「好き、好きよ。貴女が大好き!」
 狂ったように『好き』と繰り返す霊夢に、恐ろしいと感じてしまった私は思わず逃げようと足に力を入れる。だけど、一足遅くて霊夢のせいで片足が折られてしまった。
 異常なほど痛みを感じて、思わず声にならない悲鳴がでた。霊夢はいとおしそうに、クスクスと笑っている。そんな霊夢が憎くて、嫌で足の痛みに耐えながら大声を上げて「どうしてこんなことするんだ!」と言ってみる。霊夢は笑ったまま「貴女が好きだからよ」と言った。
「貴女が好きなの。愛しているの。愛おしいの。私を睨みつけているその目も、金色でとても綺麗な髪も、そのやさぐれている性格も。全部私のものにしたい。だから、だから…一緒に死にましょう」
「なに、いって…」
 完全に霊夢が可笑しくなっているのは、勿論分かっているのだけど、何故ここまでイかれてしまったのかが分からない。
「ふふ、考え事?」
「…っ」
「誰のこと、考えていたの?」
 私がしゃべらず黙っていると、霊夢は一瞬だけ悲しそうな表情をした。
「しゃべって、くれないの?」
 私は返事をしない。霊夢は小さく「そっか」と言った。
「じゃあ、喋ってくれるまで………××××」
 最後の言葉が聞き取れなくて、気がついたら両耳が痛かった。恐る恐る触ってみると、どろりとした感触がするだけ。


 嗚呼、耳がない。


 霊夢は愛おしそうに、でも悲しそうに私の頬を触る。そして、口を動かしているが私には何を知っているのかさっぱりと分からない。そのまま、私の右目に手を近づけて、そのすぐ後に痛みを感じる。目も見えない。………本当に死ぬのかもしれない。そう思ったときにはもう既に、全てが終わっていた。



貴女が見てくれないのなら、その目はいらない。貴女が他の人の声を聞くのならば、その耳はいらない。



2010 05 02
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