呼ばれちゃった!」

「呼ばれちゃたついでにいつもの恒例いっとく?」

「いいからあれ消して」

「「ちぇーノリ悪いのー!いいけどさ。じゃあこんなので消してみるね!!!



水神の―――弾丸!!!」」




右手と左手、合わせて作った銃の形。
そこから勢いよく現れた巨大な水の弾が弾けてとてつもない量の水が炎を消してしまう。


どういう事なの…!?
あれはどういう力…?!




「うそ、同時に3体も呼び出すだなんて…!」

「珍しいのか?」

「当たり前よ!一度に3体も呼び出せるなんて、そんな星霊魔導師見たこともないわ…!」




そんな相手にどうやって勝つって言うの…!?

ルーシィちゃんの弱気な発言にわたしたちは何も返せない。
確かに何をしたって全部返されちゃいそう、だもんね。

『どうすれば……』と思っていたら瑠香がずりずりと体を動かしているのが目に入った。




「鈴音、ちゃん」

「!
 瑠香!無理するんじゃねえ!」

「止め、ないで。


 鈴音ちゃん、私と一緒に、…来て、ください」

「い、嫌じゃ!」

「私、鈴音ちゃんが言ってた言葉……覚えて、ますよ」

「わた、…っ、妾は何も言っておらぬ!!」

「私たちのギルド……温かいです、みんな…家族、みたいです」

「っ……(嫌だ、嫌だ、嫌だ、)」

「一緒に、…来ませんか?捕まえるつもりなんて、ないんです。だから……ね?」

「(嘘つき、そういって捕まえようとした奴が今まで何人いたと…!!私は捕まるわけには行かない。私は、私は…!)」














*     *     *















〔Side鈴音〕



私はもう誰も傷つけたくなんかない!!!傷つけても欲しくない!!!

「「「「「!!」」」」」




お願いだから、どこかへ消えて。
温かいものを見せられると、容易く折れてしまいそうになる。
折れたほうが楽なのに、私は折れまいと頑張ってしまう。


いっそ、死んだほうがいいのに、誰も許してくれない。




「主さんを傷つけた……?」

「人間が……また………!」

「彼女を傷つけるのなら、粛清を。」




ああ、ほら、また。

私が人と関わっていいことなんて何一つない。
あの日だってそうだった。


「亞琉!!やだっ、…亞琉っ」

「………ご…め、」

「やだっ、やだっ!…鈴音のこと、置いてかないで…!おいてか、ないで」

「…お、…れ、は……………―――」

「っ、いやぁあああああああああ!!!!


 ―――っ……助けて、ねえ、助けて!!!!!甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸…!!誰もでいいから、亞琉を助けて!!!あの人たちも追い払ってええええ!!!!!」



私が―――殺した。




「殺させないで……、もう誰も、」


「勿論」


「「「「「!!」」」」」




ザクザクと雪を踏みしめる音がして、ゆっくりと手を差し出される。
黒い手袋に覆われた大きな手。
視線を持ち上げればやんわりと細められた瞳と目があう。

とぎれとぎれの声しか出てこなくて、私の目からは涙が落ちて、視界が歪む。




「やっと見つけた」

「………亞琉…?」

「うん」

「…ど、して…」

「死んだと思った?残念、俺は意外としぶといから」

「……亞琉…、亞琉、」

「もう頑張らなくていいよ、もう1人でいようとしなくていい」




ゆっくりと抱きしめられて視界がぼやぼやと歪む。

今までどれくらいの涙をこぼしたんだろう。
あの日亞琉を助けられなかった私は全てから逃げてばかりだった。
私の周りからは誰もいなくなった。


ひとり残らず、殺された。


そう思ってた。




「―――おかえり、鈴音」

「………わ、たし」

「うん」

「頑張った、の。もう誰も傷つけないようにしなくちゃって、…ずっと1人で生きてきたの。


 もう、いいの?頑張らなくていい?」

「いいよ。」

「っ、……私を、恨んでいない?私のせいで、あの場所は襲われて…………、私が生きてるから…」




強く抱きしめられる。
もう何も言わなくていいよ、って言われてる気がしてそのまま強く抱きつく。


もう帰っていいの?
もう大丈夫なの?




