きよしとひゅうがといづき。

(!)木→日←伊。別に誰ともくっついてない。時間軸は高校一年。金髪日向。

無数の金糸がゆらりと目の前で揺れて陽の受けて反射するきらきらと煌めくその慣れない色にそっと目を逸らした。
「やっぱりその髪型日向に合ってないよ」
彼の背中越しに自分が見たままの、その上で思ったままの何の形容も修飾もされない意見文をあくまでも淡々とした口調でそう述べた。すると、予想通りとでも言うべきか項を覆う髪を煩わしげに退けながら肩越しに露骨に怪訝そうな顔が此方に向けられて無性に腹の奥から溢れでた笑いを堪えきらず噴き出してしまった。このせいでレンズ越しに映る彼の双瞳は糸のように細くて、刃みたいに鋭い。でも何処か弱々しくて頼り無い。何より眉間に深々と刻まれた皺が、というよりも全体的に見ても彼には全く似合っておらず逆に間抜けに見えた。
「うるせえな、今は似合ってなくても段々板についてくるもんじゃねーの、」
唾を吐き捨てるかの様に唾の代わりに科吐かれた科白を聞き入れては、そんな日は一生来ないのだろうな、と思いながら敢えて口には出さず口を噤むついでに少し乾いた眼球を目蓋で被わせた。

「お、日向と伊月じゃねーか、」
「げ」
目蓋を開いて少しクリアになった視界にいつの間にか大男が人懐こい笑みを貼り付けながら隻手を挨拶とばかりにゆらゆらと揺らし大股で景気良く此方に近付いて来た。ゆらゆら、へらへらと。金髪のそいつはと言うとその男を視界に捉えた、或いはあの落ち着いて伸びやなか声が耳に入った瞬間先程よりも史上最悪の穀潰しでも見たように邪険に顔を歪めた。そんな彼の心情等知ることも無く着々と距離を詰めた男は相変わらずへらりへらりとした締まりのない表情で嬉しそうに口を開いた、―――金髪の彼に向かって。
「なあ、日向。本当にバスケやらないのか?本当はバスケやりたいんだよな、きっと楽しいと思うぜ!」
「勝手に決めつけてんじゃねえよ!オレはバスケなんざ一生しねんだよ、やりたきゃ手前でやっとけや、ダァホ。」
間髪入れずに声をあらげ罵声を浴びせればフン、と鼻を鳴らしそっぽを向いたかと思いきやそのままズボンの裾をズルズルと引き摺りながら不格好な歩き方で此の場を後にしていった。その背中は小さくて、それでいて、
「御前も懲りないな、彼奴は筋金入りの頑固だからちょっとやそっとじゃ聞かないよ」
「もうちょい素直になってくれりゃあいいんだけどな」
もう姿の見えなくなった彼をよそに二人で小さく笑い合った。

――――でも、オレも本当は判っていた。日向はバスケが何よりも好きで好きで仕方なくて人一倍努力して努力して努力して、でも報われることはなくて。挫折して。引退して、高校入学した途端に髪色を変えて、風貌も変えて不良の真似事みたいなことをして根が変わってない分板に合うどころか今すぐにでも剥がれてしまいそうだ。似合わない。心底似合わない。滑稽にさえ見える。全然似合ってないよ日向。…っていっても今じゃ無冠の五将とか言われてる男に追い回されて、バスケしようとか、他人事だけど同情するよ。―――…同情?
「鰌の同情…」

でもきっと、彼奴はバスケを諦められないから…あの男はそれをわかって日向を執拗に追い回してるんだろうし。…いや、きっとなにも考えていないだろうな。全くあの男は読めない。どちらにしても俺がこのあとやるべきことはさっき考えた駄洒落を秘蔵ノートに書き写すことが先だろう。

(一筋縄では、いかない。)
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