鈴音×炎真


※鈴音→炎真。
※炎真がツナに手紙を出すちょっと前の話で、若干原作沿い。
※知花は炎真の幼馴染だけど本編ほどべったりしてない。
※芽埜+黒曜の2人は並中に転入してる。


※他の交換連載とリンクしてる。














鈴音「(守ってあげなきゃ……って思った)」




それが恋の始まり。


転校してきた至門中の生徒12人。
その中に怪我をした赤毛の少年を見つけて鈴音はなんだか加護欲が湧いてきて、その放課後彼を探した。


名前は芽埜にメールで聞いたから知っている。

―――<古里炎真>。

それが彼女が守ってあげたい少年の名前である。




―――ドガッ!バキ!




彼女が炎真を捜し歩いていたとき殴打音が聞こえ、そちらへ足を向ける。
すると不良にお金をたかられている気弱な少年、炎真の姿があったではないか。
鈴音はすぐさま駆け寄り不良を追い払った。




鈴音「はい、これ」




地面に散らばる炎真の荷物であろう教科書やペンケース、ノート類。
それを拾って彼に渡せば彼はきょとんと鈴音を見つめた。




炎真「え、っと……」

鈴音「音葉鈴音。よろしくね?……えっと、古里くん」

炎真「………ん、」




鈴音から教科書を受け取ると炎真はひょこひょことズボンを引きずりながら去っていった。
それを見送って近くのベンチへと腰を下ろす。


会話という会話もなかった。
けれど、鈴音はそれだけでなんだか嬉しくて。
こんな気持ちを抱いたのは過去に出会ったあの少年以来。




鈴音「(好き、なのかしら………?)」




リング戦で少年との約束も恋愛関係も全て彼によって断ち切られている。
これ以上縛り付けるのはよくないから―――と。

鈴音は誰か恋人がいるわけでもなく、周りの人間が次々と恋をしていくのを見送ってきただけだった。
芽埜が未来でのラスボスに恋をして、瑠香がつんけんな態度をとりながらも骸と恋人になり、琉輝がXANXUSと遠距離恋愛をして、亞琉が京子とラブラブになって。
そんな姿をずっと見てきただけ。




そろそろ鈴音だって、今生でそれ相応の幸せがほしかった。



それから継承式までいろいろなことが起こった。
ツナが襲われ、獄寺が全員で護衛をすると言い出したり。
了平と紅葉が勉強勝負をしたり。
山本と協力して水野のあがり症を治したり。

大変なことも起こったのだ。
山本が誰かに襲われ、その犯人を捜すため継承式を開いたのだが犯人は炎真率いるシモンファミリーでボンゴレは窮地に追い込まれてしまったのである。




