石田軍三人組でMAGIトリップ(バルバット編より)。
※婆娑羅>並みの魔法というくらいの比率で、魔力量も普通の人間からしたら多いくらいはある。
関ヶ原直前のことであった。
われらは何者かに浚われ、妙な構造の建物へと閉じ込められてしまったのだ。
このままではならぬ。
そう考えたわれらは三人でこの建物を出ることにしたのだが―……。
「刑部さぁん…まだっすかー」
「左近、少し黙っておれ。」
「刑部、分からないのならば勘で進むしかないだろう」
「ぐ。…だが三成、この先何があるやも知れぬのだ」
如何にかしてこの文字を解読せねば…!
異国の文字がこのようなものではなかったか、と頭を回転させてみるものの読める気はまったくせぬが、なァ。
特徴的な文字を指でなぞってみるもそれが彫り刻まれているということしか分からぬ。
「……刑部さん、俺の勘が左だって言ってまっす!」
「よしでは右に行くか、三成よ」
「ああ」
「ひっど!?」
左近の言に従わず右に行けば、すぐさま落ちた。
下を見れば針山。
「ほらー!!だから言ったのにー!!」
仕方あるまいと両者の腕を引き輿に乗せれば、落ちる途中妙な抜け穴を見つけた。
それを通るため輿を浮かせ、その抜け穴へと入る。
そこから先は光が一切なく、われらを拒絶する意思さえ見え隠れしておる。
それでも進まねば帰ることは出来ぬ。
ゆるりと輿を動かせば眼前から光が近づいてくる。
「刑部ッ!!!」
「刑部さん!!!」
「――っ!!」
―――……ふぅん?他の……は………わねぇ、
光が通り抜けたかと思えば微かな声と共に体が浮く感覚がして慌ててわれの腕をつかんだ三成と左近共々ぐん、と奥へ奥へと引きずりこまれてゆく。
そして辿り着いた石で出来たものが転がっておる可笑しな部屋。
途中、勝手に扉が開いたりしたが……ここは真に人の屋敷か?
「平気か、刑部ッ!!」
「無事っすか、刑部さん!!」
「あいあい。そこまで詰め寄らぬでも、われは無事よ、平気よ」
「嘘偽りはないな?」
「ぬしに嘘偽りなど言わぬ」
こんなくだらぬことを嘘偽ろうとぬしはすぐ見抜くであろう?
それよりも、ここがどこかというこのほうが問題よ。
「これなんスかねー?」
「おい左近!勝手に物に触れ バァ――ァア、ピカーッ っ!?」
「あ、あれ?」
「左近んんん!!!」
「うわぁぁあ!!!すんません!!!」
ビキビキビキビキビキビキビキ、パァ〜、ギュルルルルル、バガァン!!
音と振動。
それと共に建物の天井が崩れ、青い巨躯が姿を現す。
「……誰かしら?王になるのはぁ……?」
空気を振動させる声はその巨躯の主から発せられている。
普通では考えられぬその巨躯に三成と左近がわれの前で刃を構えた。
「凶なる器……私の理想とは、違うのよねぇ。
…そっちは……忠なる器ねぇ。でも軽いから私とは合わなさそう。
あとは………うふふふふ、かぁわいぃ」
そんな声と共に縮み始めた巨躯がわれらの目の前に全貌を露にする。
腹部を露出した衣服に、防御性無視の腰布、着飾られている装飾の数々。
長い爪に愉快そうに歪められた瞳と唇。
それがしっかりと捉えているのはわれの姿であった。
「自己紹介をしましょうかぁ。私の名前は〈レディア〉。嫉妬と謀略から作られたジンよぉ。貴方達で言うところの〈迷宮〉の主たる私の元へ辿り着いた貴方達の〈迷宮完全攻略〉を認めるわぁ」
壺より現れたおなご〈れでぃあ〉のいうことの大半が理解できぬ。
どっかの竜さんみたいな言葉話してる…、と左近が呟くのも当たり前よな。
だがここは〈だんじょん〉とやらであり、ここの主はこのおなごであり、その主よりわれらは〈だんじょんくりあ〉とやらを認められたということになる。
訳はわからぬが、そういうことであろ?
「ねぇ貴方、名前を教えてくれるかしらぁ?」
「われか?われは…名前よ。大谷名前という。右は三成で左は左近」
「名前に三成に左近……、うふふ、みんなかわいい名前ねぇ。
名前、私貴方のジンになら、なってもいいわぁ。今まで色々な人間たちが挑戦してきたけれど……私に見合う人間っていなかったのよぉ。
それに私と契約する前に他の奴らと契約してる人間が一番気に食わなかったわぁ!私が一番優れていると言うのになんで他の奴なんてっ」
「ほう、それは許せぬ者共よな。ぬしを二番手にまわすとは」
「そうよぉ!酷いわよねぇ!?」
気に食わないわぁ!と憤慨するレディアより伝わってくるのは〈嫉妬〉の感情。
理由は違えどわれらは少し似ておるのやも知れぬなァ?
