「私、シャンクスがわからないわ」
情事の雰囲気が霧散しきれていないこの空間で、私は隣にいるシャンクスの赤い髪を眺めながら思ったことを素直に口にした。
「おれはおれの思うままに生きてるだけだ」
「シャンクスの言葉を聞いても、目を見ても、考えてることが何もわからないの」
「そうか?ならもう一度目を見ておれの声を聞いたらいい」
「そんな単純なことじゃないわ」
「いや、これ以上なく単純なことさ」
「あ」
いつの間にか起き上がっていたシャンクスに腕を引かれて抱き締められた。
「ほら、おれの目を見てくれ。俺は今なんて考えてるかわかるはずだ」
「……あなたってホントにずるい人」
「最初からわかってただろ、そのくらい」
「えぇ。そんなあなたに惚れてしまった私の負けよ」
「今日のレナはずいぶんひねくれてるな」
「全部あなたのせいよ」
「それもそうか」
「……あなたが遠いわ」
「そんなことないさ」
そう言ってシャンクスはなんの前触れもなしに唇を私の唇と重ねた。近付いたシャンクスの肌からは染み付いて離れない潮の香りがした。
「これだけ近付けばおれの目もよく見えるだろ」
いたずらが成功した少年のような無邪気な笑顔に私は白旗を上げた。
結局シャンクスの本心を聞くことは今日もできなかった。