鈴音「(胸が、痛い)」




つきんつきんと痛む胸を押さえ、鈴音はケガの治療をしてもらっていた。
炎真によって容赦なく打ち付けられた体も痛むが、それよりも胸の方が痛かった。




鈴音「……っ、…」

琉輝「お前、泣いてんの?」

鈴音「…琉輝…っ、僕……!」

琉輝「あー……うん、わかったわかった。


お前、古里が好きなんだろ」

鈴音「ちょっ!!//」

芽埜「え―――!?そうだったの!?」

瑠香「私、彼嫌いです!!っていうかムカつきます!!」

芽埜「そっちも驚きなんだけど!?」

瑠香「絶対負かしますよ…!屈辱です…!」

芽埜「あ、そっち………。


って、そうじゃなくて。
鈴音ちゃん炎真くんが好きなの!?」




琉輝による盛大なカミングアウトに女子勢がどっと湧く。
男子達は苦笑してその様子を見ていた。




鈴音「すっ、好きっていうか……あっ、あれよ!なっなんか放っておけないだけでっ」

芽埜「嘘つくことはないよ、うん。好きな人のことは放っておけないよねぇ。芽埜もそうだよー」

鈴音「だからっ」

琉輝「照れるなって〜〜」

鈴音「XANXUSのところに送りつけてやる……(小声」

琉輝「やっやめて!!あいつ容赦ないの!!マジ翌日立てないからやめて!!」

瑠香「ぶっ……!!ちょ、そんな濃厚な関係なんですか……!!?///」

芽埜「わ、わぁ〜〜…大人だぁ…///」




もはやただのガールズトーク。
炎真のことから話が逸れたことに鈴音はほっと息をついた。



一方その頃、炎真はシモンの島にいた。
ベランダで外を眺めながら1つため息をこぼす。




炎真「…………。
(残ってる気がする。直接手を下したわけでもないのに……彼女を痛めつけた感覚がこの手に……)」




「そ〜んな辛くて寂しそうな顔するくらいなら連れて来ちゃえばよかったんじゃねーの?」




炎真「!
ジュリー、彼女はボンゴレの守護者だ」

ジュリー「んで、炎真はその女に心を奪われちゃったわけだ」

炎真「そんなことは…!」

ジュリー「自分を助けてくれた柔らかい笑みのお姉さん。憧れる年頃だよな、炎真は」

炎真「っ、怒るよジュリー」

ジュリー「お〜〜怖っ。退散、退散。
俺ちんはクロームちゃんの寝顔でも眺めときますよー、っと」




ジュリーが去っていくと同時に炎真はしゃがみこんで頭を抱えた。

そんなはずはない。
たった1度彼女が自分を助けてくれただけ。
助けてくれた相手なら知花だって芽埜だっているのだ。




「はい、これ」




自分のものを拾って渡してくれた時に向けられた優しい笑み。
それが脳裏にこびりついて離れない。




炎真「っ、ボンゴレは……僕の敵だ」




そこに属する彼女だって……<敵>なのだ。




炎真「っ、なのに…!」




彼女は自分が手を下したとき炎真を悲しげに見つめて、辛そうにして、




炎真「なんで離れてくれないのさ……!!」




ツナや芽埜たちとは違った表情を見せたのだ。
まるで……




炎真「泣きそうになって、た」




…泣いているかのような。




君を嫌う僕、を演じた
(辛いなんて、言えない)




知花「炎真ー」

炎真「!
どうしたの?知花」

知花「ジュリーが炎真が辛そうだから行ったげてーって言ってたけど……なんか、平気そうだね?」

炎真「…うん…もう平気。お腹痛かっただけ」

知花「そ?」

炎真「(大丈夫。知花にバレてないなら誰にもわからない)」




嫌いになろうとしても、なれなかった。
何度もあの表情たちが蘇って、邪魔をしてくる。


ならば、想いを認めて、すべてを偽ったほうがまだ楽だ。




炎真「(僕は彼女が、)」

鈴音「(僕は彼が、)」




「「嫌いだ/好き」」




1人は本心を。
1人は偽心を。


すべてが終わればきっと。




     *     *     *




炎真「……ん…、?」




夕日が差す中庭のベンチで炎真は目を覚ました。
時計を見ればもう放課後開始から1時間も時間が過ぎ去っているではないか。




炎真「(あ、そっか。不良にやられて…鳩尾に入っちゃって、それで気を失ったんだっけ……?


でも、どうしてベンチに……。不良が寝かせた……わけないし、)」




「良く眠れたかしら、お寝坊さん」




炎真「!!」




慌てて身を起こす。
すると本を読んでいる鈴音がいて今まで膝枕をされていたことが分かった。

彼女はくすくすと笑い本を鞄にしまう。




炎真「な、なんで…!」

鈴音「だーいじな<彼氏様>が気絶してるんだもの。介抱してあげただけよ」

炎真「だっ…!?」

鈴音「そう、だーいじで、大切な彼氏様」

炎真「〜〜っ!!
(夢……かな?彼女が目の前にいるなんて、)」

鈴音「あら、まだ足りない?大事で大切で好きで……最愛の人よ」




額に落とされたキスに炎真は次こそ声が出なくなった。
耳まで赤く染まっているであろうこの状況で鈴音が1人笑う。




鈴音「ところで。
なにか夢でも見ていたの?苦しそうだったけど」

炎真「!
(夢……あ…夢か。ビックリした。
…そっか、そうだよね…。だって彼女は今―――…)」

鈴音「?」

炎真「その、君を傷つけた時の……あの時の夢を見ていたからだと思うよ」

鈴音「そう。
貴方に傷つけられることだって、僕が貴女を傷つけることだってないわ。
離れることだって、ないのよ?


そうでしょう?」

炎真「!
いつもいうようだけど、……僕は自分で言うのもなんだけど諦めは早いし、根暗だし、負け犬だし…。そんなだから自分に自信なんて、ないから……その言葉を簡単に信じられないんだ。


ごめん、」

鈴音「ふふっ、いいわよ」

炎真「え……?」

鈴音「その代わり何度だって言うわ。だって貴方は………<炎真くん>は僕の最愛の人だもの」




微笑む彼女の目が嘘を言っているようには思えない。
わかっている。
けれど自分に自信などないという思いから飽きられるのではないかと思ってしまう。

鈴音はそれが分かってるので何度だっていうことに決めたのだ。




炎真「……うん、ありがとう……<鈴音>。



帰ろ、」

鈴音「ええ」




手を重ねて2人は帰路を歩く。
夕日に照らされたその姿は恋人のそれで、とてもお似合いだった。














*雑談*


知花「あの2人ってさ、お似合いなのにどうして…こう、じめっとしてるの…!?」

芽埜「そう…?」

知花「多分炎真のせいだわ…!!


炎真ぁ!ちょっと来なさいよ!!」

炎真「うわぁ!?ちっ、知花!?いきなり何!?」

知花「彼女の前でくらい意地張って強気になりなさいよお!どうしてそう意気地なしなのぉ!?」

芽埜「わぁああ!!あんまり古里くんいじめないであげて――!?」




知花から炎真至上主義を抜いたらこんな感じになると思われます。

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