「それでレディア。われはぬしに聞きたい」
「なあに?」
「〈じん〉とはなによ?」
「あらぁ?あなた、ジンを知らずに〈迷宮〉に入ってきたのぉ?…うふふ、いいわ。教えてあげる」
〈じん〉とは迷宮の宝物庫に封じられ、青い巨体を持つ者のことを言うらしい。
宝物庫に辿りついた者の中から一人だけ王の器と見込んだ攻略者を選び、以降はその人物を主とし、じんの金属器を媒介として主に力を与える存在。
「契約以降は主の魔力を糧として召喚され、力を発揮するの。金属器に大量の魔力を送り込む事で実体化させることができるんだけど、実質人間の魔力量ではマギ以外には不可能とされてるわねぇ。
だからジンの力を身体表面に薄く纏い、全身をジンの力と同化させる事で疑似的に実体化したジンに近い力を得る魔装が最も標準的なジンの使用法とされてるみたいよぉ?」
「ほう……それは興味深い」
「ええっと…レディアちゃん。その話から行くと……刑部さんを、主にすんの?」
「そうよぉ?駄目かしらぁ?」
「刑部から生気を吸い取る気か!!?」
「何よぉ!私が名前を殺すわけないじゃなぁい!!」
喧嘩をはじめたレディアと三成にため息を吐き出し、頭巾を取る。
チャリ…、と微かに金属音を立てた〈それ〉を頭から抜き取れば三成に懇願され伸ばし続けた髪がするりと解ける。
手元に収めた〈それ〉は古い安物が壊れたとき買い与えてくれたわれの大事な宝物であった。
「レディアよ」
「!
なぁに?」
「われでよいのであれば……ここに宿れ。われは、此れくらいしか金属を持っておらぬゆえ」
そういえばレディアは喜び、三成と左近は猛烈に反対してくる。
分かっていたことゆえ、驚きはせぬ。
二人を宥めレディアへと〈それ〉を向ければレディアは長い爪先でそろりとなぞった後首を横に振る。
「それは名前の大事なものでしょぉ?確かに身に馴染んだ金属のほうがいいけれど……」
「構いはせぬ。これでよい」
「……じゃ、じゃあ飾りのほうに宿るわぁ……。本体のほうだなんて……名前に申し訳ないものぉ」
そう言って蝶の飾りのほうへと姿を消したレディアは一瞬で外に出てくる。
「名前…、外には他の金属器使いがいるわぁ。武器化魔装も全身魔装も出来ない名前には少しきつすぎるわ。そ・れ・に!私の主たる人間が魔装一つ出来ないだなんて悔しいものぉ!!」
「それが本音っしょ!!?」
「煩いわ左近ってばぁ!!
ここはそう簡単に崩れたりしないわぁ。だからここで練習してから外に出ましょぉ?ね、いいでしょお?」
ふむ……早に帰らねばならぬと思うていたがこのような力を手に入れてしまえば話は別よな。
この力を使えば関ヶ原で三成を勝たせることも容易かも知れぬ。
「ではレディアよ、使用法を教えやれ」
「刑部!何を考えている!!」
「まァ待ちやれ、三成。これさえあれば徳川との戦も楽になるやも知れぬ」
「!」
「ぬしの復讐への機会が早まる。それだけのことよ」
「………分かった。長く待ちはしない、早くしろ」
「あいわかった。では、よろしく頼むレディア」
「よく分からないけど、わかったわぁ。早速始めましょお?」
そう言って笑ったレディアが飾りへと消え行く。
脳内に響く声にしたがってわれは簪を握り締めた。
*大谷名前
石田軍では三成の補佐を勤めていた……はずだったが、何故か迷宮内にいて三成&左近と共に迷宮攻略に乗り出すことに。
▼ジン、レディア
嫉妬と謀略を司るジン。
〈命〉属性のジンで能力は呪術関係らしいが結界から治癒まで様々な力を発揮する。
非情に嫉妬深く、自分が一番優れていると思っているため他のジンと折り合いが悪い。
金属器は三成と左近が自身にくれた簪の(蝶を模っている)飾り部分。
魔装武器は彼女の武器らしく数珠で魔装姿は仄暗い紅色を使った三/國/無/双/5の貂/蝉のような格好。
極大魔法は『孤蝶乱華(レディーア・レボータ)』、数珠で描いた円の中に当たった技の全てを二倍にして跳ね返す技。
*石田三成
石田軍大将だったが何故か関ヶ原前に迷宮内に迷い込んでしまい名前&左近と迷宮攻略に乗り出すことに。
▼眷族器『???』
名前は特に付けていないが、とりあえず刀が眷族器であることは間違いない。
基本的に婆娑羅だけでも普通に戦えるので、余り使わない。
よって現在能力不明。
*島左近
三成の左腕を勤めていたはずだったが何故か関ヶ原前に迷宮内に迷いこんでしまい名前&三成と共に迷宮攻略に乗り出すことに。
▼眷族器『風断風壁(レディーア・ラプトゥーラ)』
左近の双刀に宿ったレディアの眷族器。
基本的に婆娑羅だけで戦えるがいざというときに使えなかったらヤバいっしょ!?という左近の気持ちにより結構頻繁に使われている。
能力は右の刀で何でも一刀両断することが出来、左の刀で風で自分中心に軽い防壁結界を張れるというもの。