必ず、助けてみせる、誓いをかけた、その日


「砂隠れのチヨ様…一名が殉職、風影様は無事帰還されたとの事です。ガイ班、カカシ班は無事任務を終了、三日後には木ノ葉に戻る予定です。そして………赤砂カイアが抜け忍になりました。何でも自身を"人柱力"と言っていたとか」

「分かった…………」

「………あの…綱手様」

「何だ?」

「今回の任務では上手くいったものの…自来也様のおっしゃってた通り"尾獣"を狙ってる奴らの所へ、わざわざ"人柱力"であるナルトくんを送り込むのはいかがなものかと…。確かに元暗部のはたけカカシが同行しているとはいえ…何故、この様なリスクの高い危険を冒してまでナルトくんを…「アイツが"人柱力"だからこそだ」!?」

「"人柱力"を本当に理解してやれるのは"人柱力"の奴だけだ。それに…あいつには不思議な力があってな…。皆…あいつに賭けてみたくなるのさ…」














「……サクラ?」

「!、ミーさん…」

「………もしかして、彼女の事、気にしてるの?」

「カイアは、私を恨んでるんですよね…」


自身のお父さん――サソリを殺したから。
カイアにとっては傀儡だろうが何だろうがお父さんだったんだろう。
私だって駄洒落言うお父さんだったりするけど、お父さんはお父さんだもの。


「じゃあ、最後ー赤毛の子」

「あ…、はーい。赤砂カイア。好きなもの…父親と芸術。…嫌いなものは…臭いもの…か?んー…。将来の夢は…んー、傀儡造りの天才になりたい、なー。それとー…まあ、平凡に生きて普通に頑張って普通に結婚して普通に死ねたら悔いないです。あ、あるとすれば…旦那と家族になれないこと…かな…。趣味は毒作りです!!」



……ちょっと待って?


「私はサソリさんの娘、そして弟子で、相方で、旦那で、最愛の相手で、唯一無二だった」


カイアとサソリは……本当の家族じゃない?
だから、サソリと自身の父親を分けて言ったの?


「サクラ、どうかしたの?」

「ミーさん、もしかしたら…なんですけど」

「?」

「カイアとサソリは本当の家族じゃないのかも」

「?!、何言ってるのよ、だってあの子が父親だって…」

「カイアはサソリと本当の家族になりたがってた。でも、血が繋がってないから本当の家族になれなくて……」


二人はきっと本当の家族感覚でいたのかもしれない。
でも、血が繋がってないから踏み込んで行こうとしなかった。


「女ってのは無駄な事をするのが好きな奴らだな…クク…俺は血の繋がったそのババアが死のうが何も感じはしない。心も……この体と同じだ。痛みはあの日においてきた。今まで何百何千と殺してきたが…その内の一人と同じだ、もっと物事は単純だ」

「アンタは人の命を…何だと思ってんだ!!肉親を何だと思ってんだ!!」

「おい…それが忍の言う台詞か?」

「…!、何で…何でそんな考えかたしか出来ないんだ…アンタは!!」

「もういい…サクラ…こやつをこんな風にしてしまったのはワシら砂隠れの悪しき風習と教えじゃ…」

「………」

「お前もこの体になってみるか?そうすれば俺の言ってる事も少しは分かるだろうぜ。朽ちぬ体だ…傀儡人形なら幾らでも作りなおせる……寿命に縛られる事もない…人など傀儡で幾らでも作り出せばいい…欲しけりゃだが…………数を増やせばいいってもんじゃない……コレクションは質だからな」

「………アンタは一体何なんだ…!?」

「………あえて言うなら…人形になりきれなかった人間……か………俺は傀儡だが生身の"核"を持つ不完全な傀儡だ…人でもなく…人形でもない…熱も…愛も…ねェ…」

「………」

「もうじき動かなくなる。その前に俺も無駄な事を二つしてやろう…俺を…倒した褒美だ…」

「…!?」

「お前は…大蛇丸の事を知りたがっていたな…………草隠れの里にある天地橋に十日後の真昼に行け…」

「どういう事!?」

「大蛇丸の部下に俺のスパイがいる…其処でそいつと落ち合う…事になってる」



サソリは死ぬ前私にそう教えてくれた。
そして、もう一つ教えてくれた事がある。


「木ノ葉……だったな、」

「そうよ…私は木ノ葉の忍」

「………お前の事は、聞いてたぜ」

「!?」

「うちはサスケに恋する…乙女だとか…なんとか、言ってやがったな」

「だ、誰がそんな事…?!」

「クク……お前に、頼んで、おく…」

「私に、頼み?」

「手、繋いでやれなくて…悪かった………と、………」



それだけ言ってサソリは息絶えた。
きっとあの言葉はカイアに伝えて欲しかったんだろう。
サソリは最期まであの子を、カイアを想ってた。
そして同時に、カイアを一人にする事を悔いてた。
サソリは…立派な、親だったんだろう。


「私、カイアからサソリを奪ったんですね」

「サクラ…」


違うなんて言葉いらない。
私とチヨバア様がやった事は知らなかったとはいえカイアからしたら立派な復讐理由になる。


「カイア、今なら戻れるぞ」

「戻るってなんですか、私分かりません。戻るって何処に?四方八方何処を見たって全部闇だ。闇しかないこの世界で戻る光って何処に有るんですか?木ノ葉?あはは、うけるー、それなんて冗談ですか?先生、冗談が過ぎますよ。私は木ノ葉が嫌いだと、昔そう告げた筈です」

「………そうだな」

「この手が赤に染まろうと、黒に染まろうと、何色に染まろうと、私はもう後戻りもしないし、戻る気もない!戻りたくなんかない」



カイアはきっと……サスケくんよりも深い闇の中にいる。
救いたくても光も音も何も届かない闇の奥底に……。
救いの手なんて求めてない、救いの手も届かない。


「ミーさん、」

「何?」

「私、カイアと正面から向き合います」

「!」


例え向き合った先が復讐でも構わない。


「赤砂さん…、あ、あのね!私のこと「えーと、春野だっけ?」うん!」

「これから同じ班としてよろしく…!!」



私が憧れたカイアの真っ直ぐさはきっと偽者じゃない。
私が憧れたカイアの強さや優しさきっと偽者じゃない。
サソリ……あんたは確かに最低だった。
人としては最低だ、でもあんたは親としては最高だったんだと思うから……。


「(カイアの事は、任せてほしい)」


それに、サソリの娘だったって言うならチヨバア様の曾孫も同然。
曾孫のあんたまで犯罪の道に走らせたりはしないわ。


「(待ってなさい、カイア)」


嫌だって泣き叫んでも私はあんたを闇から引きずり出して見せるから。


「サクラさん!ナルトくん!姉さん!そろそろ出発しますよ」

「オッス!サクラちゃん、行くってばよ」


必ず、助けてみせる、誓いをかけた、その日


チヨバア様…ありがとう…
必ず…助けてみせますから、見ててください…



 
(14|42)

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