「帰ろう、鈴音。」

「どこへ」

「新しい家に」

「?」




亞琉の言っていることはわからなかったけど、これ以上彼らと争う理由もない。
今にも攻撃をしかねない己たちを下がらせてから癸の手を引いて、瑠香の下へと向かう。




「鈴音、ちゃ」

「信じてあげられなくて、ごめんなさい」

「……!」

「傷つけて、ごめんなさい。理由は必ず話すから。―――癸」

「ブー。主さん傷つけた人治すのヤダー」

「話を聞かなかったのは私だから。」

「……むー。仕方ないなぁ。……水神の恩恵




〈水神の恩恵〉は癸が持つ治癒能力を持つ水魔法。
同時に消毒の役割も果たすから後遺症のようなものは残らない。

言葉とともに癸の手から放たれる水が傷口を包み込んだことによって、近くにいた男には睨まれたけど知らないふりをした。




「私、貴方と一緒に行く。―――そろそろちゃんと向き合わなきゃいけないんだろうから。」














*     *     *















〔Side琉輝〕



「はぁ!?もしあいつらが連れて帰ってきたら妖精の尻尾に入れてくれ!?」

「はい。マズイですか?」

「まずいも何も……マスター!」

「いいんじゃないか?」

「Σ適当か!!!」

「聞いた話によれば行くところがないらしいじゃない。おいてあげましょ」

「ミラまで!!」



そんな会話をしたのも2時間前。
1時間前にギルドを出て行った亞琉はナツたちと一緒に戻ってきた。


―――鈴音・ロヴェッタと思われる少女を連れて。




「あ、あの子が手配犯…?!」

「悪いことをするようには見えないけど……」




囁かれる声に眉を潜めた鈴音。
そろりと亞琉の後ろに隠れる様子からして、あまり見られたくないんだと思う。




「退いた退いた。


 ―――連れてきたぜ、じいさん」




手を動かして周囲にいた奴らを追い払ったグレイがこちらに歩いてきた。
それに続くようにナツたちが続き最後にやってきたのが亞琉に連れられた鈴音だった。




「よく来たの」

「………何も聞かないの?」

「聞かん。
 ……………聞いて欲しいのなら聞くが?」

「…そ、の……私―――」

「鈴音。その話を言う前に俺の話を一度聞いて」

「……?」

「これは本当の話だからきちんと聞いて欲しい。鈴音は誰も殺してないんだ。勿論彼らも誰も殺していない。」

「どういう、こと?」

「あの日俺を救おうとしただろう。鈴音は彼らを呼び出して、彼らは目の前にいた闇ギルドの奴らを倒したね。鈴音はその後やって来た憲兵に驚いて、そのまま社から逃げ出した。それを見た憲兵は犯人が逃げ出したと思って君を指名手配したんだ。

 それがあの日の出来事。でも本当は闇ギルドの連中は大怪我はしていたものの死んではいなかったんだ。だからそのまま憲兵に捕まった。
 俺はあの社に住んでいた者の中で唯一の生き残りだったから事情聴取をされたよ。主に鈴音のことについて。彼らは鈴音を犯人と決めつけて、聞く耳を持たなかったけど。


 それは君の知っている彼らが証明してくれるはずだよ」




そういって腰を指す亞琉。
そこには9の鍵が下げられていて内5本には様々な色の石が埋め込まれている。
鈴音はそろりとそれを見下ろすと、震える指で1つの鍵を手にとった。




「ひ、…ひら、け…金剛宮(こんごうぐう)の…とび、ら…―――庚」

「…………やっほ、鈴音…ちん」

「庚…、お願い、教えて。うそ?ほんと?」

「…………嘘じゃ、ないよ。
 あの日鈴音ちんはボクたちを呼び出したでしょ?癸は亞琉を助けてて、ボクたちは闇ギルドの人間を徹底的に叩きのめした。でも―――命までは奪えなかった。



 鈴音ちんが、望んでなかったから。」

「え…?」

「だって〈追い払え〉とは言ったけど、〈殺せ〉とは言われてないもん。まぁ結果的には丙ちんが止まんなくて、結構ボロっちくなっちったんだけどねー☆



 だからさ、もう、1人になんないでいいんだよ。ごめんね、今まで言えなくて。」




そう言ってにっこり笑った女。
ツインテールが軽く揺れて橙の瞳がゆらゆらと震える。

鈴音の言葉を待つように黙り込んだ女に、鈴音は―――。




「ありがとう、庚」




にっこり笑ってお礼を言ってのけた。
おいおい、そこはもっと、なんか違う言葉があっただろ。

普通怒るとこじゃねーの?




「!!
 あ、あっちゃ――!そこは怒るとこっしょ、鈴音ちん!やっぱズレてる、ズレてますよ、鈴音ちんはぁ!!
 ……っあ――!もういい、もういい!鈴音ちんがズレてんのなんて昔っからだしぃー!


