かるまとなぎさところせんせー

(!)若干業→渚→殺っぽいけどカル渚と言い張る。

「もしあのタコを殺せたらどうしようか、」
独り言の様に紡がれた言葉は多分己の向かって投げ掛けられたものなのだろう。びよんびょよんと見た目よりも柔らかい刃物の形状をしたゴム性の武器の鋒を指先にて捉え、実に退屈そうな顔をしながら曲げたり戻したりを繰り返していた。話し掛けられたのだから何か応えようと口を開くがその問いに対し何も上手い答えはでずに目蓋を浅く下ろしては、
「……どう、なるんだろう」
酷く曖昧な返事にとてつもなく情けなくなって言った後にもっとましな返答は無かったのかと後悔した。だがそんな後悔も取り越し苦労だったようでふうん、と相変わらず心底興味無さそうに相槌を打った彼は未だに視線はあくまでも手元にある武器に向けられたまま曲げたり、戻したり、曲げたり、戻したり。幾度となく続けられるその動作を眺めながら溜息一つ溢せば静かに視線だけ此方に向けられ紅い目が向いた。
「どうなる、ってこのE組の事?それとも、」
「カルマ君、」

彼が次の問いを並べる前に彼の名前を口にして意図的に遮断した。理由は簡単だ答えられないから、という単純明快な思念に彼の口は半強制的に閉じられた。途中で無意識に行なってしまった行為に我に返りあたふたと取り繕うと彼の方へと様子を窺うように恐る恐る視線を向ければ目元を三日月のようにしてにっこりと酷いくらい優しく微笑む彼をみて心底身が震えた。思わず逸らしたくなるような歪んだ朱が愉しそうに見ていて、まるで、生きたまま殺されているようだ。
「……僕たちが卒業するまでに、殺さなければ、……僕らが死ぬ。いや、僕らだけじゃない。地球が死ぬんだ、だから殺すんだよ、」
「まるで正義のヒーローみたいだねえ」
皮肉気に呟かれた言葉を耳にしながら唇を強く、強く噛んだ。もし己がヒーローなどという存在ならば善の為に悪をなんの躊躇いもなく抹消しようとするだろう。なのに心の何処かでは本当はあっちが善で此方が悪だとしたら、そうならどんなにいいことだろうと思っている僕は、ヒーローにも偽善者にもはたまた悪人にもなれないただの道化師なんじゃないだろうか。自分の妄想がもしその通りならどんなに良かった事か空に浮かんだ歪に抉れた月を睨みながら笑ってやった。


(その問いを応えるのはまだちょっと難しいよ。)



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