「おかしいね、おかしっ…いね、」
あの人はいつも泣いていた。
そしてそれをいつだって咎められて感情などいらぬ長物。我々にそれは不必要なもの≠ニ諭された。
諭したって変わるわけがないのに。
変わって欲しいのならそれなりの対処をすべきなのに。
「ふ…、ぅ……うう…」
「なかないで、あるじ」
「、う……うぇええ…」
「ぼくが、ずっとそばにいるから。だれがおこってもぼくはおこらないから」
幼かった僕にできたのはそうやって声をかけることだけ。
何もできなかったあの頃の役立たずな自分が僕は大嫌いだった。
大嫌いだった、のに。
「………そ、う…いえ、ば……おまえ、には…なま、え……なか、った、ね」
「あるじ、いかないで。どこにもいかないで…」
「なま、え……あげ、なきゃ…ね」
「、いらない。なまえなんていらないから、だから…」
「おまえ、の……なまえ、……は…―――。」
これは貴方との物語。
僕の中に残る沢山の記憶の断片。
お願いだから、もう、僕から何も奪っていかないで。
不安でない時なんて一度も無い
「主さま、…僕、頑張ったよ」
「おう、おかえり、―――=B無事みたいだな」
当家刀剣女士について。
「初めまして……。名前、です。本当はただの無銘な忍刀だけど、名前は前の主がくれました。よろしくお願い、します」
デフォ「花鳥風月(ハナトリノカザツキ)」
無銘の忍刀(普通の打刀と脇差の中間の長さ、長脇差と分類されるサイズ)で日本刀独特の反りがなく直刀≠ノ分類される。
鍔は大き目で角張っており、下緒は普通の刀のものより長く、鞘は光を反射して目立たないように艶消しに仕上げられ、先端の鐺(こじり)は金属製で鋭角に仕上げられている。
刀剣自体も至って地味な風貌だが顕現された後の姿も大概地味。
漆黒の膝裏まで伸びた髪を適当に結い上げ、これまた漆黒の忍装束に身を包み漆黒のロングブーツを履いている。
唯一色があるのは腰に下げられた椿の赤い花かざりだけ。
首が落ちるように落ちるという意味で不吉扱いされ外したらどうか≠ニ言われても彼女は首を振るのみ。
性格は至って従順で素直だが感情に乏しい。
けれど無意識に寂しがり悲しがり泣きそうな顔をするので誰も彼もが異常に過保護になっていく。
山茶(ツバキ)
かつての名前の主人。
泣き虫で弱虫で忍に向かない心優しさを持つ風魔一族の少女。
けれど腕は確かで俊敏な動きと急所を的確に突く攻撃で名前とうまくやってきた。
だがしかし、とある事件が原因で亡くなってしまう。
咲楽(サクラ)
男の審神者で、年齢は25くらい。
さっぱりした性格で爽やかな笑顔を持つが、女子には優しくも男子には厳しい。
けれど怒るのにはきちんとした理由があるので刀剣たちにも慕われている。