 まぁいろいろ解決したし遊ぼ、鈴音ちん!辛(かのと)とか壬とか癸とか呼んで遊ぼ!あっ、乙(きのと)と丁(ひのと)もね!」

「ちょっ…」




グイグイと引っ張られてギルドの外へ出ていく鈴音たち。
亞琉がそのあとを追っていくのであたしたちも後を追って外に出る。




「主さん主さん!」

「僕らとなにして遊ぶのー?」

「ぼ、ボク、お散歩行きたいです、」

「いやいや、乙、落ち着こうよ。なんで俺たち遊ぶことに、…うわっ!」

「あはは!丁ってば落ち着くも何もないでしょ!真実も全部明らかになっちゃったし?はしゃぐ意外ないじゃ――ん☆」

「あ、あねさまはちょっと…お気楽すぎます……汗」




そこにはなんか癒し空間が広がってました。
なんで。




「遊ぶならわたしたちも入れてー!」

「きゃっ!芽埜ちゃん!?」

「ちょ……、」




芽埜たちも突っ込んでいってギルドの外は騒がしくなる。
ワイワイと遊び始めた芽埜たちに大人たちは温かい視線を向ける。

亞琉もその1人で、でもその視線は鈴音のみを見つめていた。
『やっぱ大事なんだな』って思ってたらミラがそこに近づいていく。




「さ、亞琉。何処に付ける?」

「―――!」

「なんで驚いたような顔をしてるの?亞琉たちはもう仲間じゃない」

「……ありがとうございます、ミラジェーン」

「ミラでいいわよ。さ、何処に付ける?」

「なら……背中に」

「了解。……あら、結構鍛えてるのね」

「ええ、まぁ」




ポン、と亞琉の背中に押された白の紋章。
背中なら瑠香と同じだなー、と思っていたら結構上の方にドン!とつけたらしい。
ゆっくりとその場所を触った亞琉はくすりと笑うと騒いでいる芽埜たちの中に入っていく。




「鈴音も押してもらいましょうか」

「え?え?」

「だってここが新しい家になるんですから」

「そ…そんなことしたらここのギルドに迷惑が」

「迷惑なんかじゃねーから、早く来いよ。あたしが押してやる」




手招きすれば亞琉に腕を引かれた鈴音がカウンターにやってくる。
紋をつけるためにスタンプを手に取れば鈴音は迷った様子を見せながら、ゆっくりと目をつむった。

するとコォッ…と体が光り始めて、影が大きくなっていくではないか。


な、ななな、なんだ…!?




「ふう…。じゃあここにお願いできる?」

「…え、…」

「ここじゃダメだって言うの?わがままね」

「い、いや、おまっ…なんで急にでかくなった――!?」

「これが彼女本来の姿ですよ。年からして小さいとは思っていたんですが」

「評議員を騙してたのよ。逃げ回るために、ね」




そう言ってズイっと目の前に差し出される胸元。
「早く押せ」と言わんばかりのその姿にあたしは専用のインクをつけてスタンプを押してやった。

桜色のスタンプが胸元で輝く。




「「あっるじさ――ん!早くー!僕ら捕まっちゃいそー!」」

「ま、待ってください、壬くん!」

「「あはっ残念だね、乙☆そっちは癸だよ!」」

「えっ、ええええ!?」




再び縮んだ鈴音は腕を引かれて再び外へ。
亞琉の話によるとアイツ、




「18、なんだよな」

「ええ」

「なんつーか、それよりも子供に見えんなー」




ぼそりと呟けば亞琉も『そうですね』と賛同する。
その横ではミラがにこにこと笑って外を見つめてて。




「俺も混ぜろ、芽埜!」

「きゃ、っ!?」

「てめ、ナツ!瑠香に怪我させんじゃねェ!」

「まぁまぁグレイ、落ち着こうよ」

「そ、そうで」


ドゴ!!


「「 あ 」」

「なにしやがる!!」

「こっちのセリフだ!!」


ゴッ!!


「漢なら拳で語れ!!」

「「邪魔だ!!!」」

「混ざってくるねーv」

「「頑張ってーv」」




ギャアギャア!!!
ドガバギ、ドゴ!!


いつもどおり騒がしくなるギルド。
マスターも今回ばかりは止めに……、アレ?なんか顔色悪くない?




「………開け、森緑宮の扉…―――甲(きのえ)」

「!
 乙が出て行きましたが……何か御用ですか?」

「…あそこ、全員縛り上げて」

「フフ、了解しました。」




周囲を見渡すとギルドに入って、ギルドの床に手を付いた男。
そこから翡翠に輝く魔法陣が広がって、床板が外れていく。
床板はうねりを上げて、暴れている全員を縛り上げた。


うっそ――ん。




「な、なんだこれはァ!?」

「仲良きことは美しきかな。」


ヒュゥウ…


騒がず、仲良く、する、でしょう?

「「「「「あ、あいっ!!」」」」」




▼ 第二の エルザ が 現れた 。


マスターですら目線をそらしてるし、なんていうか鈴音、恐るべし?




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