そこは光の溢れる窓辺。
大好きな彼に抱きかかえられるようにしてソファーに座っていた。
「ねぇエース」
彼の名前を呼べば「なんだ?」と私の顔を覗き込む。
頬に散ったそばかすにさえ愛しさを感じる。
「好きだよ」
「おれもだ」
ニッと笑った彼の笑顔はまるで太陽。出会った頃から何も変わらないその笑顔に私はどれだけ救われただろう。
彼の胸に耳を当ててドクンドクンと鼓動する心臓の音を聴く。
「生きてる」
「当たり前だろ?おっちょこちょいなおまえを一人になんかさせねぇよ」
「うん。約束よ」
「おう。約束だ」
まるで子どもみたいに、どちらが言うでもなく小指を絡めて歌を歌った。
指切りげんまん 嘘ついたら針千本飲ーます 指切った
ふと目を開ければそこは未だ暗い自室だった。
上半身を起こして部屋を見渡しても、あの窓辺も、二人で座っていたソファーも、大好きな彼も、何もなかった。
「夢、だったんだ……」
そう呟いて、私は思わず笑いそうになった。
「バカみたい。もうエースはいないのに」
エースが赤犬に殺されてもう二年が経とうとしていた。
窓の隙間から冷たい空気が入り込んでくる。
私は膝を抱えて毛布を被った。
「なんで私を置いて死んじゃったの」
喉の奥が震えた。
「私がエースのご飯をつまみ食いするから?方向音痴なのに一人で探検したがるから?エースのことよく困らせてたから?」
毛布を握る手にギュッと力が入る。
「会いたい……会いたいよエース」
私はまだあなたと一緒に世界を見たかった。