青春したい子この指止まれ




会場に戻って来た時、電光掲示板に表示されたのは"ハルノ・サクラVS.ヤマナカ・イノ"という文字だった。


「今となっては…アンタとサスケくんを取り合うつもりもないわ!」

「なんですってー!」


…なんか始まった。


「サスケくんとアンタじゃ釣り合わないし、もう私は完全にアンタより強いしね!眼中ナシ!!」

「サクラ…アンタ誰に向かって口きいてんのか分かってんの!!図に乗んなよ泣き虫サクラがー!!」


言い争いはどんどん白熱する。本人の知らないところで取り合われるなんてサスケはとんだモテ男だな……。


「うっ…なんかさ!なんかさ!サクラちゃん言い過ぎだってばよ…いのの奴すんげー目してコエーもん」

「んー…サクラはいたずらに自分の力を誇示したり、人を傷つけるような子じゃあない。いのに容赦されたり手加減されるのがイヤなんだよ」


先生の言葉を聞いて再び下にいる二人を見てみる。


「っていうか、サスケくんやカイアくんと同じ班になれたからって調子乗ってんじゃないわよ――!!!」

「何ですって――!!!」


サスケは兎も角何で僕まで?っていうか、僕は一応女…あ、そっか。アカデミー男として通ってたから…。サクラには波の国でバレたんだっけ。


「…カイアってばアカデミーの時サスケと並んでトップで憧れの的みてーだったからな…、授業態度は兎も角さ…」

「授業態度の事は言ってくれるな、ナルト」


サクラと山中姉は互いに"額に"額宛てを付け直す。二人の間には二人しか知らない何かの"約束"っていうのがあるんだと思う。


「…」


そういえば、今更だけど僕が敵を切り刻んだ際の血は綺麗に片付けられてるんだよね…うん。


「…では、始めてください」


ハヤテさんの言葉を合図に二人とも動き出す。サクラは直ぐに分身の術で数を増やし、いのに向かうが山中姉は"たかが分身の術"と高を括り、余裕の表情を見せる。だがサクラはチャクラを一気に足へ溜め、その足で地面を蹴る。そんなサクラのスピードに驚いた山中姉は、あっさりと一撃をくらってしまった。



「今までの泣き虫サクだと思っていると痛い目見るわよ。本気で来てよいの!」

「そう言ってもらえると嬉しーわ…お望み通り、本気で行くわよ!」


さっきの一撃から立ち直る山中姉。現時点で状況はサクラが優勢である。


「さっすがサクラちゃんだってばよ!スゲー!スゲー!」

「チャクラを使った基本動作…(僕とスザクを除いた)同期の中じゃNO.1だと思うよ」

「え、じゃあ、俺よりも上手いの、やっぱ!?」

「ま!そーだ」

「!!、じゃ、じゃあ、カイアは?!」

「あのねェ…お前が勝てるわけないでしょ」

「!!!」


其の言葉にナルトがいじけ始める中、二人の戦いは互角のまま長く続いていた。片方が殴りかかればもう片方も殴りかかる。片方が受け止めればもう片方も受け止める。片方が手裏剣を投げればもう片方も手裏剣を投げる。其れを10分程度続けていると、流石に二人とも息切れが激しく、動きも遅くなってきていた。でも、いい争いはちゃんとしてるし…女ってやっぱり凄い…。


「アンタが私と互角なんて、あるはずないわよ!」

「フン…見た目ばかり気にしてチャラチャラ髪伸ばしてるあんたと…私が互角なわけないでしょ!」

「…アンタ!私をなめるのも大概にしろ!」


山中姉は右手にクナイを持ち、後ろに束ねている長い髪に手をかけた。そして………


 ザク


「フフ、単純ね」

「お姉ちゃん!!??」

「オラアアアアアアア!!こんなものー!」


クナイでバッサリと切った髪を無造作にまき散らした。はらはらと二人の足元に髪の毛が落ちる。


「こ…こわいってばよ」

「………」


女って怖い…!あ、いや、自分の女だけど、あそこまでじゃないと思うんだ。
(本人は知らずって奴だよね!怒ったカイアはもっと怖いよ、うんbyスザク)


