※過去作品。

(DRRR!!)

しきさん、おりはら。

(!)まだ、茜ちゃんの件が始まっていない前の話。臨也さん二十歳。

暗く、澱んだ空気の中でゴトリと何かがその場に置かれたような音がした。今俺は拉致監禁というやつをされている。手足を拘束され目隠しだってされている。今一度全体の状況が掴めないでいるが考えるとまず“誰に”なんて分からない。“何故”理由なんてありすぎて分からない。俺が数多くの人間に憎まれていること何てもう当たり前過ぎてこんな自問にさえ反吐が出た。

「さぁ、折原さん もう起きて下さい」

でも何となく分かる。声を聞く度名前の呼び方大人びた敬語。ピリピリとした威圧感。だが俺は理解する事認知する事を拒んだ。そうであって欲しく無かった。
ただ、それだけだった。

俺はその言葉通り拘束された手足を器用に使い起き上がる。後ろの壁に寄りかかってみせた。すると男は俺から目隠しをとりニイと妖艶に笑った。

「四木さ……ん」

あぁ、やっぱり貴方だった。俺の中で後悔と疑念が交差した。俺が何をした。仕事は順調にやっていた。前の拳銃の回収も粟楠会の島で薬を売っている奴の情報も最近粟楠会の周りで騒ぐ新しいヤクザの話も沢山の情報を貴方に提供したじゃないか。
何か気に喰わない部分でもあったんですか?手違いや食い違いでも? じゃぁ、口で言ってくれればいいじゃないか。あぁ、コレがヤクザのけじめというものであろうか。全く。反吐が出る。

「…何か、情報に誤りでも 、ありましたか……?」

俺はまだ悪質な笑みを見せる四木さんを見つめ口を開く。今気づいたが殴られた形跡が一つも無いことが判明した。その代わり縛られた手足は痛いのだがそれ以外の痛みは全く無かった。
四木さんはそんな俺を見下ろしクスリと嘲るように笑った。そして俺の前にしゃがみこみ俺と直接目を合わせるような形をとる。
「いいえ。 貴方の情報は全てに誤りはなく実に真実しかないような清廉潔白とした“事実”でしたよ。」
ならば何故。何故だ。貴方と俺の関係といえば仕事の関係だったじゃないか。それ以上もそれ以下もありはしない。貴方は最初会った時に「雇っている限りは仕事をこなして欲しい。そうすればこちらから貴方に手を出すことは有りはしない」とあの言葉は嘘だったのか。ならば堅気どうこうの話では無いだろう。確かに人間とは嘘を吐く生き物だ。そんな事はよく知っている。だからこそ俺は人間という生き物が好きで好きで溜まらないのだから。


だからこそ情報屋なんて不安定で反吐が出るような仕事をしているのだから。その俺が大好きな人間が織り成す情報を俺は享受しているのだから。

「…ははっ、そうですか。 …で、何故私はこの様な状態にされているんですかね…」

正直の所本当は俺はヤクザというものは少しばかり嫌悪感を抱く事があった。嫌、違う。ヤクザでは無く。この。目の前の男に。確かに俺なんてこの俺と比べたらまだまだなぁなぁな餓鬼でしかない。だからこそ細心の注意を払いながら深からず浅すぎずの関係をを続けてきた。

自分に驕らず相手に臆さず。

そういう関係だったはずだ。
四木さんは何処からか白い一枚の写真を取り出した。それは何かとばかりに首を捻ると写真を目の前に出される。

その瞬間。 俺は目をみはった。

「こ……れは…」上手く呼吸が出来なくなり喉に何かが詰まったような感覚に捕らわれる。

そう、そこには……

自分が全裸になって複数の男に犯されている。嫌、強姦されている図があった。

「貴方がどうやってここまで有能な情報得ているか気になりましてね。色々と調べさせて貰ったんですよ。 まさか、体を売っている何てねぇ…」
四木さんはくつくつと喉の奥で俺を嘲笑
った。俺は声を出すことが出来ずただ茫然とその写真を見ていた。

確かに。粟楠会の下っ端共が俺を嗅ぎ回っていることは知っていたがまさかこんな場面を抑えられていたとは知らなかった。俺は一度平常心を取り戻し自然と背中に湧く冷汗を感じながらまた口を開いた。
「驚きました。 貴方達が私のこんな所まで知っていたなんて事は。 ……確かに私は情報を得るために体を売ることもします。 でもその替わりに貴方達は“有能な情報”得る事が出来る。 ギブアンドテイクって奴ですよ」
そうだ。俺は間違ってはいない。情報を得るために体を売ることは間違ってはいない。いない筈なんだ。否定しないで。四木さん。粟楠会の為。貴方の為。そう思って。そう誤魔化して。偽りながらも俺はあの汚い奴らに犯されたんだ。
ねぇ、四木さんこんな俺が汚いですか? 滑稽ですか?
「……馬鹿ですね。 もう お辞めになったらどうですか?」
四木さんは蔑んだ目を俺に向け首筋を撫でた。その時ビクリと体が震え甘い吐息が口から漏れ出す。
「おやおや、コレだけでも感じますか。それだけ敏感に調教なされたようですね。」今度は首筋に舌を這わせられる。ゾクゾクと甘い痺れが躰を蹂躙し芯に熱が籠もる。
「 …ッ、 や、めて下さい、四木さ…んっ」首筋を舐めていた舌は次に耳へと移動しクチュリと音を立て中へと舌を侵入させる。
「あ、あぁ… 四木さん、 み、耳は…!!」
「耳は…… 何です?」
「嫌… ッは、ぁ…」
耳を舐められている内にいつの間にか手は胸の突起へと移動していた。
「口答えは赦しませんよ。 それに貴方はこのくらいの快感は慣れているでしょう」胸と耳両方からの刺激に耐えきれず甘い吐息と嬌声を漏らす。いくら抱かれ慣れているからと言っても臨也の躰は元が敏感の為快感が強ければ強いほど躰は火照り躰の力を全て脱力させた。
「何で、 こんな…… 事…。」

疑問を投げ掛けると四木は口元を歪め残酷で冷酷な言葉を一つ。

「貴方がしてきた事が全て無駄だったことを教えて 上げますよ」


ジャラジャラと拘束道具の無機質な音と虚しい嬌声だけが、その場に残った。








(全ては 貴方の為の筈だったのに
あぁ、 全て
水の泡。)
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