「さっさとケリつけてやるわ!」


そう言った髪の短くなった山中姉は、特徴のある印を結んだ。見た事ないけど…なんだろ、あれ…。


「すぐにアンタの口から参ったって言わせてやるー!」


先生に聞いたところその印は"心転身の術"という山中家特融の術の印らしい。だがその術には欠点があり、"心転身の術は数分間相手の精神をのっとることができるが、その成功率は非常に低い"んだとか。動き回る相手を捕らえる事はまず不可能であり、もし外してしまったら数分間は動くことができない。"心転身の術"は決して戦闘用の術ではなく密偵用…つまりスパイ活動様な訳である。その事がしっかりわかっているサクラは、走り始めたが、完全に挑発にのってしまっているらしい山中姉は"心転身の術"を行おうとし、シカマルの制止の声も空しくく終わった。突然止まった二人の動き……勝ったのはどちらか全員が見守る中、最初に声を出したのは―――…


「フフ…残念だったわね…いの」

「そ、そんな…!お姉ちゃんっ」


サクラだった。その瞬間サクラの勝ちは決まったように思われた…が、


「ん?…!!、こ、これは!!」

「かかったわねサクラー」

「!」


数分は動けないはずの山中姉が嬉しそうに声をあげた。彼女は床に落ちている自分の長い髪にチャクラを流し捕らえた様だ。逃げることができないサクラに向かって、術が放たれる。あちゃー…形勢逆転だ、これ…!


「"心転身の術"!!!」


再び動かなくなった二人。最初に声を出したのは……


「フフ…残念だったわね…サクラ」


先ほどとは違い見た目はサクラ、中身は山中姉のほうだった。キレていたのは演技だったらしい。女優になれるよ、きっと。


「あそこで心転身の術とは…やられたな」

「心転身…!?…という事は今、サクラさんは…」

「ああ…サクラの精神は完全にいのに乗っ取られた」


こうなったらもう結果は見えてしまっている。意識を乗っ取った相手がすることなんて分かりきってるじゃないか。まさか自分の意識がある相手を痛めつけるわけがないし、いま此処で隠密する様な事もない。山中姉の狙いは"試合の棄権"だ。意識が違うとはいえ、棄権するのはサクラになるのは変わりない事だ。これは"忍"の戦いなのだから。僕の予想通り、サクラ(中身は違う)が右手をあげる。


「私…春野サクラは、この試合棄権「ダメだぁ!!サクラちゃん!!」!!」


ナルトが声を張り上げて叫んだ。


「ここまでガンバって来たのに……サスケバカ女なんかに負けたら…女がすたるぞ―――!!」

「帰って来たら…あー…ん――…サスケを交えてお食事会!!!」

「俺は!?」

「うっせ!黙れバカナルト!そこは気を利かせろよ!!」

「!!、き…棄権なんかして…たまるもんですかーッ!!」


あ…ホントに帰ってきた。いいんだ、それで。


「いの!私の中から早く出て行かないとエライ目にあうわよ!」


サクラがそう言った後、ずっと動かなかったいのがピクリと動き、術を解いた。


「精神が二つもあるなんて…あ、あんた何者よ!?」

「ふ…知らなかった?女の子はタフじゃないと生き残れないのよ!!」


何だ精神が二つって。どういう事なの、それ…?山中姉のチャクラが足りなかったのかサクラがタフだったのかよく分からないけれど、二人とももう長くは戦えないのは明らか。チャクラなんてほとんどないに決まってる。その直後、サクラといのが真っ直ぐ走り出し、二人同時に右の拳を振り上げた。二人同時に相手を殴り、倒れる。


「あ!」

「両者続行不可能ダブルノックダウンにより…予選第四回戦通過者無し!」

「「「えー!!」」」


引き分けの場合はこうなるらしい。先生はサクラを、アスマさん?は山中姉を、観客席へ運ぶ。


「おい…いの!」

「サクラちゃん大丈夫かー!?」


騒ぐナルトに"寝てるだけだよ"と告げる。


「治療も必要ない。よかったね、山中妹」

「!!」

「げっ、お前泣いてんのかよ!」

「うえ…だ、だって…うえぇ…!」

「はぁ…めんどくせーな。さっさと泣き止めってホラ!」


随分可愛らしいハンカチを差し出すシカマルを見てにやにやすればシカマルはかあっと顔を赤くした。


「"のい"の為にハンカチ常備してるなんて…かっわいーのー!」

「う、うるせー!!!!」

「!、あ、赤砂さん…今、名前…!」

「…おどおどしてるだけの女じゃない事分かったからね。よろしく、のい」

「!、うん!」


差し出した手がそっと握られた。


青春したい子この指止まれ


「で?シカマル…のいの事好きなの?」

「はぁ!!??//」

「あ、図星か」

「!!!!」




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